エネルギー今だからこそ理解する「原子力発電」の仕組みとこれから

今だからこそ理解する「原子力発電」の仕組みとこれから

2011年3月に発生した東日本大震災にともなう東京電力福島第一原子力発電所の事故は、「絶対に安全」と言われてきた日本の原子力発電所を取り巻く状況を一変させました。原発大国である日本は今後どうなっていくのか。エネルギーの今後を考えるうえで避けては通れない原子力発電について考えます。

原子力発電の仕組み

原子力発電の仕組み

原子のエネルギーで電気を作る

発電所では、何らかの力によって発電機が回され電気が生み出されています。水力発電所であれば水が流れる力で、火力発電所であれば燃料を燃やして水を沸騰させてその蒸気で、発電タービンを回しています。

原子力発電所は複雑なイメージがあるかもしれませんが、基本原理は火力発電所とほぼ同じです。火力発電所では石油や石炭、天然ガスを燃やして水を沸騰させていますが、原子力発電所は原子炉で核燃料(ウランやプルトニウム)を燃やし、その熱で水を沸騰させているのです。

日本で使用されている原子炉には沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)の2つのタイプがあり、少し構造が違います。BWRは東京電力など主に東日本に多く、PWRは関西電力など主に西日本に多く存在しています。

BWRは原子炉のなかに直接水を送り込み、発生させた蒸気で発電タービンを回します。これに対してPWRでは原子炉内で蒸気を発生させるのは同じですが、原子炉とは別に蒸気発生器が設けられており、発電タービンを回す蒸気はその発生器で作られます。

つまり、BWRでは放射性物質を含む水蒸気で発電タービンを回すのに対し、PWRでは放射性物質を含まない蒸気で発電タービンを回すというのが大きな違いになります。

水力発電の仕組みとさまざまな取り組みについて 水力発電の仕組みとさまざまな取り組みについて

核分裂の仕組み

私たちの身の回りにある全ての物質は「原子」からできています。そして、その中心には「原子核」があります。この原子核に中性子が当たると核分裂が起こり原子核が二つに分かれるのですが、その際に発生する熱エネルギーを利用しているのが原子力発電所なのです。

原子力発電所で使用する燃料には、ウラン235などの核分裂が起こりやすい物質が用いられます。ウラン235は天然ウランに約0.7%含まれています。また、残りの約93.3%は核分裂が起こりにくいウラン238です。燃料にはウラン235を3%〜5%程度に濃縮したものを使用します。

ウラン235に中性子がぶつかると核分裂反応が起こるのですが、その分裂は次々と連続して起こり、膨大な熱エネルギーを発生させます。また、核分裂しないウラン238に中性子が当たると、中性子を吸収してプルトニウム239となります。さらに、プルトニウム239に中性子が当たるとこちらも核分裂し、熱エネルギーが発生します。原子炉では、この核分裂反応が連続して起きているのです。

核燃料に含まれているウラン235は約4%で残りはウラン238であるため、核分裂は時間をかけてゆっくりと進みます。そのため、原子炉に一度燃料を入れると一年近く燃料を交換しなくても核分裂反応が続いて発電し続けることができるのです。

プルトニウムが抱える問題

核燃料を燃やすことによって生み出されるプルトニウムは核兵器の材料にもなることから、国際的に厳しく管理されています。核兵器の保有国以外でプルトニウムを持っているのは日本が唯一ですが、その日本には2017年11月時点で47トンものプルトニウムが溜まっており、諸外国から懸念されています。

ウランを燃やすことで生み出されるプルトニウムは、再処理を行って原子力発電所の燃料として再使用する計画です。ところが、プルトニウムを直接使用する計画であった高速増殖炉「もんじゅ」の度重なる事故やトラブルによる廃炉のため、大量のプルトニウムを消費する目途が立っていないのです。

核兵器を持ちたいと考える国々からは、日本だけが特別扱いであると疑問の声が挙がっています。核保有国以外の国の原子力発電が広がると、原子力の平和利用をうたいながら核兵器の製造に結びつける例が出てこないとも限りません。

プルトニウムの現状について国内ではあまり関心が高まっていませんが、国際的には注目されている問題であることを私たちはさらに認識すべきでしょう。

 

原子力発電のメリットとデメリット

原子力発電のメリットとデメリット

原子の核分裂によってエネルギーを得る原子力発電には、火力や水力、太陽光や風力などのエネルギー源と比較した場合にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

原子力発電のメリット

電気を安定的に供給できる

太陽光や風力などの自然の力に依存するエネルギー源は、生み出される電力が状況によって上下します。太陽光は太陽が出ている日中の晴天時に、風力は一定の強さの風が吹いているときに発電することができます。逆に、それらがないときにはほとんど発電できないのです。

原子力発電は気象条件に左右されることなく、運転している限り一定の電力を生み出すことができます。そのため原子力発電は、同じ性質を持つ石炭火力・大型水力発電などと合わせて「ベースロード電源」と呼ばれます。

なお、石油や天然ガスによる火力発電は発電コストが高いことからベースロード電源には含まれません。

少ないエネルギーで大きな電気を得られる

ウランを燃料とする原子力発電は、少ない燃料で大量の電力を生み出すことができます。例として、原子力発電所一基が一年間に作り出す電力(100万kW)を得るためにどのくらいの燃料が必要かを以下に並べます。

  • 原子力発電(燃料:濃縮ウラン):21トン
  • 天然ガス火力発電(燃料:天然ガス):95万トン
  • 石油火力発電(燃料:石油):155万トン
  • 石炭火力発電(燃料:石炭):235万トン

また、ウランは海外から輸入していますが、産出国が多くあり、その多くは政治や社会的に安定していることなどから供給が安定しているのもメリットの一つです。

二酸化炭素の排出量が少ない

原子力発電は、地球温暖化の大きな要因と考えられている二酸化炭素(CO2)の排出量が火力発電などと比べて大幅に少なく、再生可能エネルギーである太陽光や風力と同程度しかありません。

それぞれの発電方法の1kWhあたりのCO2排出量を見てみましょう。なお、ここに示す数字には、発電のための燃料燃焼に加えて発電設備の建設・輸送・運用・保守などにかかるエネルギー消費も含めています

MEMO
原子力発電には計画中の使用済核燃料国内再処理、プルサーマル利用、高レベル放射性廃棄物処分などを含む
  • 原子力発電:0.019kg-CO2/kWh
  • 石炭火力:0.943kg-CO2/kWh(原子力の約50倍)
  • 石油火力:0.738kg-CO2/kWh(原子力の約39倍)
  • 天然ガス火力:0.599kg-CO2/kWh(原子力の約32倍)
  • 太陽光:0.038kg-CO2/kWh(原子力の約2倍)
  • 風力:0.026kg-CO2/kWh(原子力の約1.4倍)
  • 水力:0.011kg-CO2/kWh(原子力の約6割)

原子力発電のデメリット

稼働までに時間がかかる

原子力発電所は大規模で複雑な施設であり、計画・立案から建設工事を経て営業運転の開始に至るまでには長い時間が必要です。岩盤検査から営業運転の開始までには4年程度が必要とされていますが、実際にはさらに時間がかかっています。

2018年時点で建設中の原子力発電所は国内に二基あります。そのうちの一基である電源開発大間原子力発電所(青森県大間町)は1976年に計画・決定されましたが、途中で原子炉の形式が変更されたこともあり着工まで20年あまりを要しました。

2008年に着工されたものの2011年に発生した東日本大震災による工事の休止があり、着工から10年が経った2018年1月時点でも完成の目途が立っていません。

もう一基の中国電力島根原子力発電所3号機は、2000年に事業が着手されて2005年12月には着工されましたが、12年が経った2018年1月時点において、やはり完成の目途は立っていません。

廃棄物の処理方法が確立されていない

原子力発電所で使用された使用済燃料からは、燃料として再利用できるウランやプルトニウムが得られます。

一方、再利用ができない高レベル放射性廃棄物は、ガラス原料と溶かし合わせてステンレス製の容器のなかで固化させる「ガラス固化体」として30年〜50年間冷却保存した後、地下300mより深い場所へ埋めて「地層処分」を行う計画となっています。

使用済燃料の再処理とガラス固化を行う再処理工場は、青森県六ヶ所村で建設が進められています。この施設は1993年に着工されて1997年に完成する予定でしたが、数々のトラブルが発生したために再三にわたり完成時期が延期され、2018年1月時点においても完成時期は不透明です。

最終的に行う地層処分についても、処分できる可能性のある場所を示す地図「科学的特性マップ」が2017年に公表された段階で、具体的な設置計画は決まっていません。使用済核燃料は処理される見込みが立たないまま各地の原子力発電所に積み上げられているのが現状であり、早急な対策が必要となっています。

事故発生時の影響が甚大になる

2011年3月に発生した東日本大震災にともなう東京電力福島第一原子力発電所の事故は、各地に甚大な被害をもたらしました。事故によって飛散した放射性物質は広範囲に降り注ぎ、ピーク時では16万5000人近くが避難を余儀なくされました。

事故から6年半が経過した2017年11月時点でも避難指示区域は12市町村におよび、5万3000人あまりの人が帰還できない状況となっています。

事故を起こした原子炉は廃炉が決まり、溶け落ちた核燃料の残骸(燃料デブリ)の取り出し方法も事故の発生から6年経ってようやく方針が決まりました。

しかし、燃料デブリを取り出し、廃炉が完了するまでには40年という長い時間が想定されているのに加え、解決しなければならない技術的な課題も多いため、計画どおりに進むかは不透明です。

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原子力規制委員会とは

原子力規制委員会とは

「推進」と「安全規制」の分離

東日本大震災の発生前は、原子力発電を監督する組織「原子力安全・保安院」が発電用原子炉等の安全に係る規制を担っていました。

しかし、この組織は原子力利用を推進する経済産業省の所轄であったことから、東日本大震災の発生を契機として「推進」と「安全規制」を分離することとなりました。

こうして、専門的な知見に基づき中立公正な立場で独立して原子力の安全規制を担う「原子力規制委員会」が設置されました。なお、原子力規制委員会は環境省の外局という位置づけです。

原子力規制委員会は中立公正な立場を基本のスタンスとしていることから、意志決定の透明性・中立性の確保を図っています。具体的には、「委員会」「3名以上の委員による打ち合わせや電気事業者などの被規制者との面談」「有識者検討会」などについても原則公開としています。

バックフィット制度

原子力規制委員会の設置と合わせて、国による原子力規制も大幅に転換されました。その中心となったのが「原子炉等規制法」(正式名称「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」)の改正です。

改正法では、発電用原子炉における重大事故対策の強化や運転期間の制限などが盛り込まれていますが、なかでも特に画期的な制度が「バックフィット制度」です。

バックフィット制度は、最新の知見を基準に取り入れ、すでに許可を得ている施設についても新基準への適合を義務づけるもので、海外では特別にリスクが大きい場合に特例的に認められているものです。しかし、今回の日本での適用は全面的に適用させるものであり、ほかに例がないものです。

これにより発電用原子炉を運用している事業者は全てを新基準へと適合させる必要が生じたため、対策工事の必要などにより原子力発電所の長期間の稼働停止につながりました。

原子炉に係る新規制基準

原子炉等規制法の改正を受けて、原子炉等の新しい規制基準が定められました。新しい規制基準には、原子炉の水素爆発を引き起こした福島第一原子力発電所のような事故を防ぐために、これまでにはなかったさまざまな規制が盛り込まれています。

福島第一原子力発電所の事故は、巨大地震とそれにより発生した大津波によって複数の安全機器が一斉に機能しなくなったために、大きな災害を招く結果となりました。新規制基準ではこのことを教訓に、安全機能の喪失と重大事故(シビアアクシデント)の進展を防止するための基準が定められました。

安全を確保するためには「深層防護」という考え方が採用されています。深層防護は、有効な複数の対策を用意し、それぞれの対策を考えるときにほかの対策は期待しないという考え方です。

また、地震・津波などの起こりうる自然現象についても想定の大幅な引き上げが行われています。そのほかには航空機の突入といったテロ対策も対象としているなど、これまでの基準では不十分であった点についても対策を講じることが求められています。

新規制基準で新たに対象となったり、強化された対策は以下のとおりです。

新たに設けられた対策

  • テロ対策:意図的な航空機の衝突
  • シビアアクシデント対策:放射性物質の拡散、格納容器の破損防止、炉心の損傷防止

従来の対策の強化

  • 自然現象対策:内部溢水に対する考慮(浸水対策)、自然現象に対する考慮(火山・竜巻・森林火災を新設)、火災に対する考慮、電源の信頼性、その他の設備の性能、耐震・耐津波性能

核燃料施設などに係る新規制基準

発電用原子炉と同様に、核燃料を扱う核燃料施設についても規制基準が新しくなりました。対象となる核燃料施設には、

  • ウラン燃料工場
  • 使用済燃料中間貯蔵施設
  • 低レベル放射性廃棄物処分施設
  • 核燃料再処理工場
  • ウラン濃縮工場
  • 核燃料物質の使用施設
  • 試験研究炉

などが含まれます。

新規制基準の主なポイントは、以下のとおりです。

  • 取り扱われる核燃料物資の形態や施設の構造に合わせて、施設ごとに基準を策定する
  • 深層防護の考え方に基づく対策を講じる
  • 重大事故(シビアアクシデント)対策を講じる(再処理施設および加工施設が対象)
  • 事故時に及ぼす影響の大きさに応じて「設計基準事故に加えて考慮すべき事故」対策を講じる(試験研究用原子炉施設が対象)

規制基準の作成にあたっては国際的な安全要件であるIAEAの要件も取り入れられ、国際的な基準と比較しても遜色のないものとなりました。

 

今日の日本で生活するうえで、電気は欠かすことのできないエネルギーです。そして、エネルギー源として重要な「安定性」「経済性」を考えたときに、原子力の存在は依然として大きいものがあります。原子力発電とそれを取り巻く状況について、私たち一人ひとりが正しく知り、どうすべきかを自分で考える必要があるのです。