エネルギー電力自由化によるメリット・デメリットを徹底解説

電力自由化によるメリット・デメリットを徹底解説

2016年に開始された「電力自由化」。各家庭でサービスの内容や利用料金を自由に選べるなど、電力を取り巻く環境は大きく変化していきました。電力自由化の導入は実際にどのような影響をもたらしたのでしょうか。メリット・デメリットを確認しながら見てみましょう。

電力自由化のメリット

電力自由化のメリット

東日本大震災以降に急速に進んだ電力自由化。この導入でどのようなメリットが生まれたのでしょうか。

月々の電気料金が安くなる

電気料金の金額設定は、電力会社が発電する際にかかるコストや人件費・設備の管理費などを考慮して設定し、国の了承を得てから決められています。国は、その金額が本当に適切なのか、節約できる部分はないのかしっかりと目を凝らして判断しているのです。

民営の電力会社など多くの新電力は少数で組織されていることが多く、さらに広大な設備を所有していないため、人件費や管理費などの費用が大幅に削減されます。そのため、大手電力会社より低価格帯での供給が可能になっているのです。

電力自由化による新電力では、東京電力・関西電力など従来の電力会社における最も一般的な料金プランである「従量電灯」に合わせて料金プランを設定しているケースが多く、設定金額は従来の金額から1%~5%ほど低く設定されています。

さらに、8月や12月など電気を多く使う月のために、電気利用量が一定以上を超えた場合は割引率が上がる料金プランもあります。

発電方法を自身で選ぶことができる

今までは各地域の電力会社が提供している電気がそのまま利用されていたため、その電源の構成を選べませんでした。

しかし、電力小売自由化にともない、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを利用して発電された電気や二酸化炭素排出量の少ない電気・原子力発電を使用していない電気など、環境に配慮された電源構成の料金プランも出てきました。

「安い電気料金を選びたい」という考えだけではなく、「環境に良い発電方法を選びたい」「地元で発電された電気を選びたい」など、さまざまな選択肢から選べるようになったのです。

セット割引やポイントサービスなどプラスの特典がある

数々の料金プランと組み合わせられる「セット割」を提供しているものも増えています。例えば、

  • インターネット通信と電気を組み合わせることで毎月の通信料を割引するメニュー
  • ガスと電気を組み合わせることで毎月のガス代金を割引するメニュー

などです。

また、毎月の電気料金によってポイントが付与されたり、電車の定期券を購入することで受け取れるポイントが倍になったりなど、会社ごとにさまざまな特徴の割引が登場しています。

電力自由化のデメリット

電力自由化のデメリット

メリットばかりに感じる電力自由化ですが、デメリットはあるのでしょうか。

供給面の不安定さ

これまで電気を供給してきた東京電力や関西電力など従来の電力会社においては、技術力やノウハウの蓄積によって長年にわたり安定した供給が保たれてきました。このため、通常は電力会社によるミスでの停電や事故はまず起こることはありません。

しかし、電力自由化が始まったことで小さな発電施設や少ない人員で稼働している新しい企業が多く参入することとなりました。そのため、大きな災害や事故に見舞われた際、十分な設備を保持していないために復旧がすぐにできない可能性が出てきます。

これは、電気は貯められないという性質が影響しています。例えば、日本が原油・石炭を備蓄しているように、発電した電気をどこかでそのまま備蓄することができれば、融通が利くようになります。

しかし、電気は発電されると同時に消費されてしまう、つまり必要な時に合わせて発電しなければいけません。十分な予備力がないと大規模な停電が起こりやすくなる可能性があるのです。

では、貯められない電気をどのように安定して供給してきたのでしょうか。そこで出てくるのが揚水発電所です。水力発電所の一種である揚水発電所は、夜間に発電された余った電力を利用してダムの水を上の貯水池にくみ上げ、電力が必要になった時に水を流す方法により、いわば仮想的に電気を貯蓄する形で安定的に電力を供給しているのです。

月々の電気料金が安くならない可能性

アメリカやヨーロッパなど海外諸国では電力自由化が導入されており、開始直後は電気料金が安くなったものの、化石燃料の価格上昇により電気料金が上昇しているのも現状です。

日本はエネルギーの9割以上を輸入に頼っているため、長期的に考えた場合、今後の電気料金が上がってしまう可能性は否定できません。

電力会社による契約期間の縛りや解約違約金の発生

これまでは各地域の電力会社としか契約を結ぶことができなかったため契約期間を考える必要はなかったのですが、電力会社を自由に選べるようになったため契約期間に関する規約が発生。これにより解約手数料や途中解約のための違約金を請求する電力会社も増えています。

 

電力会社を変更する際の注意点

電力会社を変更する際の注意点

電力会社の変更で電気の品質は低下しないか?

基本的にどの電力会社も同じ送電網を利用しているため、電気の品質が低下するということはありません。発電方法についても同様で、火力発電・水力発電・原子力発電・再生可能エネルギー、どの方法で発電していても電気の品質は変わりません。

そのため、「電力会社を変更したら停電が多くなるかも」「安い料金プランは何か別の安い電気を使っているのかも」という心配をする必要はありません。

スマートメーターの設置・変更

電力会社を変更する際にはスマートメーターの設置・変更を行う必要があります。スマートメーターは、30分刻みで電気使用量の確認が可能になることに加えて、そのデーターを一ヵ月に一度自動で電力会社へ送ることができる機械です。

このスマートメーターを設置する際にかかる本体代・工事費などの費用は一切かからず、工事の立ち合いの必要もありません。

アンペア数に注意

契約する電力会社によってさまざまですが、基本的にブレーカーのアンペア数が20Aを下回っている場合は変更ができないことがほとんどです。条件を満たしていないようであれば、一度アンペア数を変更する必要があります。

契約した業者が倒産した場合

変更した料金プランを掲げていた電力会社がもし倒産してなくなってしまった場合でも、地域の大手電力会社が代わりに電力を供給してくれるため停電の心配はありません。なお、その際は代わりに供給を行う会社のプランに基づく金額が請求されます。

悪質業者に注意

「あの会社の供給する電気は悪質だから」「うちの電気を使えば停電の確率が減る」「スマートメーターの設置にともない本体料金をいただいている」など、悪質な勧誘や詐欺を行っている事業者の報告も存在します。

電力自由化についての知識をしっかりと身に付けて、このような契約を結ばないように注意しましょう。

 

今まで独占的だった「電気」という市場。電力自由化により各家庭で電力の料金プランが自由に選べるようになっただけでなく、さまざまなサービスを併用して受けられるようになった反面、電力供給の不安定さ・電気料金が上がる可能性などデメリットも少なからず存在しています。

今後も電力について、自身の家庭にあった料金プランを考えていくことが重要になってくるでしょう。