環境フードバンクは食品問題解決の糸口になるか?

フードバンクは食品問題解決の糸口になるか?

気が付かないうちに戸棚一杯になっている保存食品。食べ切れないけれど、捨てるのももったいない。そんな気持ちになった時に思い出して欲しいフードバンクについてのお話です。

フードバンク

フードバンク
包装や印字ミスにより商品にならなかった食品を企業から寄付として受け取り、生活困窮者へ配布する活動を行っている団体が「フードバンク」と呼ばれるものです。

寄付をする企業は食品メーカーや外食産業・スーパーなどで、賞味期限に問題はないものの、廃棄せざるを得ない食品を無償で寄付します。これらの食品が、フードバンク活動を行っている団体を通じてホームレスや児童養護施設の入居者、生活困窮者などに配布されるのです。

フードバンクの成り立ち

フードバンクは1960年代のアメリカで始まりました。当時スーパーで大量に捨てられていた食品を寄付してもらい、それを教会の倉庫に集め、必要としている人たちに無償で提供するという形が生み出されました。これは「セントメアリーズフードバンク」と呼ばれています。

この活動は徐々に広がりを見せ、スーパー以外にも農家から余った作物の寄付も受けるようになりました。これを機に「セカンドハーベスト」、後の「フーディングアメリカ」が設立され、全米のフードバンクを統括する役割を果たすようになったのです。

日本初となるフードバンク団体が設立されたのは2002年3月です。日本にやってきた留学生によって始まった活動が同年7月にNPO法人として認証され、2004年には「セカンドハーベストジャパン」として活動するようになりました。

まだ食べられるものを捨てるのではなく活用する、というこの活動は、昔から日本に根付いている「もったいない」の気持ちとマッチし、外資系企業だけではなく日本企業も参加するようになっています。

フードバンクとは フードバンクとは  

フードバンクで食べ物を寄付

フードバンクで食べ物を寄付

寄付可能食品

フードバンクは、企業からだけではなく各家庭からの寄付も受け付けています。

寄付可能な食品の例

  • 賞味期限まで一ヶ月以上ある缶詰などの加工食品
  • まだ十分食べることのできる野菜や果物といった生鮮食品
  • 賞味期限が切れていない防災備蓄品(乾パンやレトルト食品など)
  • 米やパンなどの穀物類
  • 冷凍食品

基本的な考え方としては「賞味期限が切れておらず食品として安全なもの」であれば寄付が可能ですので、それらを目安にして寄付するものを判断するようにします。

寄付できない食品の例

  • お弁当やサンドイッチ
  • 食べ残したもの
  • 賞味期限が切れている、または記載されていないもの

たとえ賞味期限が切れていなくても、お弁当やサンドイッチといった保存に向いていない食品は寄付できません。食べ残しは当然ですが、賞味期限が記載されていない食品も衛生面や安全面の理由から寄付不可となっています。

企業・寄付者からのフードバンク利用の流れ

フードバンクへ食品を寄付する流れは、以下のとおりです。

  • 手順1
    寄付する旨をフードバンク団体へ申し込む
  • 手順2
    寄付予定の品物を確認する(賞味期限、その他の取り扱いなど)
  • 手順3
    寄付が可能であれば合意書などをやり取りする
  • 手順4
    品物の受け渡しを行う

基本的には寄付を行う側が各団体へ配送することになります。拠点となる場所が遠く個人では配送不可能の場合には近場の保管場所を案内してもらえることもありますので、まずは寄付の申し込みをしてみましょう。

個人として食品を送る際の注意点

配送に関わる金額は全て「寄付する側の負担」となります。重くなり過ぎたから引き取りにきて欲しい、持っていくことができないから引き取りに来て欲しい、ということはできません。

また、食品の状態によっては送る方法を変えたり箱を別にしたりする必要もあります(冷蔵・冷凍・常温で分けるなど)。

せっかくの温かい気持ちが悲しい結果にならないために、食品が安全に届くよう十分な配慮を心がけましょう。

フードバンクをうける・協力する前に知っておくべき基礎知識 フードバンクをうける・協力する前に知っておくべき基礎知識

 

フードバンクのメリット

フードバンクのメリット

食品受給者のメリット

明日の食事にすら困っている人たちにとって、フードバンクの存在はまさに命綱です。しかし、受給者が得られるのは単純に食べ物だけではありません。

満足な食事で満たされた心には余裕が生まれ、落ち着きが出てきます。浮いた食費がほかの生活費や教育費となり、受給者の生活そのものに良い影響を与えることにつながります。

企業のメリット

商品として流通しなかった食品は廃棄されることになります。農林水産省の統計によると、企業から出る食品廃棄物は600万トンを超え、食べられるのに捨てられてしまういわゆる「食品ロス」だけで見ても約400万トン。廃棄費用だけでも数千万円以上が掛かってしまいます。

フードバンクに参加することで廃棄費用が掛からなくなり、経費を削減できます。せっかく作った食品を廃棄するという行程がなくなることで企業側の負担も減り、消費者が良い印象を持つきっかけにもなるのです。

行政・自治体のメリット

食品ロスの削減を目指している行政にとっては、フードバンクは生活する者一人ひとりに問題を認識してもらえる良い機会となります。食品に対する「もったいない」の気持ちを改めて考えることで、廃棄に掛かる費用も抑えられます。

フードバンクによる支援は福祉の面でも良い効果をもたらします。直接的な食品支援は命をつなぐバトンとなり、援助を求めている人たちが自立するためのきっかけとなります。それにより福祉予算の負担が軽減され、結果として国全体への潤いとなっていく可能性もあるのです。

 

フードバンクのデメリット

フードバンクのデメリット

問題が起こった際の責任の所在

これだけの利点があるフードバンク活動ですが、それでもいくつかの課題や問題点を抱えています。一番の問題となるのは、フードバンクで受け取った食品にトラブルがあった場合、責任が誰になるのかという点です。

フードバンク活動を行っている団体のほとんどは、寄付される食品において注意を喚起し、賞味期限切れや保存状態などのチェックを徹底して行っています。

しかし、トラブルとまではならないものの、一部の缶詰に歪みがあり空気が入って悪くなっていた、提供された野菜の一部に問題があり食べられなかった、といった報告例も少なからず存在しているのもまた事実です。

フードバンクの地域格差

全国各地で広がりを見せているフードバンクですが、その活動を理解して参加している企業の多くは都心部に集中している傾向があり、地方でのフードバンクは存続の危機に直面しているケースも多くあります。

フードバンクは非営利団体なので、活動を続けるためには食品とともに活動そのものを支える資金の寄付も不可欠です。都心部では活動を続けるだけの支援が集まりやすいことに加えて情報も回るので、企業のイメージアップに反映されるのも早いのですが、地方での活動では支援も情報も不足しているために思うようにならないという現実があります。

 

食品ロスと貧困問題、その両方の解決策となる可能性を秘めているフードバンク。これが根付くためには、行政の本格的な取り組みと私たち一人ひとりの意識の変化の両軸が必要になっていくでしょう。