社会騒音に困ったら!騒音の基準は?警察は呼ぶべき?

騒音に困ったら!騒音の基準は?警察は呼ぶべき?

近隣住民とトラブルになることの多い騒音ですが、騒音かどうかの判断は難しく、その評価方法を知らないと双方に不利益をもたらします。

一般的な騒音のレベルと基準

一般的な騒音のレベルと基準

騒音は、環境基本法に定められた典型7公害の一つで、人の聴覚特性に合わせて「音により発生する気圧の変化」を音圧レベル(単位:デジベル)として表します。

典型7公害
私たちの健康と生活環境を害する恐れのある公害を総称したもので、騒音を含む大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・振動・地盤沈下・悪臭の7つがこれにあたる

騒音の目安

「この音の大きさは何デシベルなのか」「何デシベルを超えると人間は不快だと感じるのか」などを完璧に理解している人はほとんどいないでしょう。以下より音圧レベルの目安として、それぞれの騒音発生源と人体への影響がどの程度なのかを紹介していきます。

騒音値(音圧レベル)騒音の目安生活環境・体への影響
120デシベル飛行機が目の前を飛行する聴覚に異常を感じるレベル
110デシベル目の前で自動車のクラクションを鳴らされる
100デシベルガード下で聞く電車の通過音
90デシベル犬の鳴き声・カラオケルームかなりうるさい
80デシベル走行している電車内・パチンコ店の店内うるさい
70デシベルセミの鳴き声・騒がしい店内大きい声でしゃべれば会話ができる
60デシベル普通の会話・掃除機やテレビの音日常生活でよく聞く大きさ・不快感はない
50デシベル間近で聞くエアコンの稼働音普通
40デシベル図書館内の物音静か
30デシベル深夜の町並み・鉛筆での執筆音
20デシベル木々の触れ合う音ほとんど聞こえない

一般的な日常生活を送るうえで、70デシベルを超える音を聞くことはほとんどないと言えるでしょう。

騒音かどうかの基準

では、騒音と判断されるのは何デシベル以上なのでしょうか。騒音かどうかの判断基準は発生した場所によっても異なりますが、全てのもとになっているのが「環境基準」です。

科学的知見から導き出された、生活のなかで会話や睡眠に影響を与えない一般的な値のことを「室内指針」といい、その値は

  • 昼間が45デシベル以下
  • 夜間が40デシベル以下

であるとされています。

環境基準では、窓を閉めた状態でこの室内指針が保障される屋外の音圧レベルがどの程度であるかを定めています。

環境基準

 類型昼間夜間
一般地域AA地域特に静穏を要する地域50dB以下40dB以下
A地域住居専用地域55dB以下45dB以下
B地域準住居地域55dB以下45dB以下
C地域商業工業地域60dB以下50dB以下
道路に面する地域A地域道路に面する住居専用地域60dB以下55dB以下
B・C地域道路に面する商業・工業地域65dB以下60dB以下
幹線道路近接空間幹線交通を担う特例地域70dB以下65dB以下
  • AA地域:療養施設・社会福祉施設が集合しているため、特に静穏を必要とする地域
  • A地域:住居専用の地域
  • B地域:主に住居用途で利用される地域
  • C地域:多数の住居が併設された商業・工業用途の一般地域または、主に住居用途の道路に面する地域

 

近隣騒音で警察に通報しても良いのか

近隣騒音で警察に通報しても良いのか

騒音の大きさを表す音圧レベルは基準値(20μPa)との比を常用対数で表現した値であるため、例えばそれぞれ50デジベルの二つの音源がある場合、その影響は50デジベル+50デジベル=100デジベルとはなりません。50デジベルと50デジベルを合わせた値は50.3デジベルになります。

このため、近隣住民が50デジベルの騒音を発生させていたとしても、近隣道路からの騒音が70デジベルであった場合は、50デジベルと70デジベルを合わせた値の70デジベルが騒音の大きさとなり、評価上、近隣住民は騒音を発生していないのと同じになります。

そのほかにも、

  • 周波数重み付け特性であるフラット・A特性・C特性
  • 時間重み付け特性であるファスト(FAST)・スロー(SLOW)

など、騒音の評価方法にはさまざまな決まりがあります。

後々のトラブルに発展してしまわないためにも、騒音被害に遭っていると思う場合は、いきなり苦情を伝えるのではなく市区町村の窓口をとおして専門家に相談するのが良いでしょう。

周波数重み付け特性
音圧レベルだけでは実際の騒音を判断することはできないため、周波数の大きさによっても音の大きさを判断するというもの
時間重み付け特性
急激に変化する音圧レベルをリアルタイムで把握することは困難なため、その変化を緩やかに表示できるように処理すること

騒音被害に遭ったら

専門家に相談したうえで、やはり騒音による被害を受けているとなった場合は、警察に相談したくなるでしょう。しかし、警察は「民事不介入」の原則により、トラブルの解決を図る行為は行いません。ただし、警察が加害者を訪問することにより被害の拡大を抑止する効果は期待できます。

ただし、被害を訴える際に環境基準の違反は認められません。この基準はあくまで環境の良否を判断するものであって、守らなければ罰則を受けるというものではないからです。

ではどのような基準が適用されるかというと、騒音規制法により都道府県知事が定めている「適用地域」と「規制基準」です。

この法律では騒音源の指定対象が、

  • 工場、事業場騒音
  • 建設作業騒音
  • 自動車騒音
  • 飲食店の深夜騒音

と決められています。

したがって、近隣住民の生活騒音がうるさいからといって、みだりに警察を呼ぶことはできません。

警察を呼ぶ際の流れ

しかし、どのような場合にも警察を呼んではいけないという訳ではありません。騒音トラブルが原因で事件に発展する可能性もあるため、110番通報をすると警察が対応してくれます。

110番に通報すると「事件か事故か」を問われるので、「騒音」であることを伝えます。その後、場所や騒音の種類を伝えます。

警察を呼ぶ際の注意点

通報後のトラブルを防ぐため、通報時には以下の点を警察に依頼しておくことが肝心です。

  • 誰が通報者なのか分からないように対応してもらう
  • 近隣住民からの通報ではなく、巡回中に騒音を聞きつけたことにしてもらう

それでも、騒音の内容によっては通報者が誰なのか判明することがあります。そのため、裁判などに備えて騒音被害について

  • 発生時間帯
  • 継続時間
  • 騒音の内容

など、できるだけ詳細な記録を残しておくことも大切です。

 

さまざまな騒音問題への対策

さまざまな騒音問題への対策

騒音問題への対応では、騒音トラブルの発生自体を抑制することを第一に考えなければなりません。その方法として、環境省が公表している心得が役に立ちます。

・音への気くばりを忘れずに
・音源の配置に工夫を
・音はひかえめに
・ご近所となかよく
・(音の小さい機器の購入など)より確実な騒音対策を
・(風呂や洗濯の音は)深夜、早朝は特に注意
・ペットの鳴き声(はしつけで配慮する)

マンションでの騒音対策

ひとたび騒音問題が起こってしまった場合は、解決に時間と費用がかかることが予想され、さらには思い通りの結果にならないケースも想定しなければなりません。そのための自衛手段として防音を行うことが有効です。

通常の建物であれば、

  • 窓を開けているときの内外騒音レベル差は10デジベル
  • 窓を閉めているときは25デジベル

程度です。また、この場合は「防音性能が25デジベルである」といいます(1996年「騒音の評価手法の在り方について」中央環境審議会答申)。

2015年に環境省が作成した「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」によると、建築構造(外壁と窓の組み合わせ)による防音性能は以下のとおりです。

 RC、モルタル、サイディング※在来型木造
二重窓、固定窓35/30dB30dB
防音型サッシ30dB25dB
※外壁に貼る羽目板のこと

簡単に効果が期待できる方法としては、窓枠に隙間テープを貼り付ける・室内のカーテンを防音カーテンに取り替えるなどがあります。

自動車騒音への対策

自動車交通の騒音に対しては、環境基準とは別に「要請限度」が定められています。

区域1車線2車線以上
第Ⅰ種区域昼間 65dB、夜間 55dB昼間 70dB、夜間 65dB
第Ⅱ種区域昼間 65dB、夜間 55dB昼間 75dB、夜間 70dB
第Ⅲ種区域昼間 75dB、夜間 70dB昼間 75dB、夜間 70dB
  • 第Ⅰ種区域:住居専用の区域
  • 第Ⅱ種区域:主に住居として利用される区域
  • 第Ⅲ種区域:多数の住居が併設された商業・工業用途の区域

この基準は、沿道において要請限度を超えている場合、騒音規制法により市区町村長が都道府県公安委員会に対して交通規制を要請する、または道路管理者に対して道路構造の変更を意見することができる、というものです。

自動車を発生源とする騒音には、エンジン音・排気音・路面(タイヤ)からの音があるため、自動車構造の変更や街路樹の設置など道路構造の変更で対応することになります。

しかし、自動車構造の変更による騒音防止は対応した自動車の普及に時間を要し、道路構造の変更にも多くの予算が必要となるため、解決には時間がかかります。

航空機騒音への対策

航空機の騒音に対する環境基準も別途定められています。

地域基準値
住居専用地域57dB
それ以外の地域62dB

なお、飛行場では航空機の離着陸時に騒音が発せられるものの、定常的に騒音を発し続ける訳ではないため、道路や工場の騒音とは評価方法が異なります。

航空機騒音特有の評価方法として(ICAO:国際民間航空機関が定義した)WECPNLがあります。これは、飛行機一機ごとが発している24時間分の騒音を平均して評価するものです(時間帯別に重み付けするなどのデータ加工が必要なため、単純平均とはならない)。

この基準を達成するために、公共用飛行場では「騒防法(公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律)」に従って、周辺の学校・病院などの公共施設に対して

  • 公園緑地による緩衝
  • 防音建具の設置
  • 航空機の低騒音化

が行われています。

なお、特殊用途(自衛隊・米軍)の飛行場に対しても公共用に準じた努力をすることが求められています。

 

騒音問題は近隣住民同士のトラブルから工場・事業所を相手にするもの、民間飛行場、自衛隊などを相手にする大がかりなもの、または相手が不特定多数となる自動車騒音などさまざまです。

大きな音を出す場合は、自分の好みを他人に押しつける行為にならないよう、配慮と防音を忘れないようにしましょう。