環境税(地球温暖化対策税)の導入は地球温暖化対策になるか?

環境税(地球温暖化対策税)の導入は地球温暖化対策になるか?
アメリカのトランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言したことにより、温暖化対策に関する各国の足並みが乱れる可能性が指摘されています。地球の温暖化が及ぼす異常気象による影響は計り知れません。対策として環境税や排出権取引が導入されていますが、このような対策がCO2削減などの温暖化対策に役立っているのかについて探ります。

「地球温暖化対策のための税」の導入

環境税(地球温暖化対策税)とは、温室効果ガスを排出する化石燃料(石油やガスなど)にCO2の排出量1トンあたり289円を課税するものです。税金は化石燃料を使う企業や、その製品を買う消費者が負担します。

電気やガス、ガソリンへの税負担を減らそうという志向が強まり、電気使用量や自動車の排気ガスが減少することでCO2排出量が削減されることが目指されるものです。

環境税の仕組み

上記の通り、環境税は製品やサービスなどの価格にCO2排出量に応じた税率(289円/CO2トン)が上乗せされる課徴金制度ですが、具体的には石油石炭税に上乗せされる形で課税されます。日本では2012年から3段階で施行され、2016年に最終税率への引き上げが完了しました。

また、炭素税は化石燃料の燃焼により排出される二酸化炭素(CO2)に課税するものですが、こちらは導入が検討されている段階になります。

環境税を導入することで化石燃料の価格が引き上げられると、消費者はより省エネ型の製品を志向するようになり、

・エネルギー価格の上昇が低コストで汚染制御を可能にする技術の開発などの技術革新や生産性の向上につながる
・環境税による税収が温暖化対策の補助金に充てられ、CO2の削減が進む
・政策の発表により国民の意識が変わり、省エネに向けた効果が期待できる

といった効果が生まれることが期待されています。

環境税の問題点

産業界からは環境税のCO2削減効果に対して以下のような疑問の声が上がっています。

・環境税を導入するとエネルギー価格が引き上げられてエネルギーの消費が抑えられるという「価格効果」が見込まれるとされているが、2004年から2年半の間に原油価格の高騰を背景に起こったガソリン価格の上昇の際に、日本のガソリン消費量は抑制されなかった

・環境税の税収は地球温暖化対策の補助金に充てられるが、温暖化対策にすでに1兆円の予算が使われている今でも効果は検証されていない

・税の導入で設備投資や研究開発に資金が回らなくなり、国際競争力に大きな影響を与える

日本の温室効果ガス排出量はどのくらい?

日本の二酸化炭素排出量は中国、米国、インド、ロシアに次いで5番目に多くなっています。日本では東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故をきっかけに各地で原発が停止されたため、石油などを使う火力発電が増えてCO2排出量が増加したと言われていますが、同時に省エネの動きも進みました。BP統計によると、環境税が導入された2012年以降の排出量は減少傾向を示しています。

しかし、日本はパリ協定に批准し、温室効果ガスの削減目標として「2050年度に2013年度比80%削減」という長期目標を掲げています。この長期目標の達成は大変に高いハードルなのです。

 

海外でも導入されている環境税

海外でも導入されている環境税
出典:pixabay

環境税が社会保障の財源にも

欧州では1980年代後半から北欧諸国で環境税の導入が進みました。しかし、欧州では税収が必ずしも温暖化対策だけに活用されているわけではなく、ドイツやイギリスなどでは社会保険料を減額して納税者の負担を軽減しています。

フィンランドでは1990年に炭素税が導入されました。1997年および2011年にはエネルギー税制改革がなされ、所得税や企業の社会保障費用を減らし、その税収減の一部を炭素税収で補填するようになりました。

スウェーデンは1991年に炭素税を導入し、CO2税の導入や法人税の大幅減税を行う環境税制改革を実施。 結果として、CO2排出量の削減とGDP成長の両立を達成しました。

デンマークでは1992年CO2税が導入されたことで、過去20年と比べてCO2排出量は減少し、実質GDPは増加。風力発電などの再生エネルギー関連技術の輸出が全輸出額に占める割合は11%程度(2015年時点)で、EUの中でも最大を誇っています。

スイスは2008年にCO2税を導入します。税収の1/3程度は建築物改装基金や一部技術革新ファンドへ、残りの2/3程度は国民・企業へと還流されています。

アイルランドは2010年に炭素税を導入します。経済危機からの再建を目指し、炭素税の税収は一般会計に充当。2010年以降の財政健全化に寄与しました。

フランスは2014年に炭素税を導入します。炭素税収の多くが競争力確保・雇用促進のための所得税・法人税控除、交通インフラグリーン化のための資金調達、エネルギー移行に資するプロジェクトなどに充当されています。

ポルトガルは2015年に炭素税を導入。所得税の引き下げを実施しました。一部は電気自動車購入費用の還付などにも充当されています。

カナダBC州は2008年に炭素税を導入。法人税等の減税により納税者に還付を行っています。

ドイツでは環境課税により省エネ製品の需要が増加、軽減措置によりコジェネレーションが普及し、社会保険料としての税収の還元額が増加しました。

米国では自治体レベルで炭素税が導入されたコロラド州ボルドーなどがありますが、地球温暖化対策よりも石油産業と雇用を重視するトランプ大統領に対して、大企業において温暖化ガス排出削減を求め炭素税の導入を支持する動きがみられます。これは、炭素税による税収を米国民に「配当」として還元し、炭素税の「国境調整」を設け、中国のような温暖化ガス排出量が多い国からの輸入品には税を課すというものです。

 

排出権取引とは何か

排出権取引とは何か
出典:pixabay

温暖化を阻止するもう一つの対策が「排出権取引」です。排出権取引は全体の環境汚染物質の排出量を抑制するための仕組みで、地球全体で排出量を管理して排出削減を図ることが目的です。

あらかじめ国や自治体、企業などの排出主体間で排出する権利を決めて割り振っておき(排出権制度)、許容排出量を超えた国や企業は上限に達しなかった国や企業から余った分を売ってもらうことで、全体の排出量をコントロールすることができます。

排出権取引の現状

世界銀行によると、2015年の世界の排出量取引市場は約3兆7千億円に達している一方で、日本は468億円にとどまっています。欧州連合(EU)も域内の排出量取引制度で先行しており、中国も排出量取引の導入を予定しています。

日本では経済産業省や経団連が排出権取引の導入に対して慎重姿勢を崩していませんが、個別の日本企業では排出量取引を活用する動きが広がっています。これは、「パリ協定」の発効で企業にも排出量の削減が迫られていることが背景にあります。

自治体では東京都が2010年から導入済み。2030年までに温暖化ガスを3割減らす計画を掲げ、排出権取引を後押ししています。

排出権取引の課題

日本はパリ協定に批准し、温室効果ガスの削減目標として「2030年度に2013年度比26%削減」という中間目標と「2050年度に2013年度比80%削減」という長期目標を掲げています。そして、この目標に対して経済産業省と環境省が別々に検討を進めています。

経済産業省は企業の負担増による投資の抑制が国際競争力を阻害することを懸念して炭素税や排出権取引の導入に関して否定的ですが、環境省は賛否両論の立場です。

環境省は、電力の90%以上を再生エネルギーや原子力に置き換える、新築建物には省エネ製品を使う、自動車も電気自動車や燃料電池車にする、としており、このような転換を促すために「炭素税」や「排出権取引」などの方法を採ることを提言しています。

排出権取引のメリットとデメリット

政府にとっての排出権取引のメリットとしては、許容排出量を企業や工業に割り当てるので二酸化炭素などの温室効果ガスの削減を計画通りに進められることが挙げられます。

途上国は排出権を先進国に売ることで経済を成長させることができます。先進国は排出権を買い取ることで産業や経済の発展を抑える必要がなくなります。

産業界でのメリットは、目標量よりも排出量を削減できれば、余った分を売ることで利益を出すことができることです。

政府にとってのデメリットは、排出量取引にともなって企業との目標設定、モニタリング制度の確立、排出量取引所の設立などにコストがかかることです。

産業界でのデメリットは、排出量購入や二酸化炭素削減プロジェクトの実施などにも費用が発生することです。

 

地球温暖化対策は喫緊(きっきん)の課題ではありますが、その対策としての環境税や排出権取引には課題も多く残されており、単独で温暖化を防ぐ効果を上げるには不十分なものです。

各国は温暖化対策の重要性を認識しつつも、地域間では制度の違いもあり、一国だけで行うのでは効果は限定的なものとなります。それぞれの長所を生かしつつ、環境税を核とした政策や対策を組み合わせることで温暖化防止の効果を高めていくことが重要です。

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