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循環型社会と3R
石油や鉱石といった資源は地球が作りだしたものであるため、掘り出して使えばその分は失われてしまいます。
特に石油は、資源として大量に存在している地域が中東(サウジアラビア、イラクなど)や中央アメリカ(ベネズエラ、メキシコなど)、ロシアなどの国々に限られることや、ガソリンや灯油といった燃料のほかプラスチックの原料として多くの使い道があることから、非常に多くの量が消費されています。そのため、いずれは掘り尽されてなくなってしまうと言われています。
また、私たちの生活からは大量のごみが出ます。ごみの処理には多くの費用やエネルギーが必要です。さらに、これ以上処理できなくなったごみ(燃やしたごみの燃えがらなど)は埋め立て処理が行われていますが、埋め立てることのできる場所も限られています。
ゴミ問題を知ることで地球の未来を考えるそこで、資源を一回限りではなく繰り返し使うことで資源の消費を抑えてごみを減らし、環境への負荷をできるだけ小さくしようという取り組みが世界中で進められています。一度使用した物をそのまま捨てるのではなく資源として再生し繰り返し使う、すなわち資源が循環する社会のことを「循環型社会」と呼びます。
日本でも国や自治体、企業や市民がさまざまな形で循環型社会に向けた取り組みを行っています。
3Rとは
循環型社会を実現するための基本的で具体的な取り組みが「3R」です。3Rとは、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3つの英単語の頭文字を取った言葉です。
リデュース(Reduce)
ごみとして捨てられる物を減らす。容器の包装を簡単にするなど。
賞味期限と消費期限の違いは?まだ食べられるのに捨てていませんか?私たちにとって非常に身近な廃棄問題として「食品ロス」があります。事業者と家庭から出る食品廃棄物の総量は年間で800万トンを超え、その分の食材が無駄になるだけでなく、大きな処理費用も発生しています。
リユース(Reuse)
モノを同じ形で再び使う。牛乳びんや一升瓶の再使用など。
リユース市場の拡大はめざましく、近年ではネットオークションの浸透やフリーマーケットアプリの登場によって使用済み商品の再販売のすそ野が広がっており、新たな商品流通の形が生まれています。
リサイクル(Recycle)
モノを違う形で再び使う。使用済みのペットボトルや新聞紙、段ボールなどを再生利用すること。
リサイクルと同じくリユースはモノの再利用という点では変わりませんが、粉々にしたり熱処理を加えて新たな形状・用途にしたりする点で大きく異なります。
また、上記のとおりリサイクルにはリユースと違って明確な処理の工程が含まれるため、後述の「循環型社会形成推進基本法」における優先順位はリユースに比べると下になっています。
「循環型社会」という単語に対して明確な英語は存在しませんが、この3Rに加えて、天然資源そのものの保全やごみの焼却時に発生する熱を生かした発電(熱回収)、最終処理における適正な処分を含めた全体が循環型社会と一般に認識されるものになります。
循環型社会への取り組みと3R
循環型社会を作るための取り組みは、国・自治体・企業やさまざまな市民団体などが行っています。
国は2001年に「循環型社会形成推進基本法」を施行し、ここで初めて循環型社会の定義を行いました。この法律では、循環型社会づくりのための基本原則として以下の3つを掲げています。
- 社会の物質循環の確保
- 天然資源の消費の抑制
- 環境負荷の低減
循環型社会形成推進基本計画
「循環型社会形成推進基本法」に基づき「循環型社会形成推進基本計画」が2003年に公表されました。この基本計画は二度の改定が行われ、2013年からは「第三次循環型社会形成推進基本計画」が実施されています。
第三次計画では、第二次計画の実施期間にリサイクルが進展して、ごみの最終処分量(燃えかすなど、それ以上処分できない状態での埋め立て量)の大幅な削減が実現したことことから、「循環の質」に着目した取り組みが多く盛り込まれています。第三次計画において、新たに盛り込まれた施策の柱は以下の4つです。
- リサイクルよりも優先順位の高い2R(リデュース・リユース)の取り組み強化
- 有用金属(レアメタル)の回収
- 安心・安全の取り組み強化
- 3R国際協力の推進
なお、リサイクルについては容器包装や家電、食品などの個別の品目ごとに法律が制定されています。法律で制定されている以下の品目を廃棄処分する場合は、該当する法律に基づいた処分が行われています。
- 容器包装リサイクル法(ビン、ペットボトル、紙製・プラチック製容器包装など)
- 家電リサイクル法(エアコン、冷蔵庫、テレビ、洗濯機・衣類乾燥機)
- 食品リサイクル法(食品残さ)
- 建設リサイクル法(木材、コンクリート、アスファルト)
- 自動車リサイクル法(自動車)
- 小型家電リサイクル法(小型電子機器など)
3Rの国際的な広がり
3Rは国際的な取り組みとして進展しています。2004年にアメリカで開催されたG8サミットにおいて、小泉総理大臣(当時)は「3Rイニシアチブ」を提案しました。これは、3Rを通じて循環型社会を目指す取り組みを国際的に推進しようというものです。この提案はG8首脳の賛同を得て合意されました。
アジア太平洋地域では2009年に「アジア3R推進フォーラム」が設立され、ほぼ毎年会合が開催されています。このフォーラムは3Rに関する政策対話、制度・技術などの情報の共有や関係者間のネットワーク化を目的としています。
2015年には「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国連総会において採択されるなど、3Rの取り組みは国際的に広く普及し、取り組みが進められています。
また、2016年に行われた第7回会議においては41ヵ国の政府と国際機関・民間団体・研究機関・NGOが参加し、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の推進に向けた重要性の再確認や、各国間での協調の強化をはじめとした「アデレード3R宣言」が採択されました。
「MOTTAINAI」キャンペーン
アフリカのケニアで長年にわたり植林活動を続け、環境分野としては初となるノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ(1940-2011)は2005年、ケニアの環境副大臣として来日しました。その時、日本語の「もったいない」という言葉を知って深い感銘を受けました。なぜなら「もったいない」が、3Rをひと言で言い表していると知ったからです。
その後マータイは「MOTTAINAI」を循環型社会づくりの世界共通の合言葉として広めることを提唱し、全世界に向けて発信する活動を生涯にわたって行いました。
家庭で簡単にできる3R
3R(リデュース、リユース、リサイクル)は、私たちが生活の中で少し気を付けることによって簡単に実行できます。以下、日常の中でできる3Rの取り組みを挙げました。これらの中には、すでに当たり前のように実行していることがあるかもしれません。あなたはいくつ実行していますか?
Reduce:リデュース(モノをできるだけ減らす)
- 買い物をするときにマイバッグを持参し、レジ袋はもらわない
- 使うかどうか分からないものはもらわない
- 包装が簡素な商品を購入する
- 食べられる量を作ったり買ったりして、食べ残しをなくす
- 料理するとき、生ごみをできるだけ少なくする
- 生ごみの水気を切る、または堆肥にして使う
Reuse:リユース(同じ形で何度も使う)
- 不要品はフリーマーケットやリサイクルショップに出す
- 詰め替え式の商品を利用する
- 修理しながら長く使う
- マイ水筒やマイタンブラーを持ち歩く
- 一時的に必要なものは、レンタルやシェアリングサービスを利用する
- 違う使い方ができないか工夫する
Recycle:リサイクル(形を変えて繰り返し使う)
- 市区町村のごみの分別ルールを守る
- 町内会やPTAが実施している集団回収に協力する
- 空き缶、食品トレー、牛乳パックなどは、スーパーなどの回収コーナーへ出す
- リサイクル原料を使用した商品を購入する
- 家電リサイクルの対象品目(テレビ、エアコンなど)は制度に従って処分する
- 小型家電リサイクルに協力する
ペットボトルのリサイクル
ペットボトルは軽くて丈夫なため、飲料などの容器として頻繁に使われています。ペットボトルはリサイクルが進んでおり、2015年度には国内で製造・販売されたペットボトルの86.9%がリサイクルされています。小売店の店頭に回収コーナーが設置されているのを目にしたこともあるでしょう。
回収されたペットボトルは粉々に粉砕されてプラスチック原料となり、そこからペットボトル、衣類、卵のパックや食品トレー、ベンチやプランターなどの製品が作られています。
紙のリサイクル
紙はリサイクルが進んでいる資源の一つです。段ボールや新聞紙、飲料の紙パックなど、多くの種類の紙製品が回収・リサイクルされています。2015年の古紙回収率は実に81.3%。すなわち、日本国内で使われた紙のおよそ8割が回収されているのです。また回収された紙の約99%が紙の原料として使われ、再生紙に生まれ変わっています。
紙の種類により、作られる製品は異なります。
- 段ボール→段ボール箱、紙筒など
- 雑誌→段ボール箱、絵本など
- 新聞→新聞紙、週刊誌、印刷用紙など
- 牛乳パック→トイレットペーパー、ティッシュペーパーなど
ここに挙げたほかにも3Rとしてできることはたくさんあります。まずは生活の中で試してみて、良い取り組みだと感じた場合には多くの人にシェアしましょう。一人ひとりの力を合わせて循環型社会を作っていきましょう。