この記事の目次
桃太郎のまち「岡山」
岡山の桃太郎伝説
桃太郎は日本のおとぎ話の一つで、桃から生まれた桃太郎がきびだんごを携え、犬・猿・雉(きじ)を引き連れて鬼ヶ島へ鬼を退治しに行く物語です。桃太郎のゆかりの地として有名な吉備の国、現在の岡山県には、桃太郎と縁のある史跡や神社などが数多く存在します。
桃太郎が祀られている「吉備津神社」
吉備津神社の伝説
吉備津神社は、桃太郎のモデルと言われる吉備津彦命を祀っている神社です。
吉備津彦命は日本書紀にも登場する皇族の一人で、大和朝廷の時代に四道将軍の一人として諸国平定のため山陽道に派遣され、空を飛んでやってきたとされる悪者の温羅(うら)を退治し、吉備の国に平和をもたらしたと言われています。
おとぎ話の登場人物の桃太郎は吉備津彦命、鬼は温羅がモデルと言われており、温羅一族を退治して吉備の国を平定したことが物語のベースになっています。
文化財としての吉備津神社
吉備津神社は、岡山県内で最も古く大きな神社です。創建後に二度火災により焼失しており、現在の本殿と拝殿は室町時代(1425年)に足利義満によって造営されたもので、国宝に指定されています。
本殿の屋根は「比翼入母屋造り」という左右に二つの同じ屋根飾りを並べて一つの大きな屋根にした造りで、全国でも吉備津神社でしか見られない様式であることから「吉備津造り」とも呼ばれています。また、広大な境内には長い廻廊や貴重な建築物も点在しています。
神事「鳴釜神事」とは
鳴釜神事は、御祭神の吉備津彦命に託した願い事が叶うかどうかを釜の鳴る音で占うという吉備津神社の神事です。
吉備津神社境内の長い廻廊を渡った先にある御釜殿で行われ、御釜殿の神事に使える「阿曽女(あそめ)」と呼ばれる女性が釜に水を張って湯を沸かして、その沸く時の釜の音の大小や長短によって吉凶を判断します。
この神事は温羅一族征伐の話に由来し、窯の下には退治された鬼の首が埋まっていると伝えられています。吉備津彦命は捕らえた温羅の首をはねて退治しましたが、温羅はそれでも大声で唸り続けたため、御釜殿の釜の下に頭を埋めてしまいました。
しかし、それでも唸り声が止まることはありませんでした。その後、吉備津彦命の夢に温羅の亡霊が現れて、温羅の妻に釜を焚かせるように告げたため、そのとおりにしたところ唸り声がおさまりました。この話は江戸時代の怪奇小説『雨月物語』にも登場しており、鳴釜神事の起源と言われています。
絶景の鬼ヶ島「鬼ノ城」
温羅伝説にも登場する鬼ノ城の伝説
鬼のモデルとなった温羅は、目が狼のように輝き髪は赤々と燃えているようで、大きな身長と強い腕力が特徴。性格も荒々しくて凶悪そのものだったと言われています。その温羅が城を構えた場所が、現在の岡山県総社市の鬼城山にある鬼ノ城です。
古代の山城だった鬼ノ城の城壁は周囲2.8キロにも及び、現在は復元された石垣や城門を見学することができます。また、周辺にはさまざまな遺跡が残っており、当時の規模の解明が進められています。
自然豊かな地「鬼ノ城」
温羅の居城として知られる鬼ノ城は、吉備高原の南縁、標高400mほどの山頂に位置します。眼下にはかつて吉備の中枢地であった総社平野や足守川中流域の平野が広がり、遠くの瀬戸内海や四国までも一望できる絶景スポットです。
桃太郎にちなんだ岡山のお土産
廣榮堂 元祖きびだんご
廣榮堂は1856年に創業し、岡山名物のきびだんごを広めた老舗菓子屋です。
きびだんごは日本の五穀の一つである黍(きび)の粉を蒸して作るだんごのことで、古くからあんを付けたり汁をかけたりして食べる日常の食べ物でした。廣榮堂は、お茶に合う菓子として、また旅の友として携えられる菓子として日持ちを良くするようにきびたんごの改良を進めました。
その結果、日持ちが悪い黍の粉ではなくもち米を用いて砂糖と水あめを加えてやわらかい求肥に仕上げ、風味づけに黍の粉を加えることで現在のきびだんごと同じ製法を完成させたのです。
改良したきびだんごを池田藩に献上したところ好評となり、岡山を代表する銘菓として藩主に認められたことが廣榮堂のきびだんごのはじまりです。創業当時、きびだんごは串に刺されたものでしたが、明治に入り鉄道の開通とともに客の出入りが多い駅で立ち売りを行うために箱詰めでの販売が開始されました。
販売戦略に長けていた初代当主は「日本一の吉備団子」とのぼりを立て、日清戦争から凱旋する兵士に「桃太郎伝説」と絡めて宣伝したところ、飛ぶように売れ、これを機にきびだんごは岡山県を代表する銘菓として全国へと知られるようになりました。
1886年には岡山に行幸された明治天皇へ献上が行われた記録もあります。廣榮堂が販売する元祖きびだんごは、開発当初から変わらず上質のもち米と極上の砂糖、水あめを入れて練り上げただんごに、風味づけとして黍を加えたほんのり甘く優しい味わいで、どこか懐かしさを感じさせる商品です。
人気絵本作家の五味太郎氏がデザインしたオリジナルのパッケージも印象的で、ボリュームもあるためにおやつとしても人気のロングセラー商品です。
山脇山月堂 桃太郎伝説
1881年創業の山脇山月堂は岡山に本社を構える和菓子店で、和洋を折り混ぜたさまざまなスイーツを開発しています。山月堂の「桃太郎伝説」は、犬を引き連れた桃太郎が鬼ヶ島へ向かう幼くも勇敢な姿をレトロな雰囲気でデザインしたパッケージが特徴です。
なかには3つの小さな串団子が個別包装されて入っており、お土産にも便利です。モチモチとした食感で甘さは控えめ、きな粉の香りが楽しめます。
宝岡山銘菓 ひとくち桃太郎
岡山宝が製造・販売する岡山銘菓の「ひとくち桃太郎」は、桃太郎が引き連れた雉や猿の焼き印が表面に押された一口サイズの饅頭です。さつまいもペーストの白あんはとても優しい甘さ。岡山土産として人気の商品で、駅構内でも購入できます。
敷島堂 マスカットきびだんご
岡山県は「くだもの王国おかやま」と称されるほど桃やぶどうをはじめとした多くの果物が生産され、高品質なことでも全国的に知られています。
マスカットの生産量で全国トップを誇る岡山県は、「果物の女王」と呼ばれるマスカット・オブ・アレキサンドリアをはじめ、糖度が高く皮ごと楽しめるシャインマスカットや瀬戸ジャイアンツなど多くの品種を栽培しています。
敷島堂は岡山県瀬戸内市に本社を置き、県内に複数の店舗を構える和菓子メーカーで、素材にこだわり季節のフルーツを取り入れた商品を開発をしています。
「マスカットきびだんご」は、岡山名物のきびだんごのなかに特産のマスカットの果蜜を入れた餅菓子で、フルーティーなマスカットの香りと甘さがさわやかな逸品です。
金萬堂 きび田楽
金萬堂本舗の「きび田楽」は、古くから定番の岡山土産として人気の商品です。
四角い餅生地のなかに香りの良いクルミを混ぜ込んできな粉で包んだ生菓子で、弾力のある食感で香ばしいクルミの香りと懐かしい味わいが人気です。つまようじで餅生地を刺している形はおでんの田楽のようで楽しく、手ごろな価格のためお土産にも最適です。
桃太郎のまち岡山には、縁深いつながりを感じる史跡や伝説が数多く残されています。それだけでなく、名物のきびだんごや桃太郎をモチーフにした土産物もたくさん。伝説と歴史のまち岡山を堪能し、舌鼓を打ってみてはいかがでしょうか。