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食品偽装問題とは
私たちが口にしている食べ物。毎日食べるものだからこそ品質が重要となりますが、しばしば目を覆いたくなるような食品偽装問題が発生します。
ここには、食品の提供者である事業者と購入者が持っている情報量の大きな差(情報の非対称性)が存在します。
食品偽装の種類
食品偽装の種類としては以下のものが代表的になります。
- 賞味期限・消費期限偽装:食品の賞味期限や消費期限を偽装して廃棄すべき食品を販売して利益を上げること
- 産地偽装:食品の産地や原材料を偽装し、本来の品質にふさわしくない値段で販売し、利益を上げること
- 原材料偽装:海外産の原材料を国内産と偽って補助金を受け取ること(例:2001年に起きたオーストラリアの牛肉偽装事件)
- 食用の適否の偽装:本来食用ではないものを食用として販売して利益を上げること
食品の賞味期限や消費期限は、JAS法に基づいて消費者が安全においしく食べられるように食品会社が科学的根拠を元に設定しなければなりません。
また、食品の産地や原材料についても、食品表示法という法律によって消費者に販売される全ての食品に表示が義務付けられているので、食品会社はそれに従わなければなりません。
賞味期限と消費期限の違いは?まだ食べられるのに捨てていませんか?食品偽装が起こる原因
なぜ食品会社は法律に違反してまで偽装をするのでしょうか。それは、どの食品偽装事件であっても企業が利益を求めていることが原因にあります。また、食品を購入する際に品質が見た目と表示だけでは詳しく分からないということも理由の一つでしょう。
見た目から品質を見極めることを難しくしている要因の一つが保管技術の進歩です。外国など遠い場所から輸入した食材であっても、保管技術が高まったことにより見た目・味ともに大きく損なうことなく消費者に提供することが容易になったのです。
これに加えて、外食の現場においては小売に比べて産地の表示義務の制限が少ないということも相まって、食品偽装が起こりやすい土壌が生まれています。また、食材が調理されてしまうと、その産地や品質を見極めるのは大変難しくなります。これは後述の「食材偽装問題」にあたります。
食品偽装事件の例
2007年10月 赤福餅の食料偽装事件
老舗菓子屋の赤福が、自社の「赤福餅」の賞味期限を偽装して販売。また、その赤福餅を回収して自社内で材料に再利用したうえで関連会社に原料として販売していたことなどが発覚して、問題となった事件です。
2011年5月 焼肉酒家えびす食中毒事件
安さを売りにしていた人気焼肉店の「焼肉酒家えびす」が生食用ではない牛肉を「和牛ユッケ」として偽装して販売。集団食中毒で5人もの命が奪われた事件です。
食品偽装問題を防ぐために
消費者の側から確実に判断することが難しい食品偽装、これをテクノロジーの力で解決しようという動きが起こっています。電気メスと質量分析装置を使って食品の種類や産地を分析する商品が市場に導入されており、活躍が期待されています。
食材偽装問題とは
飲食店や弁当屋で商品を注文する際に、写真やカロリー、産地を参考にする方は多いでしょう。「食材偽装問題」とは消費者に実際の食材の状態を偽って販売することであり、こちらも消費者に身近な問題です。
ホテル食品偽装問題
ホテル内のレストランで食品偽装が行われる事例が複数発生しました。
2013年、阪急阪神ホテルズが牛の脂を注入した牛肉を「ビーフステーキ」、冷凍保存した魚を「鮮魚」として、実際のメニュー表示と異なる食材を使っていたことが問題となりました。
また、2008年のヒルトン東京では、山形牛を「前沢牛」、通常の野菜を「オーガニック野菜」と偽ってメニューに記載。2010年のグランヴィア京都ではブロイラーを「京地鶏」として販売していました。
メニュー偽装問題
「メニュー偽装問題」とは、弁当などの販売されている食品の偽装のことを指します。なかには、偽装だと断言できない問題や報道されていない問題も多くあります。
消費者庁の食品ガイドラインでは、白身魚の「ニジマス」を養殖して赤身となった「トラウトサーモン」を使用した弁当に「シャケ」や「サーモン」と表示するのには問題があるとしています。
弁当屋チェーンの「ほっともっと」はトラウトサーモンを使用した弁当を「ニジマス弁」とせず「シャケ弁」として販売していたことが指摘されました。
しかし、養殖されたトラウトサーモンはサーモンよりも脂が乗っており、値段が倍以上であることや、ニジマス弁では白身魚のイメージもあり消費者が混乱するとのことから、消費者庁はこれに対し問題ないと判断を変更しました。
だた、ニジマスとシャケ(サケ)に限らず、問題とされていない食材に対してアレルギーを持っている人もいます。そのため、現状はメニュー表記を鵜呑みにせず自分自身で判断しなくてはなりません。
食品廃棄問題
「食料廃棄問題」とはその言葉のとおり、大量の食料が、生産者から消費者の元に届くまでの間にさまざまな理由で廃棄されてしまうというものです。他国では食料不足や飢餓が起きており、日本国内でも食料を必要としている人がいるのにもかかわらず、なぜ多くの食料が廃棄されてしまうのでしょうか。
大量に発生する食品廃棄物
食品は、多くの場合、必要以上に生産がなされてコンビニやスーパーなどで販売されています。その際に賞味期限を過ぎて売れ残ったものは食品廃棄物として再利用、または処分されます。平成27年度には、事業者による食品廃棄物の発生量が15,266千トンにもなりました。
このうちの約95%は肥料やメタン燃料に再利用されていますが、消費者に比較的近い小売業や外食業では廃棄される割合が多くなります。
食品廃棄物削減への取り組み
私たちに身近なコンビニやスーパーなどの食品小売業による廃棄量は93万6000トンで、食料廃棄物全体の約6%にあたります。しかし、その再利用率は53%。およそ半分が食べられずに捨てられてしまうのです。
このなかで、コンビニでは食品廃棄物を減らすための取り組みが行われています。ローソンのリサイクル率は47.6%(2013年)でしたが、電子ポイントカードを利用した購買動向の分析で生産量を調整し、食品をリサイクル工場で再利用できるようにしています。
また、過剰に生産してしまった食品は店舗と工場が連携して「さなぎの食堂」で定食メニューの食材として活用されています。
フードバンクは食品問題解決の糸口になるか?食品リサイクル法
このような食品廃棄物を減らすために「食品リサイクル法」という法律が定められています。食品の売れ残りや食べ残しを起こさないように、業種別(食品製造業・食品小売業・食品卸売業・外食産業)に廃棄物の削減目標を定めたものです。
消費が拡大して生活が豊かになっていく一方で、食品の売買のための過剰な生産が廃棄物を増加させています。地域で生産された食材を地域の人が直接購入できるような、生産者と消費者が身近になるような仕組みも必要になってくるのでしょう。