不法投棄がなくならない本当の理由

不法投棄がなくならない本当の理由

ポイ捨てをはじめとする不法投棄が後を絶ちません。2000年前後から始まった廃棄物回収量の減少は、果たして正しいリサイクル社会の構築の結果なのでしょうか。

不法投棄への罰金、罰則

不法投棄への罰金、罰則

環境省が発表している2015年の統計(2016年12月27日発表)によると、新たに判明した不法投棄は143件(16.6万トン)、まだ解決していない残存件数は2646件(1609.7万トン)となっています。

不法投棄とは

不法投棄とは、「廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)」に反して廃棄することを指します。廃掃法では、廃棄物(ゴミ)を勝手に処分せずに中間処理施設、最終処分場へと移送することが定められています。

廃掃法でいう廃棄物は、一般廃棄物(産業廃棄物以外のゴミ、家庭ゴミ)と産業廃棄物(事業所から生産にともなって排出される20種類のゴミ)に分けられています。産業廃棄物にはマニフェスト制度があり、最終処分場までの報告が事業者に届きます。

不法投棄をした場合の罰金

不法投棄をした場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下(法人にあっては3億円以下)の罰金が課せられます(2017年時点)。

罰則

不法投棄の罰則には刑事処分と行政処分があります。刑事処分としての時効は5年ですが、行政処分としての時効はありません。行政処分には、改善命令、措置命令、代執行があります。

  • 改善命令…基準に合わせるように命令する
  • 措置命令…不法投棄をした場合にこれを適切に処分し、投棄地の原状回復を命令する
  • 代執行…命令に従わない場合、代わりに行政が執行して代金を取り立てる

不法投棄で逮捕される場合も

不法投棄・不法焼却は、無届業者への委託や無契約での依頼も刑事処分の対象です。このような場合は、逮捕される可能性があります。

 

不法投棄への対策法

不法投棄の対策

不法投棄の対策として注目されているものに、ニューヨークのスラム街で犯罪減少に効果を出した「割れ窓理論(Broken Windows Theory)」があります。

この理論を不法投棄に当てはめると、ポイ捨てなどの身近な問題を受け皿の確保と巡回指導により解決することで、大規模な不法投棄をなくすことができる、と捉えることができます。

割れ窓理論
建物の窓が割れているとその建物は管理されていないというサインになり、周辺地域でポイ捨てなどの軽犯罪が増える。そうすると、住民のモラルが低下して重大犯罪が発生する。

環境省の対策

環境省が行っている不法投棄ホットラインに寄せられた相談件数は、2017年3月時点(2004年6月~2017年3月)の合計で、FAXによる相談が519件、メールによる相談が866件の計1,385件となっています。なお、最も相談件数が多いのは大阪府の61件です。

各都道府県・政令市にも同様のサービスがありますので、不法投棄を発見した場合は利用しましょう。

私有地に不法投棄された場合の対策

私有地内に不法投棄をされた場合、心情的には「被害者」となりますが、投棄を防止する義務を怠った「加害者」の扱いになってしまいます。警察は現状確認を行うだけで、民事不介入により当事者同士の解決が求められます。

不法投棄をした人(または法人)が判明すれば刑事処分の対象となりますが、そうならない場合が多く、一般的には不法投棄をされた側が廃棄物の処理費用を負担し、投棄した側が判明した段階で負担した費用を請求する方法が採られます。

しかし、不法投棄をされた側は、被害者であるという意識から廃棄物の処理費用を負担したがらず、廃棄物を放置したままになってしまうケースが多く発生しています。

 

ポイ捨ては不法投棄の第一歩

ポイ捨ては不法投棄の第一歩

不法投棄は犯罪だと分かっていながら、「これくらいは良いだろう」とポイ捨てやゴミの放置をしていませんか。ポイ捨ても立派な不法投棄です。

ポイ捨て禁止条例の実施

ポイ捨て禁止に対する各自治体の取り組みとして、横浜市を例に紹介します。

横浜市は、1995年に市内全域ポイ捨て禁止を条例で定めています。空き缶や紙くず、たばこの吸い殻などが対象で、違反者からは20万円以下の罰金を徴収します。

また、たばこは吸い殻だけではなく歩きたばこも禁止しています。

MEMO
市長の勧告に従わない場合は20万円以下、虚偽の届け出は10万円以下、ポイ捨ては2万円以下の罰金、喫煙禁止区域での喫煙は2,000円以下の「過料(1万円未満の刑罰)」

この条例では、空き缶や吸い殻を発生させる商品の製造・加工・販売を行う事業者に対して、消費者への意識啓発、回収、資源化も義務づけています。

加えて、土地所有者にはポイ捨てされないための対策も義務づけています。美化推進員が巡回し、私有地への立ち入り調査も行う徹底ぶりです。

また、横浜市内には喫煙禁止区域が設けられており、指導員が巡回しています。巡回対象は、横浜駅周辺地区、みなとみらい21地区、関内地区、鶴見駅周辺地区、東神奈川・仲木戸駅周辺地区、新横浜駅周辺地区の計6地区です。

巡回が始まって以後、これらの地区では「ホームレス」があまり見られなくなりました。それと同時に、毎朝、港湾労働者などをマイクロバスで集めに来る人々も減っています。これらの因果関係は不明ですが、巡回の思わぬ効果とも言えるでしょう。

時期を同じくして、大量の空き缶を積んだ自転車、ダンボール箱の上にポイ捨てされたと思われる週刊誌を並べて売る人を見る機会も少なくなっています。

目立つところに捨てられるゴミは確かに減っていますが、歩道橋の下や街路樹の根元などへのポイ捨ては増えています。また、私有地へのポイ捨てもまだまだなくなったとは言えない状況です。

 

なぜ不法投棄はなくならないのか

 なぜ不法投棄はなくならないのか

不法投棄がなくならない原因として、「誰が廃棄したのか分からなければ罰せられることはない」、どう処分して良いのか分からない時に「放置しておけば誰かが片付けてくれる」という考えに加えて、ゴミの処分コストが高いことが挙げられます。

考え方やモラルの問題は教育や意識啓発のPR活動により改善することが可能かもしれませんが、処分コストの高さについては最終処分場の不足に原因があるため、処分場の開発という環境負荷の高い工事が必要になってしまいます。

環境省が2017年3月に公表した「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成27年度)について」によると、最終処分場を持っていない市区町村は302(全国の17.3%)もあります。これらの市区町村は民間の最終処分場に委託するか、または広域移動を行い、他の都道府県で処分しなければなりません。

しかし、全国の最終処分場の残余年数(現存している最終処分場が満杯になるまでの残り期間を推計した値)は、20.4年と決して多いとは言えません。廃棄物の減容化※とゴミの有料化による回収量の減少などの対策を行ってはいますが、残余埋立容量は2005年から減少傾向が続いています。

リサイクルが定着した効果で回収量が減少している面もありますが、不法投棄ホットラインへの相談件数の多い大阪府、千葉県、埼玉県、神奈川県がいずれも最終処分場の残余容量が一人当たり0.3立方メートル以下の府県だということから、不法投棄の増加が疑われています。

また、リサイクル業者からは「リサイクルしようとしてもリサイクル資源が海外に流出しているため、国内で流通する資源が減っていて経営が厳しい」という声が挙がっています。

2017年に日本鉱業協会が経済産業省に提出した要望書には、リサイクル事業環境の整備としてエコタウン事業の促進と並んで国内リサイクル資源の海外流出防止のための制度構築についての内容が記されていることが、この話を裏付けています。

※焼却して灰にする、高温で熱して溶かす、などの処理によって廃棄物の体積を小さくすること

 

ポイ捨てが減った裏には、国内で流通するリサイクル資源の減少と海外流出、そして、低賃金でリサイクル資源の回収を生業としていた人々の減少という社会変化があるようです。