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最近よく聞く「フェアトレード」
フェアトレードとは
フェアトレードは、日本語の直訳では「公平な取り引き・公正な貿易」。つまり、商品の生産者やそれに関わる労働者と商品を購入する側の人間が、お互いに公平な状態で取り引きを行っている状態、それがフェアトレードです。
近代社会で目覚ましい発展を遂げたヨーロッパ諸国は、その勢力を東南アジアに伸ばし植民地として開拓したという歴史があります。植民地となった国の人々は長きにわたり不公平な支配を受けることとなり、独立に向けた動きが本格化したのは21世紀になる前後からでした。
発展途上国と呼ばれるこれらの国々で生産された商品は、立場の弱さから正当な価格とはならず、安い賃金しか受け取れない労働者は劣悪な生活環境から抜け出すことが難しい状態となっています。
生産者・労働者に対して正当な対価を支払うフェアトレードの仕組みは、発展途上国に暮らす人々の生活を改善することにつながります。
フェアトレードの基準
フェアトレードには「国際フェアトレード基準」と呼ばれる基準があります。発展途上国の小規模な生産者や労働者に対して持続的な開発・発展を促すことを目的として設定されているこの基準は、大きく分けて三つの柱から成り立っています。
- 最低価格の保証や長期的な取り引きの促進といった経済的基準
- 民主的な運営と労働環境の安全、差別や児童労働等の禁止といった社会的基準
- 有機栽培を奨励し、農薬の削減や環境保全に力を入れるといった環境的基準
労働者の生活を向上させるために必要な「経済」「社会」「環境」、この三つの基準を満たすことがフェアトレードの特徴と言えるでしょう。
用いられるラベル
フェアトレードの商品には、一目でフェアトレードと分かる認証ラベルが用いられています。認証ラベルを商品に使用することで、発展途上国の抱える問題と解決に向けた社会的貢献を広く認識してもらうことができます。
フェアトレードには三つの種類があり、それぞれ独自の認証ラベルが使用されています。
国際フェアトレードラベル
製品に対してフェアトレードであることを認めるラベル。製品は第三者機関による定期監査を受けており、このラベルが付いた商品は国際フェアトレード基準を満たしていることを示します。
世界フェアトレード機関(WFTO)による認証ラベル
主に企業団体に向けて認められるラベル。事業活動の内容が100%フェアトレードの基準を満たしている企業・団体だけが認証を受けることができます。
加盟団体全てが商品にラベルを使用しているわけではありませんが、ラベルがなくてもWFTOに加盟している=フェアトレードであるということが分かるため、消費者も安心して購入できます。
各企業や団体が独自に基準を設定したラベル
前提として、フェアトレードの基準には法的な決まりがありません。そのため、世界的な団体に加盟するのではなく独自に基準を設定してフェアトレードのラベルを作って使用している企業・団体もあります。
日本ではこの独自ラベルが多く、国際的な基準よりもさらに厳しいものを独自で設定し、生産・加工地と直接やり取りを行って社会貢献をしています。
フェアトレードのメリットと問題点
なぜフェアトレードが必要なのか
フェアトレードの一番の目的となっているのは発展途上国に対する支援体制の構築です。しかし、フェアトレードは広義の意味でも公平であり、彼らの生活の向上はそのまま先進国にも影響を与えています。
安く大量の商品を生産するため、発展途上国は無作為に森林を切り開いて農薬を使用し、環境破壊を促進させていました。しかしこれは、地球全体として捉えるべき環境問題でしょう。
フェアトレードの必要性、それは、発展途上国のみならず先進国も含めた地球全体の未来を守るためでもあるのです。
フェアトレードのメリット
フェアトレードは主に以下のメリットをもたらします。
- 発展途上国の生産者、労働者の生活向上と保全
- 児童労働、強制労働からの解放
- 子どもが教育を受けられる時間の増加
- 有機栽培による環境保護
フェアトレードでは「経済的向上」の部分が大きく取り上げられがちですが、発展途上国には賃金だけではなく、自立へ向けた知識と教養を身に付けることも必要とされます。
これまでのように日々を生き延びるだけで精一杯の状態では、子どもが労働力として幼い時から駆り出され、最低限の教育が広く行われていませんでした。
フェアトレードが広まるにつれて児童労働から解放された子どもが教育を受ける機会が増え、そこで身に付けた知識や教養を生かして未来へと希望をつないでいきます。フェアトレードはこのような「継続性」が特徴です。
フェアトレードの問題点
メリットが多くしっかりとした基準も確立されているように見えるフェアトレードですが、まだ解決しなければならない課題も残されています。
- フェアトレードの基準があいまいで一律ではない
- プロモーションだけが一人歩きしていて実情が追いついていない
- 生産・加工地での認識が薄い
- 近代化によって伝承技術が衰退する
フェアトレードは世界で統一されている基準ではありません。そこには法的効力もないため、基準から外れても罰則は存在しないのです。
それに加え、生産・加工地ではまず稼ぐことが第一の目標となっているため、フェアトレード団体の意図するところが理解しにくく、結果として環境破壊の危険を冒しているケースが少なくありません。
さらに、大量の商品の生産を優先したことで、その土地に伝承される織物技術やオーガニック農法が衰退してしまったという報告もあります。本当の意味でフェアトレードを成立させるためには、「経済と認識を共有する意識」を育てることが最重要課題となっています。
フェアトレード商品の例
フェアトレードとして流通している商品で特に有名なものを紹介します。
フェアトレードコーヒー
神奈川県横浜市にある横浜元町珈琲は、東ティモールで栽培された有機栽培によるフェアトレードコーヒーを販売しています。1800年代初頭にポルトガルから移植されたコーヒーが始まりで、すっきりとしたのどごしと爽やかさが人気となっています。
インドネシアとの併合や内戦による影響で産地が大打撃を受け、貧困にあえぐ状態となっていた東ティモール。アメリカ・日本のNGO団体やポルトガルの援助を受け、東ティモールのコーヒーは復活への道を歩み始めました。
フェアトレードによる公正で変動のない価格での取り引きは、貴重な有機栽培コーヒーとそれを栽培する人の生活を支えています。
フェアトレードチョコレート
フェアトレード商品を専門に扱っているピープルツリーは、フェアトレードの原料を流通パートナーを通してスイスの工場へと運び、丁寧にチョコレートを生産して販売しています。
ボリビアやペルーで栽培されたカカオとフィリピンで収穫された黒砂糖をじっくりと練り上げたチョコレートには、植物性油脂が一切使用されていません。自然の物だけで作り上げられたチョコレートは、「自然の恵みをいただく」ことを実感させてくれる味わいです。
人間同士が助け合い、認め合い、笑い合う世界。フェアトレード商品を通して見える世界を想像すると、手にした商品の大切さを改めて感じることができるでしょう。