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頭痛やめまいは熱中症の症状?
熱中症とは
人間は37度前後のいわゆる「平熱」に体温を調節している恒温動物です。人間の体内では、生命維持のために多くの生命活動が行われ、それらの働きが最適となる温度条件が維持されています。
私たちの身体は運動や消化活動によって熱を発生しますが、たとえ周りが暑い環境であったとしても、体温が異常に上がりすぎないように体温の調節機能が働いています。
しかし、周囲の温度があまりにも高温である場合は、この体温の調節機能がうまく働かなくなり、体内の水分やナトリウムなどの塩分が減少したり、血液の流れが滞ったりしてしまうのです。すると体温が異常に上昇し、臓器が高温にさらされて何らかの体調不良を生じる場合があります。
これが熱中症の症状です。高温の環境にいた時に生じる体調不良は、熱中症の恐れがあります。
熱中症は最悪の場合死に至ることもありますが、熱中症を知り予防法を知って実践することで防ぐことができます。また、万が一なってしまった場合にも、処置を知っていれば重症化を避け、後遺症を軽減させることが可能です。
熱中症の発生状況
2017年の5月から9月にかけての熱中症による救急搬送数は52,984人でした。搬送数は年々増加しており、2017年は前年に比べて2,500人あまり増えています。また、近年は5月の搬送件数が増加しており、これは2015年以降に見られるようになっています。
救急搬送数がこれまでで最も多かったのは、特に暑い夏となった2013年で58,729人でした。2017年は6月に梅雨前線の影響が小さく高温の日が多かったものの、8月中旬はオホーツク海高気圧の影響で日照時間が少なくなり、高温の状態が続かなかったために2013年ほど多くはなりませんでした。
2017年に救急搬送された人の年代は65歳以上の高齢者が最も多く、全体の48.9%を占めました。また、発生場所は住居が最も多く、37.0%を占めています。
熱中症を引き起こす条件
熱中症が発生しやすくなるのは、高温多湿で風があまり吹いていない環境です。さらに、熱を発生するものが近くにあると、身体から外気への熱放散が減って汗による蒸発も不十分となるために、熱中症がより発生しやすくなります。
熱中症を引き起こす条件を環境・身体・行動別に整理すると、以下のようになります。
環境
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 日差しが強い
- 風が吹いていない
- 閉め切られた室内
- エアコンが付いていない
- 急に暑くなった日
- 熱波の到来
身体
- 高齢者・乳幼児・肥満
- 身体に障がいがある
- 持病(糖尿病、心臓病、精神疾患など)を持っている
- 栄養が足りていない状態
- 脱水状態(下痢、体内の水分量の低下など)
- 体調不良(二日酔い、寝不足など)
行動
- 激しい運動
- 慣れない運動
- 屋外での長時間の作業
- 水分の補給がしにくい場所での作業
これらの条件が重なることによって熱中症が引き起こされるのです。
熱中症の症状
熱中症の症状は身体のだるさや頭痛などに代表され、それぞれの症状によって「重症度Ⅰ度」から「重症度Ⅲ度」に区分されています。
重症度Ⅰ度
- 手足がしびれる
- めまい、立ちくらみがする
- こむら返りが起きている(足がつる)
- 気分が悪い、ボーッとする
【処置】
涼しいところで休み、冷やした水分・塩分を補給する。良くならなければ病院に行く
重症度Ⅱ度
- 頭ががんがんする(頭痛)
- 吐き気がする、吐く
- 身体がだるい(倦怠感)
- 意識が何となくおかしい
【処置】
Ⅰ度の処置に加え、衣服を緩め、身体を積極的に冷やす
重症度Ⅲ度
- 意識がない
- 身体がけいれんしている
- 呼びかけに対して返事がおかしい
- まっすぐ歩けない、走れない
- 身体が熱い
【処置】
救急車を呼び、最寄りの病院へ搬送する
熱中症になった場合の応急処置
もし熱中症になったと疑われる時は、放置すれば死に至る緊急事態であることをまず認識しなければなりません。そして、重症の場合はすぐに救急車を呼ぶとともに、身体を冷やすなどの応急処置が必要になります。
涼しい環境への避難
- 風通しのよい日陰やクーラーの効いている室内へ避難させる
脱衣と冷却
- 衣服を脱がせて身体からの熱放散を助ける
- 濡らしたタオルやハンカチを肌に当て、うちわや扇風機で風を当てる
- 冷水の入ったペットボトルや氷を入手し、首の付け根の両脇・脇の下・太腿の付け根の前面・股関節に当てて、皮膚直下に流れている血液を冷やす
水分・塩分の補給
- 冷たい水を自分で飲ませる
- 大量の発汗があった場合は、経口補水液やスポーツドリンクを飲ませる。水1リットルに対して1g〜2gの食塩を入れた食塩水も有効
- 呼びかけに反応がない場合に無理矢理飲ませることはしない(水分が気道に流れ込む危険がある)
医療機関へ運ぶ
- 自力で水分の摂取ができないときは、緊急搬送が必要
熱中症の予防と対策
熱中症を予防するには
熱中症は、予防法を知っていれば防ぐことができます。日常生活・高齢者・子ども・運動時に分けて注意事項を見てみましょう。
日常生活での注意事項
- 暑い場所を避ける
- こまめな水分補給を心がける
- 急に暑くなる日に注意する
- 暑さに備えた体づくりをする
- 自身の体力や体調を考慮する
- 集団活動の場ではお互いの体調に配慮する
高齢者の注意事項
- のどが渇かなくても水分補給する
- 部屋の温度をこまめに測る
- 1日1回汗をかく運動をする
子どもの注意事項
- 顔色や汗のかき方をしっかりと観察する
- 適切な飲水行動を覚えさせる
- 日ごろから暑さに慣れさせる
- 服装を選ぶ
運動・スポーツ活動時の注意事項
- 気温や湿度などの環境条件を把握する
- 状況に応じて水分補給をしっかりと行う
- 個人の条件や体調を考慮する
- 服装に気を付ける
- 具合が悪くなったら早めに対処する
- 無理な運動はしない
年齢や地域による発生率
熱中症による死亡者数を年齢階級別に見ると、男性・女性とも0歳〜4歳および80歳〜84歳を中心とする年齢層で多く、乳幼児および高齢者で死亡例が多い結果となっています。また、男性はこれに加えて、50歳〜54歳でも多くなっています。
0歳〜4歳の熱中症による死亡は、1970年〜2015年までの間に288件ありました。そのうちの55%にあたる158件は自動車に閉じ込められたことが原因です。
また、近年死亡数が最も増えているのは65歳以上の高齢者です。熱中症の死亡者数で65歳以上の占める割合は、1995年には54%であったものが、2008年には72%、2015年には81%と急激に増加しています。
高齢者の自宅にはエアコンが備え付けられていない、あったとしても節約のために我慢してエアコンを使用しない、といった場合が多く、そのために自宅で死亡するケースが増えています。
地域別に見ると、都道府県別の人口10万人あたりの搬送件数では沖縄県が最も多く90.26人でした。次いで鹿児島県(89.67人)、宮崎県(78.35人)、熊本県(78.21人)と、九州・沖縄地方で多く見られます。
気を付けたい「夜間熱中症」
夜間に熱中症を発症する「夜間熱中症」が近年増加しています。
東京都が2013年の7月〜8月を対象に集計したところ、熱中症で死亡した人の30%は夜間(午後5時〜翌朝5時)でした。発生場所はそのほとんどが自宅であり、エアコンなどの冷房機器を使用していなかったためと考えられます。
夜間熱中症を防ぐためには、暑さを我慢せずにエアコンを使用する、水分をこまめに摂取する、といった対策が重要です。
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スーパークーリングタオル クールコアタオル
「クールコアタオル」は、米国クールコア社が開発した高機能素材「Coolcore(クールコア)」を使用して作られたタオルです。
クールコアは、ポリエステルを中心とした異なる種類、異なる太さの糸を特殊な設計で編んだり織ったりすることで、繊維自体に毛細管現象を起こしやすくする構造を持っています。そのため、水分を吸うと生地全体に水分を拡散して、気化熱により冷却させるという機能を持っています。
ひんやり冷たい感触の得られる繊維としては、「接触冷感」と呼ばれる機能を持つ繊維を使用した製品が数多く商品化されています。しかし、その多くはセラミックなどを繊維に織り込んで熱伝導性を高めているため触った瞬間はヒヤッとするものの、暑いところへ行くと熱くなってしまう欠点を持っています。
これに対して、クールコアはその構造自体が冷却効果を持っているので、冷却機能が持続するという長所があります。また、洗濯しても機能は低下せずに効果が半永久的に持続します。
水に濡らして絞って軽く振るだけで簡単に使用でき、かつ何回でも使える優れた製品です。
白元アース どこでもアイスノン
スプレー式の冷却剤です。服を着たまま、服の上からスプレーすることで、瞬間的に冷却する効果があります。手軽に携帯できるタイプと大容量タイプがあり、用途に応じて使い分けることができます。
また、消臭機能も持っているので、暑い時に動いて多量の汗をかいた場合にも重宝します。
充電式ハンディーファン モバファン
高さ約20cm、幅約10cm、電池を含まない本体重量約124gの小型・軽量の扇風機です。
小型ながら4枚の羽を持つ扇風機であり、コンパクトな姿からは想像できないほどの強い風が得られます。
1500mAhのリチウムイオン電池を搭載しており、付属のUSBケーブルを使用して充電器から充電したりモバイルバッテリーに接続して使用することも可能。風の強さを3段階に切り替えるスイッチもあるので、さまざまな状況に応じた使い方ができます。
扶桑化学 叩けば冷える瞬間冷却剤
通常は常温で保存しておき、必要な時に外袋を叩いて中の水袋を破ると、急激に冷たくなって冷却剤として使用できる製品です。
冷却機能は、室温25度で30分〜50分持続します。また、冷却効果が失われた後も冷凍庫へ入れると蓄冷剤として再使用が可能です。
急いで冷やす必要がある際に氷や保冷剤のストックがないケースで大変重宝する冷却剤です。
熱中症は誰でもなり得るものです。しかし、予防と対策を打っていれば必ず防ぐことができます。暑くなってから対策を講じるのではなく、暑くなる前から体調を整えるなど、熱中症にならない対策を心掛けましょう。