ライフスタイルスローフードとは?|日本の現状や食材例・ファストフードとの違い

スローフードとは?|日本の現状や食材例・ファストフードとの違い

スローフードとはイタリア発祥の国際的な社会運動で、その土地の食材を使って郷土料理や文化を見直すことを目的としており、その運動は世界各地に広がっています。そこで、スローフードの日本での現状や食材例、さらにはファストフードとの違いについても紹介していきます。

スローフードとは?

スローフードとは?

スローフードの発祥

スローフードは、1986年にイタリアのピエモンテ州ブラで提唱された草の根運動です。

ファストフードに対して、「おいしい(Good)、きれい(Clean)、ただしい(Fair)食べ物をすべての人が享受できるように」をスローガンとしています。土地に根ざした伝統食材を活かし、食材に合った調理・食べ方を学び、消費者と生産者のつながりを作るなど、さまざまな活動が行われています。

イタリアが発祥のこの運動は160以上の国に広まり、国際組織となっています。日本でも、スローフード国際本部から承認を受けた一般社団法人日本スローフード協会が2016年に発足しました。

大きな組織はありますが、スローフードはまず個人的に行うもの。住んでいる地域で作られた食材を使い、食生活や地域に根付いた文化を見直すこともスローフード運動になります。

ファストフードとスローフードの違い

調理時間が短いものや注文してすぐに食べられるファストフード。代表的な食べ物としてはハンバーガーやフライドチキンが挙げられます。また、一部のうどんや牛丼もファストフードに分類されています。

外国から入ってきた食事形態のように思われがちですが、日本でも古くから存在していました。江戸時代に屋台で市中を回っていた蕎麦屋、おでん屋、天ぷら屋は、注文してすぐに食べられるファストフード。寿司も立ったまま気軽につまんで食べるものでした。

ハンバーガーに代表されるアメリカ式のファストフードが日本に伝わったのは、1970年代の初めごろ。以後、日本で続々とハンバーガーチェーン、牛丼屋、うどん屋などが誕生しました。

一方のスローフードは「食べ物をじっくり見直し生活に豊かさを持ちましょう」という活動を表し、食べ物自体を指す言葉ではありません。

スローフードと地産地消は同じもの?

スローフードと似た言葉として地産地消がありますが、この二つの言葉(活動)は、まったく同じではないものの、一部では重なりもあります。

スローフードは、その土地で作られた食材を使い、食生活や地域に根付いた文化を見直すことが大きな目的なのに対して、地産地消はその土地で作られた食材を使うこと自体を目的としています。ですから、文化にまでは深入りしていないのですね。つまり、大きなくくりで捉えると、スローフードという大きな活動の一部分に地産地消の考え方がある、と理解しても構いません。

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スローフードの日本での現状

スローフードの日本での現状

(一社)日本スローフード協会の取り組み

2016年の3月に発足した(一社)日本スローフード協会。世界160ヵ国にもなるネットワークをはじめ、他団体や行政とも協力し、食の教育やイベントなど多岐にわたる活動をしています。

スローフード協会が行っているのは、「生物多様性の保護」「消費者と生産者のつながりを作る」「深刻な食の問題に対する認知度を上げる」ためのプロジェクトです。日本にある多くの支部でも、さまざまな取り組みが行われています。

さまざまな国や地域で行われる生物多様性保全への取り組み さまざまな国や地域で行われる生物多様性保全への取り組み

味の箱舟プロジェクトによるガイドライン

味の箱船プロジェクトとは、各地域独自の品種や加工食品・希少品種・伝統漁法などを守り伝えるため、世界共通のガイドラインで選定し、支援するものです。1996年に制定されて以降、4200を超える動物・果物・野菜の品種・加工費食品が認定され、販売促進のための情報提供やさまざまな支援策により、地域食が守られています。

味の箱舟の認定基準

  • 地域の自然や人びとの生活と深く結びついている
  • 小さな作り手による限られた生産量である
  • 現在、あるいは将来的に、消滅の危機に瀕している
  • 遺伝子組み換えが生産段階において一切関与していない
  • トレードマークや商業的ブランド名が付いていない

日本でも北海道の「まさかりかぼちゃ」、長崎県の「ゆうこう」、福井県の「谷田部ねぎ」など、多くの品目が認定されています。

 

スローフード運動の食材例:木曽スローフード街道フェスタ

スローフード運動の食材例

自然と歴史がたっぷりある木曽は、おいしい郷土食も多い地域。「木曽スローフード街道フェスタ」は2010年から始まった食のイベントで、木曽の特産品を味わえます。

木曽の食の伝承とPRを目的にしていて、会場には伝統の保存食「すんき」を使った料理など、木曽を代表する料理がずらり。郷土食だけではなく伝統食材を使った新しい料理も味わえるのが特徴で、サラダやデザート、地酒や地ビールまで勢ぞろいします。

すんき

「すんき」は古くから木曽に伝わる保存食。赤かぶの葉を乳酸発酵させたもので、塩は不使用。植物乳酸菌のみで作られる漬物です。

すっきりした独特な酸味があり、食物繊維も豊富。ヨーグルトに匹敵するほどの乳酸菌を保有していることも分かってきたため、健康維持の面でも注目を浴びています。

五平餅

五平餅は、木曽をはじめ伊那地方や岐阜県、富山県にも伝わる郷土料理です。平べったい楕円形をしており、神様に捧げる「御幣」の形をしていることからその名が付いたと言われ、御幣餅と表記されているものもあります。

炊き上げたうるち米をつぶして串で固め、タレを付けて焼くというものですが、古くから家庭で作られていたこともあり味はさまざま。主にしょう油や味噌をベースに、ゴマやクルミ、エゴマを加えたものが多いですが、エゴマをベースに砂糖しょう油を加えて焼き上げるものもあります。

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家庭で作る場合にはさらにバリエーションが増え、ハチミツを加えることもあります。香ばしさも特徴の五平餅は、木曽のグルメとして人気が高い料理です。

朴葉巻き

朴葉巻きは、木曽地方で月遅れの端午の節句に用いられてきたお菓子です。こねた米粉をでつぶ餡を包み、大きな朴の葉でくるんで蒸し上げられた朴葉巻きは、独特の風味を持つ、優しい味わいが特徴です。

また、朴の葉には抗菌作用があり、数日保存できることも特徴の一つ。木曽の夏を代表する菓子でもあり、自宅で作られておやつとして食べられることも多く、家庭によって大きさや餅の固さに違いが見られます。

地酒

酒造りに適した気候と、おいしい地酒に必要な清水も流れる木曽地方。古くから、おいしいと評判の地酒が4つの蔵元で造られています。

最も古くから酒造りを行っている蔵元が創業したのは江戸時代初期。最も新しい蔵元の創業でも1892年(明治25年)と、歴史と伝統を持つ地酒です。

おいしいお酒はいくつもありますが、西尾酒造(株)の「木曽のかけはし」、(株)湯川酒造店の「木曽路」、(株)中善酒造店の「中乗さん」、七笑酒造(株)の「七笑」は蔵元の代表銘柄。どれにしようか迷ったときは、まずこちらを味わってみてはいかがでしょう。

 

スローフード以外にも!岐阜の魅力を活かした「スローライフ」

岐阜市におけるスローライフ

岐阜県では、岐阜の自然や歴史・文化をはじめ、伝統工芸や郷土料理、祭りなどの「岐阜らしさ」を見直し、育み活動する都市型のスローライフスタイル運動が推進されています。この運動は「スローライフ運動」とも呼ばれており、大きく5つのジャンルに分類されています。

音楽(スローミュージック)

  • 鵜飼いの音(「ほーほー」という鵜飼いの掛け声、船べりを叩く音、篝火のはじける音)
  • 鏡島地区の虻凧(あぶだこ)の音(ブーンという羽音のような音)
  • 伝承音楽「山の神(やまのこ)」で歌われる歌
  • 交響詩「長良川」、柳ヶ瀬ブルース、長良川艶歌

食生活(スローフード)

  • 特産食材(ほうれん草、枝豆、柿、飛騨牛)
  • 加工品(いかだばえ、日本酒、柿ゼリー)
  • 伝統料理の鮎の熟れ寿司やスローフードコンテストを通じたまちづくり

自然・環境(スローツーリズム)

  • 環境を守りながら活かしたまちづくり(長良川、金華山、高橋尚子ロードと国際インラインスケート大会の開催)

産業(スローインダストリー)

  • 伝統産業と新たな挑戦(美濃和紙を使った岐阜提灯、和傘、水うちわ)

歴史・文化(スローエデュケーション)

  • 歴史ある史跡や文化を伝える祭り

岐阜県では、大小さまざまなイベントが開催されています。「習俗はよいまちづくりを進めるうえでの重要な資源となり得る」と、多くの人びとに「ほんもの」の「岐阜らしさ」を知ってもらう努力を続けている岐阜県。住んでいる人びとが楽しみながら・歴史と文化を守りながらまちづくりを行っています。

 

いかがでしたでしょうか。スローフードは地域に根ざした食材や郷土料理を活かした活動を行うもので、一人ひとりの普段の心がけでできる活動です。スーパーに買い物に行った際に地場野菜をチェックするなど、身近なことから始めてみてはいかがでしょう。