ライフスタイル日本のパスポートだけで渡航できる国の数がトップとなるも、日本国内での保有率は変わらず

日本のパスポートで渡航できる国の数がトップとなるも、日本国内での保有率は変わらず

2018年の10月9日に世界のパスポートランキングが発表されました。これは、パスポートを所有している人がビザなしで渡航可能な国の数をランキング化したもので、日本は見事世界トップに立ったのです。

ビザがなくても渡航できる国の数が世界一

ビザがなくても渡航できる国の数が世界一

そもそも、一般的には他国へ入国する際にはビザが必要となります。しかし、短期の旅行であればパスポートさえあればビザの申請なしで入国を認める、という事例が増えてきています。

対応する国は年々増加し、2018年の10月9日時点でついに日本のパスポート保有者が、ビザの申請なしで渡航可能な国の数が世界一となったのです。

短期の旅行
だいたい、3ヵ月以内の滞在とされている

単独トップになるまでの経緯

2008年にヘンリー&パートナーズによって発表されて以来、今年で11年目となるこのランキングですが、実はその年にも日本は見事1位を獲得しています。しかし、その後は1位になることなく順位は下落していました。

基本的に、ビザの申請を必要とせずに両国で渡航ができるようになるためには、互いの友好関係以上に

  • 国家が発展していること
  • 民主的な政治を行っていること
  • 紛争やテロが日常的に行われていないこと

が大切になってきます。パスポートのみで互いの国を行き来するには、やはり平和と安全性が確保されている国でないと成り立ちません

そこで、日本は自国の安全性を全力でアピールし、国としての信用度を高めていきます。2017年時点で5位だった順位を、2018年の3月には180国が渡航可能になり、3年連続で首位をキープしていたドイツを抜き、シンガポールと並んで同率首位にまで登りつめました。

そして、同年の10月に再度発表されたランキングにて、シンガポールに一ヵ国差を付けた190ヵ国で単独トップに立ったのです。

各国の順位

それでは、発表されたランキングを一位より順番に見ていきましょう。

1位日本190ヵ国
2位シンガポール189ヵ国
3位フランス・ドイツ・韓国188ヵ国
4位イタリア・スペイン・スウェーデン・フィンランド・デンマーク187ヵ国
5位アメリカ・イギリス・オーストリア・ポルトガル・オランダ・ノルウェー・ルクセンブルク186ヵ国
6位カナダ・ベルギー・スイス・アイルランド185ヵ国
7位オーストラリア・ギリシャ・マルタ183ヵ国
8位ニュージーランド・チェコ182ヵ国
9位アイスランド181ヵ国
10位マレーシア・ハンガリー・スロベニア180ヵ国

ヨーロッパ諸国は順調に渡航可能な国の数を増やし続けているものの、2015年に首位を獲得したアメリカ・イギリスについては現状増える見込みがなく低迷を続けています。

下位の国についても見ていきましょう。最もビザ申請なしで渡航可能な国の数が少ない国は、イラクとアフガニスタンの30ヵ国。次いでシリアとソマリアの32ヵ国、第三位にパキスタンの33ヵ国と続きます。

やはり、国内での紛争の危険性が残されている国では、両国間でビザを不要とするデメリットが大きすぎるのでしょう。

 

日本人のパスポート保有率

日本人のパスポート保有率

ランキングで世界一となり、パスポート保有のメリットが非常に大きいものとなった日本ですが、実はその保有率は決して多くはありません。

海外との比較

海外のパスポート保有率の例を挙げると、

  • アメリカが42%(2017年時点)
  • カナダが66%(2016年時点)
  • イギリスが76%(2016年時点)

となります。G7の中で最も保有率の少ないと言われるアメリカで42%の人がパスポートを所持しているなか、日本の保有率はわずか23%しかありません。

理由として考えられるのは、日本が島国であるという点も関係しているでしょう。日本人が海外へ行くためには、ほぼ必ず飛行機に乗らなければいけません。

しかし、陸続きの多いヨーロッパ諸国では、比較的簡単に隣国へ買い物に行ったり友達と遊んだりできます。さらに、シェンゲン協定を結んでいるためヨーロッパ内の適用国間はパスポートチェックすらなく自由に移動ができるのです。

シェンゲン協定
EUに加盟している28ヵ国の内の22ヵ国とEFTAに加盟している4ヵ国の、あわせて26ヵ国で結ばれている協定で、26ヵ国間の移動はEU国民でもそうでない人でも関係なく自由に移動ができるというもの

なぜ保有率は上がらないのか

日本人のパスポート保有率はなぜ上がらないのか。その原因の一つとして考えられるのが、海外旅行に興味のない人が多すぎる点です。では、なぜ海外旅行にあまり興味を示さないのでしょうか。

以下より理由を見ていきましょう。

周りの人が興味ない

パスポートを保有している人の割合を都道府県別で比較してみると、

都心部では、

  • 東京都が36.1%
  • 大阪府が34.1%
  • 神奈川県が31.5%

と日本の中では比較的高い傾向にありますが、

反対に地方都市では、

  • 青森県が8.8%
  • 秋田県が9.0%
  • 岩手県が9.5%

と軒並み一桁台となっています。

そのため、このような地域では、日常会話をするにも海外旅行の話が出ることすらなく、旅行の選択肢からも自然と外れてしまいます。近年では、成田に行かずとも地方の空港から直接海外へと行くこともできはするものの、中国・韓国・ロシアのように行き先は限られてしまいます。

支度が面倒

ビザが必要ないとは言え、

  • パスポートの発行・更新
  • お金の両替・カードの作成・保険の加入
  • スマホの設定

のように、国内の旅行にプラスアルファで準備が必要となります。また、チップ文化のような現地特有の習慣を覚えなくてはなりません。これも旅行の醍醐味だから、と楽しめる人は良いのですが、面倒だと思ってしまう人の方が多いのが現状です。

日本のことが一番好き

日本にいるだけでも、さまざまな郷土料理から中華料理・フランス料理までおいしい食事を味わえたり、四季折々の風景が楽しめたり、スキー・ダイビングなどレジャーも豊富であるため、わざわざ海外に行く必要がない。と考える人も多くいます。

また、航空会社が増加し、格安のプランを掲げる会社も増えてきている今、海外に特別憧れた感情を持った人も減少しつつあります。

今まさに盛り上がりを見せる「インバウンド」とは 今まさに盛り上がりを見せる「インバウンド」とは

 

ビザを必要とせずに渡航できる国の数が世界一位となった今、日本人はもっと海外へと目を向け、グローバルな社会を目指していくべきなのかもしれません。