SDGs・サステナビリティサステナビリティレポート(CSRレポート)って何?発行の目的と課題

サステナビリティレポート(CSRレポート)って何?発行の目的と課題

近年、企業による開示が増えているサステナビリティレポート(CSRレポート)。なぜこのレポートが発行されるようになったのでしょう。

サステナビリティレポートとは

企業の活動は環境や社会に影響を与えている一方で、企業そのものがそれらの外的要因から影響を受けているという側面があります。

企業が短期的な収益のみを追い続けてしまうと、長期的に見た場合に事業活動が存続できなくなる可能性があるのです。

さらに、事業活動による負の影響は、発展途上国の人々をはじめとする社会的弱者や、まだ生まれていない次の世代(声なきステークホルダー)に大きな打撃を及ぼします。

そのため、将来世代のニーズを損なうことなく現代世代のニーズも満たす「持続可能な発展(サステナブル・ディベロップメント)」の考え方が広まり、この実現に向けた企業の取り組みを開示する「サステナビリティレポート」の発行が世界で進んでいます。

レポートで取り上げられる主な項目

サステナビリティレポートで記載する内容に明確な規定はありませんが、投資家がESG※1投資の枠組みで利用するケースが増えてきたため、この枠組みにしたがってそれぞれの項目を記載する企業が増えています※2
※1:環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)
※2:詳しくは後述のレポーティングガイドラインを参照。

サステナビリティレポートとCSRレポート

企業によって、同じ非財務情報報告書でも「サステナビリティレポート」と「CSRレポート」の名称の違いが見られます。

企業活動が社会に対して与える影響を考えるという点では同じですが、後述のSDGs(SはSustainableの頭文字)(持続可能な開発目標)の認知の高まりや、社会問題の解決に向けた「アウトサイド・イン」の視点を強調して、「サステナビリティレポート」と「CSRレポート」の名称を明確に使い分けている企業も増えています。
「CSR」という単語に対して、単純な寄付や社会貢献活動のみがイメージされてしまうケースが存在する。

なぜサステナビリティレポートが広まったのか

「サステナブル」「持続可能な開発(発展)」という概念は、1987年に開催された「国連環境と開発に関する世界委員会(通称:ブルントラント委員会)」において発表された報告書に遡ります。

広まった背景

ブルントラント委員会で発表された最終報告書『われら共有の未来(Our Common Future)』では、環境保全と経済発展を対立するものとして捉えるのではなく、車の両輪のように調和させていく必要性が説かれました。

そして、1992年の「国連環境開発会議(通称:地球サミット)」、2002年の「国連持続可能な開発に関する世界首脳会議(通称:ヨハネスブルグ・サミット)」などを経て、「CSR元年」と呼ばれる2003年を迎えます。

2015年のSDGsとパリ協定が時代の転換期に

しかし、CSR(企業の社会的責任)に対して本業とは関係ない寄付や社会貢献活動のイメージが先行し、企業の取り組みも表層的なものに留まります。

この間にCSRに関する国際的な規格化が進み、2010年には初めての国際規格であるISO26000が発行。

そして、2015年9月にグローバル課題に対する目標を定めた「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」、12月には史上初めてすべての国が参加する気候変動における枠組み「パリ協定」が立て続けに採択されます。

さらには、SDGsの採択から間もない9月28日、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、ESGを推進するUNPRI(国連責任投資原則)に署名したことを発表。これにより、欧米に対して遅れを取っていた日本におけるCSRの取り組みが加速する下地が整っていきます。

この流れを受けて2017年、日本経済団体連合会(経団連)もSDGsの達成を推し進めるために企業行動憲章を改定。この取り組みはあらゆる企業に及んでいます。

 

サステナビリティレポートはこう作られる

サステナビリティレポート(CSRレポート)の作成項目に規定や書式はありませんが、同業他社との比較や明瞭性、経年変化の把握などを容易にするため、一般的にはガイドラインに則して作成されることがほとんどとなります。

レポート作成のガイドライン

一般的に多く使用されているガイドラインには

・GRIスタンダード(GRIガイドライン第4版(G4)から格上げされて2016年に発行)
・ISO26000(組織の社会的責任に関する初めての国際規格として2010年に発行)
・SASBサステナブル会計基準(11産業77業種別の非財務情報の開示基準。2016年に公表の後、2018年に改定版スタンダードを公表)

があり、各企業が何に(あるいは複数に)準拠するかは個々の判断に委ねられ、ガイドラインに準拠した場合には企業サイトで「GRIスタンダード対照表」「ISO26000対照表」といった形で公表されることになります。

一例を挙げると、ISO26000では「気候変動におけるリスク」「組織内外のエネルギー使用量」「地域コミュニティに関するマネジメント」など、その項目は多岐にわたります。

どのように作られているのか

サステナビリティレポートを作成するにあたって、まず最初に取り組むべきはステークホルダーの特定です。

自社が事業活動を行うことで、誰に影響を与えているのか、あるいは誰から影響を受けているのかを特定することで、これらのステークホルダーと継続的・効果的にコミュニケーションを取っていくことが可能になります(ステークホルダー・エンゲージメント)。

SDG Compassによる5つのステップ

ここで、企業がサステナブル経営を推進していくにあたり多く参考にされているのがSDG Compassです。2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けてどうやって取り組んでいくべきか、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、GRIが発表した文書で、この文書では取り組みを下記の5つのステップに分けています。

  • ステップ1:SDGsを理解する
  • ステップ2:優先課題を決定する
  • ステップ3:目標を設定する
  • ステップ4:経営へ統合する
  • ステップ5:報告とコミュニケーションを行う

バリューチェーンで考える

SDG Compassでは、自社が取り組むべき課題を考えるうえで、「バリューチェーンマッピング」を推奨しています。これは、企業が環境や社会に与える影響がその企業の活動範囲よりも広範にわたることを前提として、原材料の生産から調達物流、製品の使用や廃棄に至るまでのバリューチェーン全体を把握して影響評価を行うことです。

これにより、企業が外部に与える負の影響を最小化し、正の影響を最大化する事業戦略の策定のための一歩が踏み出せるようになります。

アウトサイド・イン(バックキャスティング)でのアプローチ

SDG Compassでもう一つ特徴的なのが「アウトサイド・イン(バックキャスティング)」という概念です。これは、将来あるべき姿を想像して、その目標に向かうために今から何を行っていくべきか考えていく方法論です。

現状では、各企業がすでに行っている事業をSDGsが示す世界的な課題に単純に紐付ける(マッピング)だけのケースも多く、これでは新しい事業創造につながることはまれです。

まず不可能とも思える目標を立て、そこに向かって非連続な成長による事業活動(transform)を行っていくことが求められています。

公開時期と活用方法

サステナビリティレポートは事業(会計)年度の終了前から制作が進められ、3月決算の場合には8月〜9月に公開となるケースが多数。

作成されたレポートは概要版やWeb版も含めて一般に公開され、外部とのコミュニケーションのために活用されたり、社内教育のために使用されることもあります。

 

まだまだ課題は山積み

上場企業を中心に発行数が増えているサステナビリティレポート(CSRレポート)ですが、同時に問題も抱えています。

発行社数の伸び率の鈍化

サステナビリティレポートをはじめとする非財務情報を開示している企業数は安定して増加しているものの、その伸び率は鈍化傾向にあり、上場企業を中心とした普及が一巡したように見受けられます。

今後は中小企業をはじめとする多くの組織での発行が望まれます。

他のコミュニケーションツールを含めた戦略性の不足

企業が発行しているコミュニケーションツールには、決算などの財務情報報告書、サステナビリティレポートや環境報告書といった非財務情報報告書、さらには財務情報と非財務情報とを組み合わせて開示する統合報告書などがあります。

本来、このそれぞれのコミュニケーションツールは対象とするステークホルダーが異なります
各企業によりコミュニケーションの戦略は異なるが、主に財務情報は投資家・株主向け、非財務情報は地域社会や社員・取引先等、統合報告書は幅広い対象の場合が多い。

しかしながら、各報告書で(対象とする読者が異なるのにも関わらず)同じような書きぶりをしていたり、統合報告書が財務情報報告書と非財務情報報告書との単なる合冊(コンバインレポート)になっていたりと、それぞれのツールで読者に対して適切な情報開示が行えていないケースが多く存在します。

 

消費者や地域社会をはじめとするステークホルダーに企業が環境・社会に対する取り組みを発信するサステナビリティレポート。

企業が情報を適切に開示する責務がある一方で、それを読む私たちにも一定のリテラシーが求められるでしょう。企業活動を正しく理解した先に、適切な消費行動が成り立つからです。