社会都道府県と市町村の人口、減少は止められるのか

都道府県と市町村の人口、減少は止められるのか

減り続ける日本の人口。地域にその現実は重くのしかかっています。これから目指す場所はどこにあるのでしょうか。前回記事「日本の人口のこれから。減少は止まらない。」では、人口減少が本格的にやってきたこと、加えて将来における人口予測などについて説明しました。今回も引き続き人口減少に関連するトピックを続けたいと思います。

減少を続ける日本の人口

減少を続ける日本の人口

都道府県の人口

都市圏に人口流入が続いていることはもはや説明不要でしょうが、少しだけ数字を出します。2017年1月1日時点の住民基本台帳に基づく日本人の人口は1億2483万人、前年比マイナス0.24%です。

この割合の変化を一つの基準として考えます。すると、これを上回っているのは数値が高い順から

  • 東京都(+0.60)
  • 沖縄県(+0.31)
  • 千葉県(+0.12)
  • 埼玉県(+0.11)
  • 愛知県(+0.10)
  • 神奈川県(+0.09)
  • 福岡県(-0.01)
  • 滋賀県(-0.06)
  • 大阪府(-0.14)

となり、一部の地域を除き都市圏に集中しています。三大都市圏をまとめてみると人口の合計は6453万人、過去最高となりました。

日本全体の人口が8年連続で減少しているにもかかわらずです。

そして、都市圏への人口流出の傾向は高齢者においてさらに顕著になります。さらに潜在的な要介護はそのうちの1割とも言われ、介護に関する制度構築が急務となっています。

市町村の人口

先ほどの住民基本台帳に基づくデータによると、市区レベルで見た際に日本人が減少している地域が全体の70%、同じく町村レベルでは77%となっています。このままのペースで地域の人口減少(自然減、社会減の両方)が続く限り、いわゆる「消滅自治体」が増えてくることは間違いありません。

町レベルで見ると、健全なレベルで社会インフラが維持できる人口の最低ラインは3,000人から4,000人と言われています。それ以下になってくると、特筆した産業があるか、あるいは過度に都や国に頼っていく形でないと生き残れなくなってしまいます。

「まち・ひと・しごと創生法」に則って定めた人口ビジョンおよび総合戦略を見ると、多くの市町村や都で人口流入を増やす施策を見つけることができますが、それではどうにもゼロサムゲームの域を脱することはできません。

策定までの期間が短かったという意見もあり、思うような緻密さでの計画はできなかった、というのが実情かもしれません。

とはいえ、総合戦略で各々の数値のKPI設定をしているので、順に達成度が見えてくることになります。

 

日本の人口の変化

日本の人口の変化

年齢別人口(人口ピラミッド)とボーナス・オーナス

総務省統計局から2016年10月地点での人口ピラミッドのデータを拝借すると、
人口ピラミッド

(出典:総務省統計局

みなさんが教科書でご覧になったような、おおよそピラミッドとは言えないこちらの形に行き当たります。

もう一つ、年齢3区分別人口割合の推移のグラフも見てみましょう。

年齢3区分別人口割合の推移

(出典:総務省統計局

改めて現実を突きつけられますね。

生産年齢人口がそれ以外の人口(従属人口)に対して増加傾向にある時期を人口ボーナス期と呼び、日本では1970年〜1990年前後であったとされています。この時期には税収が増える一方、相対的な社会保障等へ支出が少なくなり、経済の再投資の用途で積極的にお金を循環させることができます。

そして、これと反対のケースが人口オーナス期と呼ばれ、経済成長を目指すには非常に困窮した状態となります。

今まさに日本はこの段階です。そして、これからはさらに過酷な状況になるでしょう。

地域における人口の男女比の変化

これは特に人口流出に関連する話になります。2017年3月1日地点の確定値では、日本人の男性の人口は6,076万人、対して女性は6,406万人と女性の方が多くなっています。これは説明不要ですね、平均寿命の影響になります。

だだ、これまたご存知の通り、出生時の男女比はおおむね105:100ほどで(つまり男性の方が多い)、ある程度この比率は変わらないまま(少しずつ差は狭まってくるものの)推移してきます(なお、55歳前後で男女比が逆転します)。

何が言いたいかというと、結婚適齢期にはまだ男性の割合が高いということです。絶対数として。

ただ実際には、この年齢区間で女性の人口割合が高くなってしまう自治体が多くなります。就学や就職のタイミングで女性に比べて男性の方が都市圏ないしは中核都市に流出してしまうということになるのでしょう。

 

日本に人口増加の可能性はあるか、目指す未来はあるか

合計特殊出生率を2.07まで上げる

女性が一生のうちに生む子どもの数のことを合計特殊出生率と呼びますが、これに関して一つの基準値を知っておくべき必要があります。人口置換水準です。この数値に達すると、人口が同じ水準で維持できるとされています。

一家から子どもが何人生まれるか、というざっくり視点で考えると二人、つまり2.0になるわけですが、子どもの死亡率や生まれてくる子どもの男女比の影響もあり、これよりは少し高い2.07とされています(大まかな推計の際には便宜上2.1が使われることもあります)。

さて、日本の2016年地点の出生率は1.44というところで、これを2.07に持っていくことができるか?と言われると、不可能ではないレベルかとは思います。人口が大都市圏に偏ってしまっている以上、社会全体で子育てをどれだけサポートできる環境を整えられるかが重要になってきますが、フランスでは仕事と育児の両立を積極的に支援することで出生率が1.66から2.0前後まで上昇した事例もあるため、先進国においても大幅な出生率の増加を目指すことは可能でしょう。

「希望出生率」の達成を目指す

しかしながら一般的には、文明の成熟にともなって出生率はじわりと減っていくと考えられていて

「希望出生率」

という数値を一つの目安・目標値にしよう、ということになっています。少なくともここ日本では。

「国が掲げる目標値」という説明が多く見られるこの数値ですが、誤解を恐れずに言うと、国民の“総意”です。まだかなりもっさりしてしまっているので、算出根拠を並べます。

  • 有配偶者割合(34%)×夫婦の予定子ども数(2.07)
  • 独身者割合(66%)×結婚を希望する人の割合(89%)×希望する子ども数(2.12)
  • 離死別等の影響(×0.938)

これらから得られた数値が1.80です。

「国民が(仮に経済的な環境等が整った場合に)希望する子どもの数」と言い換えた方が分かりやすいですね。

余談ですが、有配偶者が希望する子どもの数が独身者のそれより低いのは「いろいろ現実が見えてきちゃった」という事情があるかもしれませんが、どちらの数値も人口置換水準である2.07に達しているのは特筆すべきことです。

そして、先の計算で得られた希望出生率が1.80、つまり2.07を下回っている以上、否が応でも人口は減っていきます。増えることはありません。ただ、人口は減るものの、人口3区分別人口割合(0歳〜14歳、15歳〜64歳、65歳以上〜)は、比較的良好な数値で定常状態となります。そうすると、この状態に対する適切な社会保障等の制度の構築が可能になってくるわけです。

 

問題は今です。

とてつもないスピードの人口減少が始まろうとしています。

 

他の先進国で先立って人口減少段階に入った地域もあるのですが、それは日本に比べるとずいぶんと緩やかなペースで進みました。

人口が1億人を越えた先進国で、かつこれほどまでのスピードで進む人口減少・高齢化を経験する国は世界で初めてです。未知の領域に片足を踏み入れているのです。

人口の減少を大前提として、いかに将来の”定常状態”にキレイに収まっていくか、このような視点を持つことが非常に大切になってくるでしょう。