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エネルギー資源の種類
エネルギーには、一次エネルギーと、一次エネルギーを消費して得られる電気や熱などの二次エネルギーがあります。一般に「エネルギー資源」と言うときは、このうちの一次エネルギーを指します。
日本国内で消費されている一次エネルギーは、
- 化石エネルギー
- 原子力エネルギー
- 自然エネルギー
に分類することができます。
化石エネルギー
化石エネルギー(化石燃料)とは、動物や植物の死がいが長い時をかけて変質してできたエネルギー資源のことで、石炭・石油・天然ガス・LPガスがあります。意外に思われるかもしれませんが、新しいエネルギー資源として期待されているメタンハイドレートも化石エネルギーの一種です。
では、それぞれの化石エネルギーに関する長所と短所を見ていきましょう。
石炭
主に発電用と鉄鋼用に利用されていて、国内消費量の99%を輸入に頼っています(2015年度)。調達コストの安いエネルギー資源として火力発電に用いられますが、その反面、環境負荷が高いために環境負荷低減対策を施した新しい発電設備に置き換える必要があり、そのコストが余分にかかります。
石油
主に発電用、製造用および輸送用に利用されていて、国内消費量の99.7%を輸入に頼っています(2015年度)。1970年代の石油ショック以後は資源の枯渇が心配されているため、調達コストが高いエネルギー資源です。火力発電に用いられますが、調達コストの高さと環境負荷の高さから代替エネルギーが検討されています。しかし、なかなか進展はしていません。
天然ガス(LNG)
主に発電用と都市ガス用に利用されていて、国内消費量の97.5%を輸入に頼っています(2015年度)。シェールガス開発の影響で調達コストが安くなっており、環境負荷も低く中東依存の高い石油に比べて地政学的リスクも低いエネルギー資源です。
LPガス(石油ガス・プロパンガスとも呼ばれる)
主に家庭用燃料に利用されていて、国内消費量の71.5%を輸入に頼っています(2015年度)。シェールガスに随伴して採掘されるため調達コストが安く、家庭用エネルギーとして広く使われています。
メタンハイドレート
2013年と2017年に採掘試験を行い、実用化を目指して技術開発が進められている新しいエネルギー資源です。日本の排他的経済水域内に存在するため、国産エネルギーとなります。そのため、今後の技術開発次第では調達コストを安くすることができます。
原子力エネルギー
原子力エネルギーは一度投入された燃料で数年間運用可能であるため、純国産エネルギーに位置付けられています。
この原子力を発電に用いる原子力発電所は2011年2月末時点で国内に54基ありましたが、2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、2010年度に67.3%であった施設稼働率が2015年度には2.5%に低下しています。
原子力発電所はウランを燃料として発電した際にプルトニウムが生成されますが、使用済み核燃料を処理する施設が2017年時点では国内にありません。
自然(再生可能)エネルギー
1970年代の石油ショックを機に技術開発や法整備が加速され、2020年までに国内エネルギー消費量の13.5%を再生可能エネルギーとする目標が立てられています。
「再生可能エネルギー」には、太陽光・風力・水力・地熱・波力潮力・雪氷熱・温泉熱・海水熱・河川熱・下水熱などがあります。
主要なものについて、その長所と短所を見ていきましょう。
太陽光
家庭の屋根を利用する小規模なものから「メガソーラー」と呼ばれる大規模発電施設まで、様々な規模の設備に適用されています。電力需要のピークである日中に発電量のピークがあることから、昼間の需要対策に適したエネルギー資源です。
しかし発電コストは高く、夜間や雨天時には発電できないなど発電量の変動が激しいため、電力の安定供給の観点から全電力供給量に対する受入量が制限されています。
風力
大規模風力発電を中心に利用が広がっていますが、風の強い風力発電に適した地域には主要都市がないことが多く、電力供給地と電力需要地を結びつける広域的な仕組みが必要となります。
水力
一般(流れ込み式)水力と揚水式水力に分けられています。一般水力は運転コストが安く渇水時を除けば安定供給が可能で、大規模なものから中小規模のものまで様々な規模にも対応できます。
しかし、小規模の施設では水利権をめぐるトラブルも多く、法整備が急がれるところです。
揚水式水力
電力需要の少ない夜間に水を下部貯水池から上部貯水池に組み上げておき、電力需要のピーク時に上部貯水池から下部貯水池に落とすことで発電する施設です。電力需給バランスを保つための発電量の調整用に用いられます。
地熱
世界第3位の地熱資源量を持つ日本において、運転コストの安さと供給の安定性に優れたエネルギー資源です。ただし、開発に時間がかかることに加えて開発コストの高さの問題もあり、まだあまり普及していません。
エネルギー資源の枯渇問題
資源の枯渇とは
「近い将来、石油がなくなってしまう」と言われ続けていますが、現在も石油は枯渇していません。
確かに資源は限りあるものでいつかはなくなってしまいますが、現状言われている「資源枯渇」とは、社会システムやコスト構造によって決まる経済的に採掘可能な資源量が減っていることを指しています。
したがって、社会システムの改善や技術開発によるコストの低減ができれば資源枯渇までの時間を延ばすことができるのです。
現状と課題
日本のエネルギーは、6.0%(2014年)という自給率の低さから輸入依存度が高くなっています。なかでも中東諸国への依存度がとりわけ高く、原油の83%や天然ガスの30%を中東諸国に依存している状況にあります。そのため中東の政治情勢に供給が左右され、安定性の確保が難しくなっています。
日本は中東諸国への依存度を軽減するために、従来のエネルギー資源供給国である中東諸国、豪州、インドネシア、ロシアに加え、新たなエネルギー資源供給国であるアメリカ、カナダ、モザンビーク、ベトナム、カザフスタン、カタール、マレーシアとの友好関係を深める努力をしています。
また、エネルギー資源供給国内価格と輸入国向け価格との差によってエネルギーコストの国際的地域間格差が発生しているため、今後は各国がエネルギー資源の地産地消を目指す傾向が出てくるでしょう。
国別のエネルギー自給率
主要国の一次エネルギー自給率は、経済産業省資源エネルギー庁の公表データによると下表のようになります。
順位 | 国名 | 自給率 |
1位 | ノルウェー | 682.9% |
2位 | オーストリア | 292.0% |
3位 | カナダ | 167.9% |
7位 | アメリカ | 90.8% |
14位 | イギリス | 60.3% |
15位 | フランス | 56.5% |
21位 | ドイツ | 39.1% |
26位 | スペイン | 30.6% |
29位 | イタリア | 25.0% |
31位 | 韓国 | 18.3% |
33位 | 日本 | 6.0% |
34位 | ルクセンブルク | 4.0% |
海外のエネルギー対策
アメリカは、2006年以降進められているシェール革命により、エネルギー資源を国内でまかなう「エネルギー自立化」を目指し、2020年を目途にエネルギー資源の純輸出国となることを目指しています。
欧州は、エネルギー供給企業の統廃合によってエネルギー使用の合理化を目指し、新興国(東アジア・東欧・中東など)は、原子力エネルギーへの依存を高めています。
新しい体系「エネルギーチェーン」
エネルギーチェーンとは
「エネルギーチェーン」とは、エネルギーの生産→流通→貯蔵→消費の流れのことで、エネルギーの種類ごとに国や企業の壁を越えて複雑に絡み合ったチェーンがあります。エネルギー資源を有効かつ安定的・安価に運用するには、エネルギーチェーンの整理・統合が必要となっています。
生産・流通・消費・技術開発
新しいエネルギー供給体系は、
- エネルギー種別ごとの縦割り的供給体制からの脱却
- 水平的に統合した総合的エネルギー供給サービスの構築
- 新規事業者の参入を容易化
- 分散型エネルギー供給システムの広域的に連携
このような形で運用されていくものと考えられます。
その際の基本的視点は、安全(S)+安定(E)+経済効果(E)+技術開発(E)の3E+Sとなり、エネルギーの利用者にもこの視点をもってエネルギーを選択してもらうことになります。
つまり、供給の安定性を考え自給率を高めるために、国産エネルギー資源であるメタンハイドレートおよび天然ガスや石炭を原料として製造された水素ガスを中心とした水素社会の実現を目指し、その安全性や経済効果を高めるための技術開発を実行することが有効な選択肢となり得るのです。
また、水素社会の実現には、生産・流通・消費の各段階において次のような技術革新や制度改革が必要になります。
生産
バイオマス技術、光触媒・人工光合成技術、発電・石油・ガス供給への新規事業者参入を容易にする法整備
流通
スマートメーター技術、需給管理のスマートコミュニティの創造
消費
需要者である国民各層の理解、3E+Sの視点から利用するエネルギー資源を選択すること
私たちの選択こそが理想のエネルギー供給社会を構築し、エネルギー資源枯渇の不安から脱出するための原動力となるのです。