自然日本の農業を取り巻く理想と現実

日本の農業を取り巻く理想と現実

若者の農業への関心意欲が高まっており、日本の農業は順調に成長を遂げているように見えますが、さまざまな課題が残されているのも事実です。今回は、そんな日本の農業を取り巻く理想と現実について紹介していきます。

高まる若者の農業への関心

高まる若者の農業への関心

農業人フェアを開催すると多くの若者が参加をするなど、若者の農業への関心意欲は高まってきています。

その背景として考えられるのは、

  • 出世したりお金を稼いだりすることへの意欲の低下
  • 仕事で社会に貢献したい

など、近年の仕事に対する考え方の変化も関係しているでしょう。

とはいうものの、新規で農業を始める若者の数はあまり増えていません。日本の新規就農者数は2007年には7万3000人程度だったのに対して、2017年度は5万5000人程度と年々減少を続けており、49歳以下の人数はわずか2万700人と半分にも満たない数値です。

この数値からも分かるとおり、農業を始める人の多くは定年退職後に実家へと戻り、農業を継ぐというケースなのです。

しかしその一方で、

  • 農業法人に属して農業を始める「新規雇用就農者」
  • 農業の出身者が身近におらず、完全に新規で農業を始める「新規参入者」

に関しては、49歳以下の割合が7割以上を占めています。

MEMO
新規雇用就農者は10520人のうちの7960人が、新規参入者は3640人のうちの2710人が49歳以下

ただし、それでも新規就農者全体の19%ほどにしかならないため、まだまだ少ないのが現状です。農業という仕事自体が不透明である点も若者の就農を妨げる原因となっているのでしょう。

政府は、40代以下の就農者数を増やすために、青年就農給付金などさまざまな制度を確立しており、一時的ではあるものの新規参入者の数は順調に増加の傾向にあります。特に、青年就農給付金が導入された2012年には、1180人から2170人と約二倍の成長を遂げています。

しかし、給付金や補助金の影響で就農者が増えたとなれば、その期限が切れてしまった際に離農率が高くなってしまうのではないか、という懸念もあります。今後も、新規就農者の数を増やすための取り組みを考えていかなければなりません。

農業の6次産業化は日本の農家を救えるか 農業の6次産業化は日本の農家を救えるか

 

日本の農業人口、200万人割れ

日本の農業人口、200万人割れ

農林水産省が行った調査によると、2017年度の農業就業人口は前年比より5.5%ダウンの181万6000人でした。200万人を割った2016年から、さらにその人数は減少しています。

1990年には480万人以上いたことを考えると、いまやその数は半数以下にまでなりました。関心の強さほど若者の就農率も高くなく、就労者の高齢化にともなう離農が進んでいることから、農業の担い手は日に日に減少しているためです。

若者が就農しない理由

若者の就農人口が増えない理由の一つに、労働環境の厳しさがあります。個人農家のほとんどは土日の休みがなく、収入も不安定です。就農の1年目~2年目の時点で農業の所得のみで生計が成り立っている人は全体のわずか14%しかいません。

そのため、新規就農者の3割ほどの人は数年以内に離農してしまっています。

収入は良いのでは?

農家の仕事は、

  • お米・野菜・果物のような農作物を作る
  • 牛を育てて酪農・畜産を行う

などさまざま。畑や牧草地を作るためには土地や機械なども必要になってくるため、初期投資だけでも1000万円ほどはかかってしまいます。そのため、初期費用を回収するだけでもかなりの期間を費やしてしまう恐れもあるのです。

また、農業で収入を得ている人の年収平均はだいたい300万円だと言われています。なかには、600万円稼いでる人もいれば1000万円という高年収の人もいます。育てている農産物や規模によっても金額に大きく差が出てくるためです。

年収300万円以上が農業で稼げているとなれば、十分な生活水準を得られるのではと思うかもしれません。しかし、実際にはこれだけの収入を必ずしも確保できるわけではありません。なかには、年収が数十万円にしかならない人もいます。

農業で高収入を獲得している人は、

  • 品種改良によって専用のブランド農作物を作り出した
  • 新技術を導入したことで低コストでの栽培を実現した
  • 災害による被害を受けにくい農作物を開発した

など、さまざまな努力の上に成り立っています。

最近では、スーパーマーケットなどには卸さず、インターネットで直接販売して利益率を増やす、などの新しい営業システムを確立した農家も多くあります。今後は、農作物をただ作るのではなく、加工・販売までを自分で行う「6次産業化」が必須になっていくのかもしれません。

農業を法人化する?農業法人のメリットと設立までの流れ 農業を法人化する?農業法人のメリットと設立までの流れ

 

農業技術発展による環境破壊

農業技術発展による環境破壊

日本の農業は機械化・化学化などによって著しく発展を遂げていきましたが、それにより

  • 農作物の汚染
  • 畜産公害
  • 自然破壊
  • 石油に依存した農業の定着化

などの問題を引き起こしました。

このような状況を打破するためには、今後の日本農業をどう修正していけば良いのでしょうか。

偏った技術発展を改める

高度経済成長の際に、栽培を拡大するよう指定された作物の

  • お米
  • 畜産品
  • 野菜
  • 果物

については、技術的にも大きく発展した一方で、指定されなかった作物の

  • 大豆
  • 穀物
  • 飼料作物

については、技術の停滞が続いています。

今後の日本農業を支えていくためには、このような偏った技術発展を改め、お米や畜産品に注力した分と同様の努力を、麦・大豆・穀物・飼料作物に注ぐことが必要になってきます。

ただし、上記作物の発展の遅れをすぐに取り戻すのは容易ではありません。現状、技術的に発展させるための最大の問題は、国内の栽培に最も適した品種を特定化することだと言われています。

国内品種と外国品種をまとめて試験・研究が行われているものの、問題解決には至っていません。栽培技術の体系をとってもまだまだ課題は山積みです。

省エネを重視した技術開発

自然環境保護の動きが活発化してきた日本において、省エネを重視した技術の推進も重要となります。

例えば、

  • 太陽エネルギー・水力を含む再生可能エネルギーの利用
  • 農業機械利用の効率化など、エネルギーの有効利用
  • 肥料・農薬を節減した栽培体系の確立

などです。

また、糞尿を有効活用するコンポストトイレの開発や、堆肥の発酵熱を利用した野菜作りの動きは既に実用段階に入りつつあります。

自然循環型社会に沿った農業への取り組みは、順調に進められています。

コンポストトイレ
微生物の働きによって糞尿を分解し、堆肥へと変えるトイレ

自然力を保護する

高度経済成長期における、農業の機械化・科学化を中心とした技術の発展は豊かな土地を痩せこけた土地へと変貌させました。

その結果、

  • 農作物の汚染問題
  • 健康破壊
  • 自然破壊

などを引き起こしたのです。

そうならないためにも、最低限の農業機械を用いて効率よく作業したり、農薬や化学肥料に頼らないオーガニック農法を採用したりすることで、水と土壌・木々などの貴重な資源を守り、環境保全を重視した農業を目指していく必要があります。

 

農業に対する関心意欲が高まり、新たに農業を始める若者が増えている一方で、新規就農者数は年々減少傾向にあります。

農業がいかに魅力的な職業であるかを若者に実感してもらうためにも、広報活動を広く行いながら、農業を取り巻くさまざまな課題についても取り組んでいかなければなりません。