地方創生地方の過疎化が止まらない!増え続ける若者の地元離れ

地方の過疎化が止まらない!増え続ける若者の地元離れ

多くの若者が地元を離れて都心部へ流出してしまうことにより、地方の過疎化が深刻化しています。第一次産業の衰退や限界集落の増加といった問題へと発展し得る過疎化について、その原因や各地で行われている対策、成功例などをご紹介します。

地方の過疎化で若者の流出が止まらない

過疎化とは

日本では地方の過疎化が問題になっています。「過疎化」とは、コミュニティーの人口が減少したために一定の生活水準の維持ができなくなる状態が進行していることを指します。このような地域では高齢者の割合が高く、財政力に乏しい場合が多くあります。

過疎化は、若者の第一次産業離れや東京一極集中による都心部への人口流出などによって引き起こされ、過疎化が進行している地域は全国の市町村の4割以上を占め、面積は国土の半分以上にも及んでいます。

過疎化の問題点

過疎化が進んでいる地域は、以下のような問題点を抱えています。

  • 公共交通機関の本数削減など生活に必要なインフラが縮小し、利便性が低下する
  • 病院や診察所といった医療機関が減り、医療サービスを十分に受けられない
  • 空き家や放棄された耕作地が増加し、洪水や獣害被害などが発生しやすくなる

 

地方の過疎化が進行する原因

地方の過疎化が進行する原因

地方の過疎化の背景

地方の過疎化が進んだ背景には、高度経済成長期からバブル期にかけて若者が都市部に流出したことが関係しています。また、人口減少により地方にあった企業や商業施設などは営業できず、その地域において基礎的な生活水準の確保に支障が生じるようになったことで、さらに若者は都市部に流出せざるを得ない状況になりました。

若者離れで深刻化する第一次産業の衰退

第一次産業に従事する人の数は、高度経済成長期の以後に激減しました。2014年に発表された人口統計資料よると、全体の4%の238万人しかいません。

また、そのほとんどが高齢者です。地方から若者が流出していくだけでなく、地方に残っている若者ですら第一次産業に従事しない傾向にあります。これから人数はさらに減少していくと考えられています。

 

過疎化対策の例

過疎化対策の例
過疎化への対策として、日本で実施している施策をいくつか見ていきましょう。

移住者の受け入れ

日本各地で、従来の住民やその家族だけでなく新しい移住者を積極的に受け入れてサポートし、人口増加を目指す取り組みが行われています。

その成功例として、島根県松江市隠岐諸島にある海士町の取り組みを紹介します。

海士町は、離島でありながらも移住者を受け入れることで人口が増加に転じました。移住者に対して最初の3年間は月15万円の生活費を支給、事業を拡大させたい人へは一口50万円の資金の貸し出しも行っています。

原則は7年後に一括返済が行われますが、返済できない場合は町が負担。移住者に対して相当の投資を行なっています。その結果、10年で437人が移住し人口は増加に転じました。さらに14の会社が立ち上がり、保育園は入園希望者が殺到。住宅の建設ラッシュまで起こりました。

空き家バンク制度

空き家バンク制度とは、その地域への定住を促すために、空き家の物件情報を行政がウェブ上で提供する制度です。

空き家バンクはほとんどが行政による運営のため、自治体によっては暮らしに関わる情報提供などのサポートもあり、移住を促進するものとなっています。

自治体の定住促進

一方で、若者の流出を防ぐ取り組みも各地で行われています。

若者に地方に定住してもらうため、結婚支援や子育て支援、住宅支援などの環境づくりに関するものから、就労支援や企業誘致など雇用に関するもの、さらには移住相談会まで多岐に渡っています。

将来的に地元に戻ってくる条件で奨学金を貸し付けている自治体もあります。なかには地元に戻って就職した場合に返還免除になる奨学金もあり、地元就職が促進されているのです。

UIJターン

「UIJターン」とは、

  • 進学や就職を機に都心部に行った地方出身者が再び地方に戻ってくる「Uターン」
  • 出身地とは全く違う別の土地に移住する「Iターン」
  • 地方出身者が出身地の近くの都市に移住する「Jターン」

をまとめて移住の動きを表したものです。

UIJターンを促進することは若者の流出を防ぐことにつながります。そこで、合同説明会などを開催して地方での就職をサポートするなどのさまざまな取り組みが行われています。

 

過疎化で生まれる限界集落

過疎化で生まれる限界集落

限界集落とは

離島や中山間地域では高齢化および過疎化が急速に進行しており、特に状況が深刻な地域では、農作業などの共同作業や冠婚葬祭、水源の確保といった生活機能を維持することが次第に難しくなってきています。

上記に関連して、「人口の50%以上が高齢者であり共同生活を維持していくことが困難な集落」のことを「限界集落」と呼びます。

限界集落の現状

2011年に総務省が過疎地域などにおける集落の実態に関してまとめたところによると、調査が行われた64,954集落のうち、人口の50%以上を高齢者が占める集落は全体の15.5%である10,091集落でした。さらに、住民が全員高齢者である集落が全体の0.9%にあたる575集落もありました。

このように高齢者の割合が大きい集落は、四国、中国、中部圏に多く見られます。

限界集落の問題点

限界集落の問題点としては、住民の立場からすると生活環境がさらに悪化し、ますます住みづらくなってしまうことが挙げられます。しかしながら、限界集落の問題点は単に住民目線のものだけに留まりません。

限界集落は中山間地域で特に顕著に見られます。農地や山林での仕事の担い手が不足すると、その場所が荒廃することで水害の増加や自然環境の悪化などが懸念されます。また、耕作地の減少は国全体の食料自給率の低下も招きます。

さらに、限界集落において空き家や空き地が増加することで治安が悪化する恐れがあります。

限界集落への対策

空き家活用

集落で空き家になっている建物を改修して集落の活性化に活用する取り組みが多く行われています。空き家活用の成功例としては兵庫県の集落丸山が有名です。

集落丸山は4世帯しか人が住んでいない限界集落で、他の7軒は全て空き家という状態でした。
その空き家のうち3軒を改修して古民家の宿としてオープンしたところ、3年で宿泊者数は2000人を超え、この後、19人だった人口は23人に増加。耕作放棄地も耕作地と変わり、活気を取り戻しています。

企業誘致

企業誘致も空き家を活用する点では変わりませんが、より規模が大きなものになります。

企業誘致の成功例としては徳島県の神山町がよく知られています。神山町もやはり過疎化が深刻でした。徳島県は光ファイバー網の整備が発達していましたが、神山町はこの光ファイバー網を生かして古民家を改装して、都会にあるIT企業のサテライトオフィスを誘致。企業の増加にともなって飲食店なども新たに作られ、上山町の人口は2011年プラスに転じました。

 

地方の過疎化と限界集落の増加は未来にも影響を与える大きな問題です。私たち一人ひとりがこれらの現状や対策を知り、問題に立ち向かうために考えていかなければならないでしょう。