暮らし低下を続ける食料自給率の向上のために取り組むべき対策

低下を続ける食料自給率の向上のために取り組むべき対策

食生活の状態を表す指標の一つ「食料自給率」が低下を続けている日本ですが、その一方では耕作放棄地が増加しています。これは、1993年に起こった米不足をきっかけに輸入食材が好まれるようになった食生活の変化に原因がありました。

食料自給率とは

食料自給率とは

食料自給率は国内の食料消費が国内の農業生産でどの程度まかなえているかを示す指標で、

食料自給率=国内生産÷(国内生産+輸入-輸出±在庫の増減)

で表されます。

国内の食料生産が消費に追いつかず不足分を輸入した場合に低下しますが、近年では食料が十分にあるにもかかわらず輸入量を拡大し、食料廃棄物が増加することによる影響が大きくなっています。

食料自給率の種類

品目別自給率は重量をもとに単純な計算で求められますが、食料全体の自給率である「総合食料自給率」を表す場合は、異なる食材を共通の「ものさし」で計る必要があります。

そのものさしとして供給熱量※と金額があり、供給熱量で表したものを「カロリーベース」、金額で表したものを「生産額ベース」と呼んでいます。

※「日本食品標準成分表2015」による可食部100gあたりのエネルギー量から算出する

 

日本の食料自給率

日本の食料自給率

2016年度の総合食料自給率は、カロリーベースで38%、生産額ベースで68%となっています。この二つの指標に大きな差があるのは、国産食材と輸入食材の価格差によるもので、この価格差が食料自給率を下げる原因にもなっています。

主な農産物の自給率

重量ベース食料自給率の内訳
米 97%野菜 80%果実 41%魚介類 53%畜産物 27%砂糖類 28%
カロリーベース食料自給率の内訳
米 99%野菜 78%果実 67%魚介類 50%畜産物 63%砂糖類 52%
生産額ベース食料自給率の内訳
米 98%野菜 76%果実 35%魚介類 59%畜産物 16%砂糖類 28%
(数値は「2016年度食料需給表」によるもの。畜産については輸入飼料による肥育分を含めない)

食料自給率の推移(年度別食料自給率(%))

 19751985199520052010201120122013201420152016
カロリー5453434039393939393938
生産額8382746969676765646668

食料自給率は1985年から1995年の間で10%程度落ち込み、2000年代からカロリーベースではおよそ40%、生産額ベースではおよそ70%で安定しています。

輸入に頼ることで生まれる危険性

外国でも農産物は国内消費向けの生産を優先させているため、異常気象などで不作になった場合は輸出量を制限します。そのため、食料を輸入に頼っていると、輸出国の都合により輸入国で消費可能な量が制限されることがあります。

また、これは自然条件によるものだけではなく、輸出国が価格上昇を目的として輸出量を変動させることによっても起こり得ます。

そのため、日本では「緊急事態食料安全保障指針」というマニュアルが策定されており、

  • 自然災害や家畜の伝染病などの自然的要因
  • 食料サプライチェーンの寸断などの社会的要因
  • エネルギー供給価格や為替変動などの経済的要因
  • 他国との競合や輸出国の政情などの政治的要因

による国内食料供給量の変動に備えています。

 

日本の食料自給率が低下している原因

日本の食料自給率が低下している原因

なぜ食料自給率は下がってしまったのか?

食料自給率低下の原因として農業人口の減少・高齢化や耕作放棄地の増加が挙げられますが、そのほかにも輸送手段の発達や食文化の変化により輸入食材を好む傾向が大きくなったことが影響しています。なかでも、農業所得の低さは深刻な問題です。そのため、農家は農業外収入により生活を維持するケースが多くなっています。

農業に関する指標を1995年と2015年との比較で以下に示します。

 1995年 2015年
基幹的農業従事者256万人175万人
65歳以上の農業者39.7%64.6%
耕地面積503.8万ヘクタール449.6万ヘクタール
耕作放棄地面積24.4万ヘクタール42.3万ヘクタール
農業所得144.2万円118.6万円
農外所得を含む総所得※897.1万円456.2万円
※2004年から調査体系が変更されているため、単純な比較はできない

また、輸送手段の発達により鮮度の良い外国産食材が手に入るようになったこと、外食産業の発展で海外から大量に加工食品が輸入されていることも自給率の低下に影響しています。

さらに、ほぼ100%自給可能な「米」中心の食生活から「肉・乳製品」指向へ食文化が変化しており、自給率の低い高脂肪・高カロリー食材の需要が伸びた結果、食材の輸入量増加につながっている面もあります。

食料自給率が下がるとどうなる?

まず考えられるのは、海外からの食料輸入がストップした場合に国民の生存を維持できなくなる危険があることです。ただ、食料自給率の計算には食べ残しや消費期限切れにより廃棄される食料も含まれているため、ただちに餓死者が出るということではありませんが、食生活の変化は必要とされます。

自給率の高い米を中心とした食生活に戻し、食料以外の栽培は減少させ、飼料の多くを輸入に頼っている畜産・酪農は縮小せざるを得ない状態となります。

食料自給率が低いままでは、輸入量不足を想定して国内備蓄を用意しなければなりません。しかし、これを高めることのみに注力してしまうと国内の食料生産に異常があった場合に対応できなくなるため、1993年に起こった米不足の際に緊急輸入を行った教訓をもとに、国内外からの食料供給バランスを取ることが必要とされています。

食料自給率の向上に向けて

農林水産省は、和食への回帰による自給率の向上を目指しているだけではありません。

自給率の高い米の消費量は年々減っており、それにつれて備蓄に回される余剰米が増えていることが知られています。そこに着目し、余剰米の生産を止め、空いた水田を輸入量の多い小麦や大豆などの国内生産に転用するための規制緩和が推進されているのです。

また、米粉用の米を生産してパンなどに使用するための技術開発を行うことで輸入小麦の使用量を抑える取り組みも行われています。さらに、消費の面からは「フード・アクション・ニッポン」という企業・団体・行政・消費者が一体となった取り組みを行うことにより国産農林水産物の消費を進めています。

しかし、これらの取り組みを成功させるためには国内生産量の増加が必要になります。つまり、農地農業用水などの農業資源、農業技術、農業就業者、水産物の潜在的生産量、漁業就業者といった食料自給力を強化することが必要です。

なお、食料自給率を向上させることと同時に食料備蓄にも取り組まなければなりません。これは、備蓄方法・加工方法の発展がなされれば、輸入食料の確保が困難な状況が起こってもその影響を緩和することが可能になるためです。

 

食料の海外依存度が高く深刻な状態とされている食料自給率ですが、食料自給力の向上や食料生産と食生活の乖離の是正、流通の強化といった改善の成果もあり、2000年以降はその数値を約40%で安定させることに成功しています。

しかし、この先にある食料自給率の向上を目指すためには、就業者を増やして食料自給力を高めることが求められています。このような問題は日本で稲作文化が発生して以来続いているものであるため、歴史に学び、解決へと導くことも可能でしょう。