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再生可能エネルギーとは
二酸化炭素を排出せず半永久的に利用が可能
再生可能エネルギーとは、火力発電・原子力発電に代わる、環境に優しい発電方法として注目を集めているエネルギーのことです。
資源が枯渇する心配がなく半永久的に利用が可能で、かつ、発電時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化への対策にもなります。
再生可能エネルギーが注目を集めている背景には、現在の日本のエネルギー事情があります。日本はエネルギーの8割以上を化石燃料に依存している状態(2019年度は84.8%)で、さらにそのほとんどを海外から輸入しているため、2020年度のエネルギー自給率は11.2%となっています。もっとも低かった2014年度の6.4%からは回復の兆しを見せていますが、それでも低い水準と言えるでしょう。
さらに、新興国の経済発展で世界各国のエネルギー需要が増えたことで化石燃料の市場価格が乱高下しており、エネルギー市場の情勢は不安定な状態が続いています。
上記の背景に加え、化石燃料の使用にともない発生する温室効果ガスの増加が国際問題になっていることから、再生可能エネルギーの必要性が高まっているのです。
再生可能エネルギーの普及率
2016年5月に、ポルトガルの再生エネルギー依存度が一時的に100%を達成したというニュースが報じられました。風力・太陽光・水力発電のみで107時間もの間、電力需要をまかなうことができたのです。
また、近年は中国で太陽光発電に対する支持が高まっています。2021年の1年あたりの太陽光発電導入量は54.9GWで世界トップとなっており、累積でも308.5GWで同じく1位です。なお、日本は6.5GWで4位になっています。
さらに、再生可能エネルギー先進国として知られているドイツは5.3GWの6位で、累積導入量では59.2GWの5位。3位の日本(78.2GW)とはやや開きがありますが、人口比を考慮すると普及率は同程度と考えられます。
導入促進に向けたこれまでの取り組み
再生可能エネルギーの導入を推進するために過去に行われた取り組みとして、チャレンジ25地域づくり事業があります。これは、「2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年の数値から約25%削減する」という目標を達成するために環境省が行った事業です。
環境負荷の小さい地域づくりのため、地域単位で確立されている温室効果ガスを削減するための効果的かつ先進的な対策に着目し、それらの事業性・採算性・波及性の検証を行って全国に広めることが目的でした。
- 都市で未利用の熱を活用
- 低炭素型交通システムの構築
- 大規模駅周辺の低炭素化
- バイオマスエネルギーの活用
これらのいずれかに当てはまる事業に対して支援が行われました。
再生可能エネルギーのデメリット
「化石燃料の多くを輸入しているのだから、いますぐ積極的に再生可能エネルギーの割合を増やせばよいのでは?」と考える方も多いでしょう。しかし、なぜ日本では再生可能エネルギーの普及が進まないのでしょうか。考えられる原因は以下のとおりです。
コストパフォーマンスが悪い
再生可能エネルギーは火力発電・原子力発電など既存の発電所に比べてエネルギー密度が低いため、設備面積は大きいものの肝心の発電量が少ないというデメリットがあります。火力発電所と太陽光発電所を比較した場合、単位面積あたりの発電量には2000倍以上の差が出ることも。
そこで、再生可能エネルギーの普及と価格の低減のために2012年から固定買取価格制度が導入されていますが、この制度の下では逆に消費者の負担が大きくなるという課題もあります。
発電量が安定しない
再生可能エネルギーは、太陽光発電と風力発電のように天候など自然条件に左右されて供給が不安定になることも多いため、一時的に不足した電力をどう補うかも大きな課題です。これは、上記の発電コストにも影響する要因です。
発電された電気は大量に蓄えるのが困難なことから、使用される電気量と供給する電気量のバランスを常に保つ必要があるため、
- 出力が常に一定の原子力発電
- 簡単に発電量の調節が可能な火力発電
- 任意のタイミングで発電を行える水力発電
を組み合わせて電力供給のバランスを取っていく必要があるのです。
建設できる場所が限られる
再生可能エネルギーの発電には広い土地や適した地形が必要になるため、施設が建設できる場所が限られるというデメリットも重要です。
再生可能エネルギーのさらなる普及のためには、こういった課題を解決しなければなりません。具体的なメリットやデメリットについては、次の見出しで深掘りしていきます。
再生可能エネルギーの発電方法別のメリット・デメリット
火力発電に代わるエネルギー資源として関心が寄せられている再生可能エネルギーですが、ここでは、主要な5つの発電方法別にメリットやデメリットを見ていきたいと思います。
太陽光発電
太陽光発電は、太陽電池を使用して太陽光をエネルギーに変換して発電を行います。再生可能エネルギーの中では最も導入が進んでいるのですが、その理由は以下のメリットがあるからです。
- 空きスペースがあればどの地域でも設置が可能
- 二酸化炭素を排出せずに発電できる
- 太陽光をエネルギー源としていることから、枯渇する心配がない
- 一度設置してしまえばメンテナンスの必要がほとんどない
変換効率の悪さやコストの高さ・気候条件による発電量の変動などデメリットも残されているものの、多くの家庭で導入ができているのは、ソーラーローンというシステムのおかげでしょう。
太陽光発電を導入する場合に使用が可能なソーラーローンは、金融機関から低金利で支援が受けられるものです。発電された電力は自由に売電できてローンの返済に回せるため、銀行の審査も厳しくないとされています。
また、家庭用のみならず、近年はソーラーパーク(企業が建設した大がかりな発電設備)と呼ばれる発電所も多く建設されるようになりました。エネルギー源が太陽光のため、宇宙開発でも活躍が期待できます。今後の日本の発展には欠かせないものとなるでしょう。
さらに、日本において太陽光発電の地位を確立するための技術開発を目的として行われている事業に、太陽光発電システム次世代高性能技術の開発があります。以下の5種類の研究に加えて「共通基盤技術の研究」の合わせて6つのテーマについて開発が行われています。
結晶シリコン太陽電池
太陽光エネルギーを電気へと変換する際の効率が非常に高いとされ、太陽電池の中で最も多く使用されているものの、コストの高さが懸念されています。
薄膜シリコン太陽電池
厚さ1μm未満のシリコンを何層にも重ねて作られた電池で、結晶シリコンに比べて1/100の量で済むためコストが大幅に抑えられるものの、電気への変換効率が悪くなります。
色素増感太陽電池
主に酸化チタンを用いて作られる電池で、色素を吸着させることによって光を吸収して発電します。しかし、電極に白金やルテニウムなどの高価な金属を使うためコストが大量にかかる、熱や紫外線に弱く素材の劣化によって発電の効率が落ちてしまうといったデメリットがあります。
CIS・化合物系太陽電池
「Cu(銅)」「In(インジウム)」「Se(セレン)」の頭文字を取って名付けられました。
製造工程がシンプル、シリコン型に比べてコストがかからない、暑さに強いというメリットがあるものの、変換効率が悪いというデメリットもあります。
有機薄膜太陽電池
有機薄膜半導体を用いて作られ、軽量で大量生産に向くことから期待されている電池。エネルギーの変換効率が悪く耐久性も低いため、今のところ普及率は低い水準となっています。

風力発電
風力発電は、風の力を利用して風車を回し電力へと変換するシステムです。二酸化炭素を排出しないことに加えて、エネルギー変換効率の高さや発電コストの安さも魅力的です。
地上のみならず海上にも設置ができて設置工事も短期間で終わることから発電所の数は増加しているものの、一年を通して安定的に風が吹いている場所でないと一定量の電力が得られず、日本ではそのような場所は多くないため、さらなる改善が要求されています。

水力発電
水力発電は、水の流れを利用して水車を回し発電するシステムです。発電方法は、河川・用水路に直接水車を設置して発電する「流れ込み式」と、一度ダムに水を集め、放流することで発電する「貯水池方式(ダム式)」の二種類があります。
豊富な水資源を持つ日本では、
- 二酸化炭素を排出しない
- 水量調節が簡単なため発電量を自由にコントロールできる
というメリットから水力発電をメインとして発電が行われていました。しかし、高度経済成長期に入ったことで電力の需要が急増し、短期間で膨大な電力を供給できる環境が求められたため、大規模な火力発電所が相次いで建設されるようになりました。
これにより、かつては「水主火従」だった日本も1963年には「火主水従」へと変化し、水力発電は衰退していったのです。
また、ダムを利用する大規模な施設を建築できる地域はすでに開拓が行われており、環境面への影響も考えるとこれ以上の開発は難しいと考えられています。
そのため、現在では流れ込み式を利用した「小水力発電」が注目を集めています。小水力発電は場所を選ばずに建設が行えるため、エネルギーの地産地消も可能となります。

地熱発電
地熱発電は、地下に存在するマグマの熱を利用して発電するシステムです。地中に含まれている水分は、地下深くに進むにつれてマグマの熱によって蒸気に変化していきます。
この蒸気を利用するために1000m~3000mほどの深さまで掘削して井戸を作り、そこから噴出させた蒸気でタービンを回して発電が行われます。
地震大国の日本において地熱資源は豊富ではあるものの、
- 発電所の建設に多くの時間と費用を要する
- 水力発電以上に建設場所が限定される
といったデメリットがあることから、導入はほとんど進められていないのが現状です。

バイオマス発電
バイオマスは、木くずや稲わら・可燃ごみなどの資源の総称で、バイオマス発電とは、これらを「燃やす」あるいは「ガス化する」ことでタービンを回して発電するシステムのことです。
発電時に排出される二酸化炭素は、原料となっている植物が成長中に行う光合成で同程度吸収されているため、結果的に二酸化炭素を増やしていることにはならない、と考えられています。
このような考え方を「カーボンニュートラル」と呼び、世界的に取り組みが進められています。
- 廃棄されるはずのごみを資源としているため環境の地域改善につながる
- 天候に左右されることなく資源の供給ができる
というメリットがあるだけでなく、環境条件にも左右されないため多くの場所に発電所が建設できることから、エネルギーの地産地消にも期待が持てます。

今後の普及が期待される再生可能エネルギー
再生可能エネルギーには、先ほど説明した5つ以外にもさまざまな発電方法が存在します。
太陽熱発電
太陽熱発電とは、太陽光をそのまま用いるのではなく、太陽の熱を利用してタービンを回すことで発電を行う方法です。
ソーラーパネルでの発電は、太陽の光を直接電力に変換しているため、太陽が昇っていない夜間には供給が行えないというデメリットがありました。
しかし、太陽の熱を利用したこの発電方法は、専用の蓄熱装置によって熱エネルギーの保存が可能なため、昼夜を問わず安定した電力の供給ができるようになりました。さらに、反射鏡・レンズを使用して行われるため、ソーラーパネルを使用する太陽光発電よりも低コストでの発電が可能です。
雪氷熱利用
雪氷熱利用とは、北海道などの寒冷地で導入が進められているシステムです。冬季に降り積もった雪・氷を保存し、夏季にアイスシェルターや雪冷蔵として活用することで電力の消費を抑えるというこの試みは、本来であれば除雪・融雪にかかるはずの費用を削減することにもつながります。
雪を大量に集めて運搬する方法や保存するための大規模な施設の確保などまだ課題は残されていますが、デメリットをメリットに変えられる再生可能エネルギーとして、全国ですでに100ヵ所以上に導入されています。
温度差熱利用
温度差熱利用は、地下水や河川水・海水・下水などの水源の温度と大気中の気温の差を利用して行われます。水源の温度は気温に比べて、夏には低く・冬には高い傾向にあるため、この温度差をヒートポンプ技術によって熱エネルギーへと変換し、給湯・冷暖房へと活用します。
自然から生まれたクリーンなエネルギーとして全国各地で普及が進められています。
地中熱利用
地下10m~15mの深さにおける温度は年間を通してあまり変化が見られません。そのため、地中の温度は気温に比べて、夏には低く・冬には高い傾向となり、温度差熱利用と同様に温度差を利用してさまざまなシステムに活用されています。
このように、日本には活用が期待されるさまざまなエネルギー資源と発電方法が存在しています。自然環境にも配慮がされた再生可能エネルギーは、安定的な電力の供給・発電コストの削減といったさまざまな課題やデメリットを乗り越えて、今後広く普及していくことでしょう。豊かな自然を持つ日本の今後の取り組みに注目が集まります。