福島県のインバウンド復活に向けた事業
福島のインバウンドの現状
福島県を訪れる外国人旅行者の数は2011年の東日本大震災後に激減しました。2007年に福島県内に宿泊した外国人旅行者の数は128,490人であったのに対し、2015年には48,090人と62.6%も減少しています。
その一方、日本を訪れた外国人旅行者の数は2015年に前年から47.1%も増加して1974万人となり、過去最高を記録しました。
福島のインバウンドの課題と取り組み
一部の調査によると、震災後実際に福島を訪れた日本人旅行者のうち、およそ半数が「放射性物質に対する不安が多少解消された」と回答しています。
そこで、外国人旅行者にも安全性を理解してもらい、不安が解消されることがインバウンドの復活につながると考え、福島県では「風評・風化対策プロジェクト」においてインバウンドに関する次の4つの事業を始めました。
福島インバウンド復興対策事業
外国人旅行者の目線に立ち、旅行者の国ごとの特性に着目してニーズに合った施策の展開および情報の発信を行っています。
チャレンジふくしま戦略的情報発信事業
いまだ残る風評の払拭などを念頭におき、県や市町村、国および民間企業が協力して福島県内の復興の様子や観光やグルメの情報を国内外に発信しています。
チャレンジふくしま世界への情報発信事業
海外への情報発信をメインにした事業です。駐日外交団などを対象に見学会を行ったり、在外県人会や在外公館と協力して情報発信を行ったりしています。
モバイルWi-Fiを活用した世界への情報発信事業
外国人旅行者が被災地を訪れた際にSNSで情報発信ができるようモバイルWi-Fiルーターの貸し出しを行い、復興状況の発信につなげています。
また、「訪日外国人消費動向調査」によると、外国人旅行者は出発前に旅行に関して情報を集める手段として個人のブログやSNSといったインターネットからの情報を用いており、これらはとても役立ったという結果があります。
そこで福島県はモニターツアーを企画し、情報発信が好きな人に集まってもらい福島県に関して発信してもらったり、海外のパワーブロガーや記者を招へいして観光体験会を開催したりするなどの取り組みも行っています。
4都県観光ルート「ダイヤモンドルート」
ダイヤモンドルートとは
東京には年間で1000万人以上の外国人旅行者が訪れます。この東京を起点として福島県、栃木県そして茨城県を結んだ観光ルートを作ることで、東京を訪れた外国人旅行者に東京だけでなく地方にも来てもらい、東北の復興につなげようという取り組みがなされています。この観光ルートはその線の形から「ダイヤモンドルート」と名付けられました。
外国人目線のPR動画
このダイヤモンドルートの魅力を発信するため、福島県と福島テレビ・福島放送・福島中央テレビ・テレビユー福島の4局が海外クリエイターの協力のもと外国人旅行者向けにプロモーション動画を作成しました。
テーマは、
- 会津若松などの歴史
- ウィンタースポーツや雪をアピールした自然
- 伝統工芸を紹介したアクティビティ
- 喜多方ラーメンや酒蔵などの食
となっており、この動画の作成には海外クリエイターや海外ユーチューバーも加わりました。動画はYouTubeでも閲覧可能で、再生回数は合計で1100万回を超えています。
アプリ
さらに、福島県は株式会社ナビタイムジャパンと共同で外国人旅行者をターゲットにダイヤモンドルートに関する公式ガイドアプリを開発しました。「DIAMOND ROUTE JAPAN App」と名付けられたこのアプリは、日本語、英語、中国語および韓国語で使うことができます。
また、アプリの公開と同時に海外の旅行会社向けにブックレットも作られました。このブックレットは英語、中国語、韓国語に加えタイ語とベトナム語の5ヵ国語に対応しています。
このブックレットの特徴も外国人旅行者目線であることです。外国人ライターが実際に取材し、彼らの目線で観光地が紹介されています。季節ごとに楽しめるコースも紹介されています。
いかがでしたでしょうか。特に、外国人クリエイターに協力を依頼するなどの外国人旅行者の目線を意識した取り組みが目立ちます。これからの福島県からは目が離せませんね。