ライフスタイル今後の日本を支える「ホームヘルパー」の気になるサービス内容と利用料金

今後の日本を支える「ホームヘルパー」の気になる仕事内容と利用料金

介護施設の不足と「住み慣れた家で過ごしたい」という要望によって増加している介護の形が在宅介護です。その現場では、厳しい雇用状況となっているホームヘルパー、法律によって縛られた提供可能なサービス内容と、利用者が理解しにくい複雑な料金体系が問題になっています。

ホームヘルパーとは

ホームヘルパーとは

ホームヘルパーは、その名のとおり、自宅で暮らしている要介護者に対して日常生活の援助など必要な介護サービスを行うスタッフのことです。

「ヘルパーさん」の呼び名で馴染み深いホームヘルパーですが、「訪問介護員」という介護保険制度における正式名称があります。この訪問介護員になるためには「介護職員初任者研修課程」を修了しなければなりません。

介護職員初任者研修課程
2012年度までの「訪問介護員養成研修(ホームヘルパー1級~3級)」と「介護職員基礎研修」とが統合されたもの

訪問介護員と介護福祉士の違い

「認定資格」である訪問介護員に対して、同様の家庭介護や生活介護を行う資格に「介護福祉士(別名「ケアワーカー」)」があります。介護福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づく「国家資格」によるものです。

訪問介護員との仕事内容の差はそれほどありませんが、介護の指導ができるために責任者となることが多いです。また、正社員として採用されることが多く、ほとんどがパート社員であるホームヘルパーとは待遇に差があります。

ホームヘルパーの雇用形態

公益財団法人介護労働安定センターが2017年に発表した「平成28年度 介護労働実態調査」によると、介護労働者全体の平均時給は1,067円でした。この調査による職種別に見た給与は以下のとおりです。

(単位:円)平均時給平均日給平均月給(正規)平均月給(非正規)
訪問介護員
(ホームヘルパー)
1,1618,441191,500108,500
サービス提供責任者1,1138,177215,400164,600
看護職員1,38410,102262,300143,700
介護職員9277,242196,000118,600
生活相談員9939,710214,300142,200
介護支援専門員
(ケアマネージャー)
1,2098,746240,600159,900
理学療法士(PT)
作業療法士(OT)
言語聴覚士(ST)
1,590267,500160,100

訪問介護員の給与は時給・日給では介護職員より高いですが、月給にすると安くなっています。これは一週間の平均労働時間に差があり、訪問介護員が30.8時間なのに対して介護職員は37.4時間となっているからです。

 

ホームヘルパーのサービス内容

ホームヘルパーのサービス内容

訪問介護員(ホームヘルパー)は、食事や入浴、排泄などの支援をする「身体介護」と、調理、洗濯、買い物などの援助・代行をする「生活援助」を行います。

身体介護

身体介護とは、直接身体に触れる介護のことで、食事介助・入浴介助・排泄介助・歩行介助がこれに当たります。

CHECK
介助と介護の明確な差の定義はないが、手助けをする行為自体を「介助」、これに見守りや準備などを合わせた全般を「介護」と呼ぶのが一般的

食事介助

食事の介助が必要な場合に、誤飲防止の姿勢を保たせて食べやすいようにサポートしてもらう行為を指します。例えば、加齢によって歯が少なくなり噛む力も弱まっている高齢者に対して、細かくカットしたり柔らかく煮たりなど、食べやすいように調理します。これにより、食事という行為を楽しんでもらうことが目的です。

入浴介助

室温と浴槽内の温度の差による身体的負担の軽減や、滑りやすい風呂場の床で転倒しないように気を配りながら身体を洗う手伝いをしてもらう行為を指します。安全な入浴を提供して身体を清潔にするとともに、精神的・肉体的な緊張を緩和させることが目的です。

排泄介助

おむつ交換やトイレへの誘導、排泄後の始末などの行為を指します。「恥ずかしい」「申し訳ない」と感じてしまうことは身体的にも精神的にも非常にストレスとなります。ホームヘルパーは、常に気を配りながら手伝いすぎず、安全かつ快適に排泄が行えるようにサポートしてくれます。

歩行介助

起きる、歩く、座るなどの移動動作を補助する行為を指します。年を重ねると起き上がる際や歩行中に転倒してしまうことが多く、それによって寝たきりになってしまうこともあります。そのような事故を起こさないためにも、重要なサポートの一つです。

生活援助

家事面での援助のことで、

  • 掃除
  • 洗濯
  • 調理
  • 外出サポート

などがこれにあたります。生活援助は、利用者や家族がこれまでしてきたやり方をできるだけ再現することを目的とします。しかし、家事代行サービスではないため、ペットの散歩や来客対応などは対象ではありません。

 

訪問介護を頼む際のポイント

訪問介護を頼む際のポイント

訪問介護は自宅で介護が受けられる便利なサービスですが、自宅に他人を迎え入れることをためらう人も多くいます。その不安を解決するには、介護支援専門員(ケアマネージャー)と納得するまで話し合い、利用者側がトラブルを防止する準備をしておく必要があります。

訪問介護のメリット・デメリット

メリット

訪問介護のメリット1つ目は、自宅で介護が受けられることです。住み慣れている家から離れる必要がないため、大勢の知らない人と一緒に過ごす施設とは違い、精神的負担を感じにくくなります。

2つ目は、介護施設への入居に比べて経済的負担が軽くなることです。比較的安価な施設もあるものの、入居待ちの期間が長くかかることがあります。

3つ目は、施設介護に比べて融通が効く場合があることです。自己負担にはなるものの、介護保険制度適用外のサービスを受けられることもあります。

デメリット

対して、訪問介護のデメリット1つ目は、自宅に介護用の設備が必要になることです。介護設備が整っていない状態では介護者の負担が大きくなってしまうため、十分なサポートが受けられません。

2つ目は、介護体制の不十分な小規模事業者もあることです。施設を持っている事業者と違い、小規模で十分なサポート体制を構築できていない場合があります。

3つ目は、他人を自宅に入れることでのリスクが発生することです。:他人を自宅に入れることで家族のルールが通用しなくなり、認識の食い違いによるトラブルが発生する恐れがあります。

訪問介護の利用方法

住んでいる市区町村で要介護認定(要支援認定を含む)を申請すると、市区町村の職員による認定調査やかかりつけの医師による主治医意見書の作成が行われます。そして、この情報を元に要介護度が決定されます。

要介護度が決定されるとそれに応じたサービスが受けられるようになるので、自分で「事業所」「サービス」を選んで介護支援専門員(ケアマネージャー)にサービス計画を作成してもらい、計画に基づいたサービスを受けることになります。

訪問介護の料金

訪問介護の料金は次の式で計算できます。

  • 地域単価×単位数=料金
  • 料金×自己負担割合=自己負担額

地域単価は地域によって、単位数は介護内容によって変化します。地域単価には「1級地」から「7級地」に加えて「その他」の区分があり、1級地は東京23区、2級地は横浜市、川崎市、大阪市など。訪問介護の場合の地域ごとの加算割合と地域単価を以下に示します。

 1級地2級地3級地4級地5級地6級地7級地その他
地域加算(%)2016151210630
地域単価(円)11.4011.1211.0510.8410.7010.4210.2110.00

訪問介護費の計算例

地域単価の計算には介護サービスの内容によって変わる「人件費割合」という数値が必要で、これには70%、55%、45%の3種類があります。

訪問介護の場合の人件費割合は70%のため1級地の加算額は70%×20%=14%となり、基準単価である10円に対して地域単価は10円×(100%+14%)=11.4円となります。

自己負担割合は1割ですが、1ヵ月ごとの上限額が単位数で決められており、それを超える部分は全額負担となります。訪問介護の場合の要介護度による利用限度(単位数)は以下のとおりです。

 要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5
上限単位数5,00310,47316,69219,61626,93130,80636,065

例えば、東京23区内(1級地)に住んでいる要介護1の利用者が訪問介護において身体介護30分(単位数388)と生活援助30分(単位数183)を30日間受けた場合、1ヵ月の利用単位は(388+183)×30=17,130単位となります。

ここで、要介護1の上限単位は16,692単位のため、利用者の自己負担額の計算は以下のように行います。

  • 1割負担の金額:11.40(地域単価)×16,692(単位)×10%=19,028円(1円未満切り捨て)
  • 全額負担の金額:11.40円(地域単価)×(17,130-16,692)(単位)=4,993円(1円未満切り捨て)
  • 合計:19,028円+4,993円=24,021円

公益財団法人家計経済研究所が行った2016年の調査によると、全国の介護サービス利用料の平均月額は約16,000円(自己負担額)となっています。しかし、医療費やおむつ代などの介護サービス以外の支出は、これより多い約34,000円となっています。

 

地域の福祉サービスの例

地域の福祉サービスの例

介護保険による支援だけでは介護現場の要望をカバーすることができないため、各自治体は独自の介護支援策を実施しています。

東京都武蔵野市の福祉サービス

知的・精神障害者ガイドヘルパー

一人での外出が困難な知的・精神障害者に対して付き添いを派遣するサービス。派遣費用の本人負担額は1割ですが、交通費は全額本人負担となります。

障害者探索サービス

障害者の居場所が分からなくなった場合に、介護者に対して障害者の位置を知らせるサービス。障害者の位置検索にはGPSが使われ、1ヵ月500円で利用できます。

食事サービス

単身の障害者または障害者のみの世帯に対して、1食500円で食事を提供するサービス。

福祉電話の使用助成

福祉電話の利用者に対して、基本料金+3ヵ月ごとに1,800円までの通話料金を助成するサービス。

福祉電話
障害者や高齢者向けの電話機で、骨伝導機能、音量・音質調節機能、手を使わずに電話がかけられる機能などが付いている

ホームヘルパーの利用

障害者や難病患者で、家族による介護が難しい状況にある場合にホームヘルパーの利用を支援します。障害者総合支援法や介護保険制度により家事・介護などに対応しますが、所得によっては一部の費用負担が発生します。

 

訪問介護は訪問介護員の確保が難しく料金も高額であるため、サービスの拡充があまり進んでいません。介護職員の厳しい労働条件が社会問題となっていますが、わずかな待遇の改善で抜本的な効果をあげることは難しいでしょう。

介護は利用者の「自立」を助けるものですから、利用者とその家族と公正中立な介護支援専門員(ケアマネージャー)との協働によって適切な介護を進めていくことが必要とされています。