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加速する日本人の晩婚化
晩婚化とは
晩婚化とは、平均初婚年齢が高くなっていくことを指します。日本や欧米などの先進国だけでなく新興国や発展途上国でも見られるようになり、世界的な現象となっています。
数値で見る晩婚化の進行
総務省の国勢調査によると、1980年の平均初婚年齢は男性が27.8歳で女性は25.2歳でしたが、2013年の結婚年齢は男性30.9歳で女性が29.3歳と、この30年間に男性で3歳以上、女性で4歳以上も上昇しています。
また、初婚年齢の地域差に目を向けると、最も遅いのが東京(男性32.2歳、女性30.4歳)、最も早いのが福島(男性29.8歳、女性28.2歳)です(2013年厚労省調査)。
この地域差は、地元に残るか東京の大学に進学するかの選択も一因となっているのではないでしょうか。地方の高校を卒業し地元で就職した若者は経済的自立を達成して結婚が早くなる一方、東京の大学に進学すると卒業後も地元に戻らず都会で就職するケースが多くなり、結果的に結婚が遅くなる傾向があります。東京にいると結婚を急ぐ必要性を感じない、ということも理由の一つでしょう。
晩婚化が進む原因
若者の晩婚化が進む原因としては、以下のことが考えられます。
価値観・生き方の変化
結婚観や価値観が変化したことで、
- 結婚は必ずしも人生において必要ではないし、メリットが見つからない
- 法的な結婚制度や慣行がわずらわしいと感じる
- 結婚して自分のお金を自由に使えなくなるのが嫌だ
- 自由な時間を奪われたくない
と考える人が増えつつあります。
また、結婚適齢期になっても結婚せず親元で独身のまま暮らす男性のことを「パラサイト・シングル」と言います。親と同居することによって生活費や家事労働の負担が減り、経済的にも時間的にも豊かな暮らしができます。過保護な親が増えていることも原因の一つです。
不自由を感じにくくなった
外食や中食が発達したことで食べたい料理を好きな時間に食べられ、欲しいものはインターネットで購入ができ、家電が高性能化したことで家事にかかる時間を大幅に減らしてくれる。このように単身で生活していくことにあまり不自由を感じにくくなってしまったことで、結婚の優先順位が低くなってしまっている恐れがあります。
経済的な理由
結婚すれば自分だけではなく、配偶者の生活のことも考えなければならず、出産した場合はさらに子どもの養育費もかかるようになります。また、雇用構造の変化による非正規雇用の増加により、経済的な余裕がない家庭も増えてきていることもあり、結婚や子育てに対して後ろ向きになる傾向があるようです。
女性の社会進出
高学歴志向の強まりや男女雇用均等化によって女性の社会進出が増えたことも晩婚化の原因として考えられます。女性が働きやすい環境が整ってきたことで、結婚・出産・育児といったライフプランよりも、その分自分のやりたい仕事に注力したいという意識を持った女性が増えてきているようです。
良い相手と出会える機会が少ない
交際相手と結婚相手に求めている条件は必ずしも同じとは限りません。
結婚相手に求める条件には「性格が合う」「誠実な人」といった条件のみならず、「料理がおいしい」「収入が高い」「顔が良い」というように、異性への要求水準が高くなりすぎて、適当な相手を見つけるのが難しくなってしまうことが結婚が遅くなる大きな原因のようです。
晩婚化の原因と思われる要因を挙げましたが、男女によってその重要度は変わってくるでしょう。時代の変化を感じるとともに、共感できるものや自己中心的だと思われるものなど多岐にわたります。
全体的には、将来に希望が持てないという失望感が根底にあるのかもしれません。
晩婚化による影響と対策
晩婚化が進むことでの影響
出生した時の母親の平均年齢を見ると、2013年では第1子が30.4歳、第2子が32.3歳、第3子が33.4歳であり上昇が続いています。
年齢を重ねての出産は難しく、流産・早産・難産の懸念もあり、不妊治療が必要となれば高額な医療費もかかります。子育てには体力も必要ですので、高齢になるほど体力的な負担も大きくなります。
晩婚化にともなう出産年齢の上昇は「第3子出生」を減少させ、さらに「第2子出生」へも影響し、最終的には「不妊」につながっていくと考えられます。また、高齢での出産を諦めてしまうケースも出てくるでしょう。
政府は少子化対策に積極的に取り組まれていますが、主たる要因の一つとなっているのは晩婚化です。晩婚化に起因する少子化が労働力人口の減少や社会保障の課題などを引き起こすことを考えれば、問題の深刻さが分かるでしょう。
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晩婚化が進行する要因として、「経済的不安」「子育てへの不安」が考えられます。
このために政府は、結婚・出産後の正規雇用を確保し非正規雇用を減らすなど経済的な安定を図るとともに、夫の家事や地域社会と連動した育児支援・学童保育の拡充に取り組むとしています。
高学歴の女性で40歳を目前に子宝に恵まれず、不妊治療を続ける方もいます。「卵子も老化する」という事実を早くから知っていれば、時機を逸することもなかったはずです。そういった状況を理解し、妊娠・出産する時期を失わないための知識や情報を得ていくことが重要です。
道徳上の問題とも関係しますが、日本では結婚をしていない女性の出生数は非常に少なくなっています。「できちゃった婚」をネガティブなイメージでとらえる風潮もありますが、生物学的には「産みたいときに産む」ことをポジティブに捉えることも必要かもしれません。
結婚前か後にかかわらず、若いうちの妊娠・出産が可能になれば高齢出産のリスクも低下します。
政府の少子化対策に加え、女性活躍社会の実現や出会いの場を作ることは確かに環境整備として必要ですが、これだけでは若者の意識は変わらないでしょう。
20代の若者に「年金受給」や「学費負担」「介護費用」と言ってもピンとこないのも無理のないことです。親の価値観を押し付けても反発されるだけです。
しかし、将来自分にふりかかってくる問題を見逃さないためにも、親世代が伝えていく義務があります。妊娠・出産に適齢期があることを若いころからしっかりと教育する必要があるのです。
平均寿命は伸びているのに歯止めがかからぬ「人口減少」
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は2060年に8,674万人にまで減少すると見込まれています。平均寿命は伸びているのに総人口は減少していくという状況です。
今後は高齢者の人口が多いことから多死化が進み、同時に少子化も進んでいきます。人口減少を食い止めるのは至難の業になるでしょう。
人口減少問題
総務省「国勢調査」によると、2015年の日本の総人口は1億2,520万人、生産年齢人口(15歳~64歳)は7,592万人です。14歳以下の人口は1982年から減少が続いており、日本の将来に暗雲が立ち込めます。
人口減少に歯止めをかけるには、合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子供の数)を向上させなければなりません。2013年の日本の合計特殊出生率1.43に対し、人口置換水準は2.07人です。つまり人口を維持するのに必要な女性が産む子供の数(2.07人)に遠く及ばないのです。
日本の人口のこれから。減少は止まらない。
晩婚化に歯止めをかけるには、政府の経済的な支援対策や男女の役割分担などの政策に加え、時間をかけて若者の意識と自覚を促す努力が求められています。親世代の価値観を押し付けるのは逆効果になるだけでしょう。
物質的に豊かな生活を送ってきた若者世代に将来の実情をもっと認識させ「高齢出産のリスクや危機意識を持ちつつ日本を背負っていく」という責任感を持ってもらうためには、親だけでなく社会全体の各方面からの努力が求められるでしょう。