エネルギーバイオマス発電のデメリット|メリットと解決策も深掘り!

バイオマス発電のデメリット|メリットと解決策も深掘り!

農林水産省の「バイオマス・ニッポン総合戦略」ではエネルギー資源の国産化率の増加が期待されています。バイオマス発電の割合も徐々に伸びていますが、メリット以外にデメリットもあるため、解決策を考えながら普及を図っていく必要があります。今回は、そのデメリットを中心に現状を解説します。

バイオマスとは

バイオマスとは

カーボンニュートラルなエネルギー

バイオマスという単語は、生態学で特定地域に生息する生物量(植物・昆虫・動物などの量)のことを指しますが、化石燃料を除いた動植物由来のエネルギー資源を表すときにも使われます。

エネルギー資源の枯渇が問題視されているなかで、生物が作り出すバイオマス資源は再生可能エネルギーとして風力・太陽光などの自然エネルギーとともに注目されています。

農林水産省が進める「バイオマス・ニッポン総合戦略」で「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義されているバイオマスは、燃焼によって排出される二酸化炭素を植物の光合成による吸収で相殺する「カーボンニュートラル」の特性を持った再生可能エネルギーです。

一方、化石資源も生物によって生成された有機物が元ですが、何億年もかけて変化していったもので、人間のライフサイクル内では再生不可能なためバイオマスの定義からは外されています。

バイオマスの種類

バイオマスは、発生源や用途によって廃棄物系・未利用・資源作物に分類されます。

廃棄物系バイオマス

古紙・廃木材・建設廃材・パルプ廃液・食品廃棄物・下水汚泥は、肥料や飼料としてその一部が再利用(サーマルリサイクルを含む)されていますが、多くは焼却・埋め立て処理されています。

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未利用バイオマス

わら・もみ殻・間伐材は、加工せずにそのままたい肥・飼料・畜舎敷料などに使用されます。従来は燃料としても利用されていたものの、ガスや石油の普及により未利用のまま廃棄されてしまうことがほとんどです。

資源作物

トウモロコシやサトウキビのでんぷん・なたね油は、バイオディーゼル燃料やバイオエタノールの製造に利用されています。食糧自給率の低い日本ではエネルギー資源として利用しにくいですが、アメリカやブラジルなどの農業大国では普及が進んでいます。

 

バイオマス発電のデメリット

バイオマス発電のデメリット

残渣の処理や収集・運搬などの手間がかかる

バイオマス発電は、火力発電の燃料をバイオマスエネルギーに置き換えた発電方法で、バイオマスを直接燃焼させる方式とガス化・液化して燃焼させる方式とがあります。また、ガス化・液化方式は加工方法により、熱分解による方法と発酵などの生化学による方法とに分けられます。

バイオマス燃料には、そのまま直接燃焼させる資源と燃料に加工(ガス化・液化)してから燃焼させる資源とがありますが、廃棄物系バイオマスなどの直接燃焼させる資源の多くは、加工にかかるコストが安い反面、エネルギー変換効率が低く残渣の処理に課題を残しています。焚き火や燻製の燃料としての利用もここに含まれます。

燃料に加工してから燃焼させる場合は、熱分解・生物化学による方法のどちらも技術は確立されていますが、加工コストが高く、大量に集めて大規模な施設で処理しなければスケールメリットが生まれず、コストの釣り合いが取れないというデメリットがあります。そのため、収集・運搬・製造の各段階での低コスト化が課題となっています。

バイオマス燃料の確保が難しい

2019年度のバイオマス発電による発電量は262億kWhと、地域の廃棄物処理と雇用創出に貢献しています。しかし、バイオマス発電にはバイオマス燃料が必要なため、ほかの用途との競合により安定的な確保が課題となっています。

廃棄物系バイオマスは、

  • 食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)
  • 建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)

によってリサイクルが義務化されているために収集・運搬の効率化が進んでおり、バイオマス発電への利用が期待されている反面、異なる用途との競合が発生しています。

未利用バイオマスは従来の燃料との競争があるため、製造工程の複雑化により上昇した電力コストを価格に転嫁できないというデメリットがあります。

資源作物については、食料としての利用を優先すべきとの考え方から、食糧自給率の低い日本ではこれを原料とするバイオマス燃料は利用しにくい環境にあります。そのため、藻類やミドリムシを利用する研究や、品種改良や遺伝子組み換えによるバイオマスエネルギーに適した新種の開発が活発に行われているのです。

 

バイオマス発電のメリット

既存の火力発電所が利用できる場合がある

バイオマス燃料を使って発電するバイオマス発電は、太陽光発電や風力発電・水力発電と同じ再生可能エネルギーに分類されていますが、ガス化・液化・固形燃料化して利用する場合は化石燃料との混焼も可能で、その場合は既存の火力発電所が利用できるため建設コストがほかの再生可能エネルギーに比べて安くなります。

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発電以外のエネルギー利用も多岐にわたる

バイオマス発電の用途だけでなく、燃料として実用化されているバイオマスエネルギーも多くあります。バイオガス・バイオエタノール・バイオディーゼル・バイオジェット燃料といった言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。

廃棄物系バイオマスの下水汚泥や家畜排せつ物、生ゴミなどをメタン発酵して作られるバイオガスは、自動車の燃料や調理用のガスとして利用されています。

資源作物のサトウキビやトウモロコシをアルコール発酵して作られるバイオエタノールは、添加剤とともにガソリンに混合して利用され、油やしやなたねから搾油・抽出して作られるバイオディーゼルは、軽油代替燃料として利用されています。

そのほか、天ぷら油などの廃食用油から作られる軽油代替燃料もバイオディーゼルの分類です。

バイオジェット燃料は、ナンヨウアブラギリやアマナズナ・藻類、特にミドリムシを原料とするものが注目されており、航空燃料として利用されています。

 

バイオマス発電のデメリットの解決策

バイオマス発電のデメリットの解決策

低密度・広範囲に存在するバイオマス資源は、コストの問題で流通させることが難しく、地域ごとで活用することに適した資源です。このデメリットを解決するためには、地域内でエネルギー資源としてのバイオマスを生産から消費まで効率的に回していく社会システムの構築が必要になります。

地域資源循環で未来の暮らしを創る「バイオマス産業杜市 真庭」

岡山県北部の蒜山(ひるぜん)エリアに属する真庭(まにわ)市は、その北端で鳥取県と接し、林野面積が約80%を占めているバイオマス資源が豊富な土地です。さらに、北部の高原地区では酪農と肉用牛やブロイラーの畜産が盛んに行われており、ここから出る家畜排せつ物もバイオマス資源として有望です。

2005年に9町村が合併してできた真庭市は、「豊かな自然と地域資源を活かした人と環境に優しい『杜市(とし)』づくり」を基本理念としています。

バイオマスに取り組む以前の真庭市は、北部の高原地区では環境に配慮した農業と担い手育成を目指し、南部の木工団地では未利用木材の有効活用による収益増加を目指していました。この当時、最終処分場を他県に依存していたため、廃棄物資源化の推進が急務となっていたのです。

これらの課題を解決するため、1993年に合併前の市南部地域の若手リーダーが結成した「21世紀の真庭塾」では、バイオマスの活用を目指して

  • 「真庭市木質資源活用産業クラスター構想」の策定
  • 「真庭バイオエネルギー株式会社」「真庭バイオマスマテリアル有限会社」の設立
  • 「バイオマスタウン構想」の策定
  • 「真庭市木質バイオマス活用地域エネルギー循環システム化実験事業」の活動

が行われています。

林業・酪農業の廃棄物をバイオマス資源に

農林水産省が2005年にスタートさせた「バイオマスタウン構想」では、地域内に存在する

  • 廃棄物系バイオマスを炭素量換算で90%以上活用する
  • 未利用バイオマスを炭素量換算で40%以上活用する

ことを目的としています。

これに対して、真庭市のバイオマスタウン構想では、市の主要産業の林業・酪農業からの廃棄物をバイオマス資源とすることで「廃棄物系バイオマスを90%以上活用する」こととしました。

また、林業から排出される林地残材(間伐材、枝払いされた枝葉、根株)から木質ペレット・チップ・木片コンクリート・バイオ燃料を製造し、バイオマス発電まで行っています。酪農業から排出される家畜排せつ物は、液肥やバイオガスなどに加工しています。

さらに、市内で製造された木質ペレットをハウス栽培の暖房に使用するなど、地域関係者の連携により、発生から利用までを効率的なプロセスで結んでいます。

施設見学も展開

真庭市では、バイオマスの源流から製品化・使用までを見学するツアーも企画されています。バイオマスタウン構想の概要の説明の後に町並みを見学、郷土料理を楽しみます。その後、バイオマス製品(木質チップ、バイオガス)の生産拠点を見学し、最後にそれらを利用している施設を見学して終了となります。

映画のロケ地として知られる旧遷喬尋常小学校を利用した観光施設や、バイオマスを活かした地元製品の生産施設を見学することもできます。このツアーには、もともとバイオマスエネルギーに興味のある人が参加することもあって、ツアーへの参加をきっかけに移住する人もいるほど。

アーは20名以上の団体を対象に1ヵ月前までの予約制で行われていますが、「個人・小グループの日」も設定されており、その日の参加希望者が合計で最少催行人数(10名)を満たした場合には、個人や小グループでも参加が可能です。

 

みそ・しょうゆ・日本酒・酢など古くから発酵技術を蓄積してきた日本の技術は、バイオマス資源を有効に活用する術を提供してくれます。資源の少量分散といった状況が収集・運搬コストを上昇させるなど、バイオマス発電にはデメリットもありますが、それらを上手く解決して再生可能エネルギーの比率がさらに高まることを期待したいですね。