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シェアリングエコノミーの抱える課題
シェアリングエコノミーとは、個人が所有している持ち物・技術・場所といった利用可能な資産を、必要としている人に有償で提供することで新たな経済効果を生み出す仕組みです。
具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 使っていない駐車スペースを必要な人に貸し出す
- 空いている時間にベビーシッターを請け負う
- 所有している空き家を民宿として貸し出す
- 所有している持ち物(衣服・アウトドアグッズ・車)を貸し出す
- 空いている時間に自家用車で送迎する
既に所有している資産を貸し出し、収入を得ることができるシェアリングエコノミーは、
- ビジネスとして簡単に始められる
- 遊んでいた資産が収入源になる
- 個人のやり取りなので利用料が安い
といった点がメリットとなり世界中に広がってきている反面、日本では以下のような不安を持つ人も多く、普及する下地が整っていないのが現状です。
- シェアリングエコノミーの収入の位置付けがはっきりしていない
- 個人間の貸し借りによる安全面やリスクが不安
- シェアリングエコノミーの利用方法が難しい
こうした不安を取り除くことが、日本におけるシェアリングエコノミーの普及へ向けた課題となっています。
シェアリングエコノミーの課税
シェアリングエコノミーで得た収入には、どのような課税が行われるのでしょうか。税金に関する問題点について、詳しく見ていきましょう。
課税に関する課題
エコノミーシェアリングにおける課税の問題は、2017年の秋頃から政府内でも問題視されるようになりました。特に焦点となっているのは、
- 所得税
- 消費税
- 法人税
の3つです。
所得税
シェアリングエコノミーを利用する人のほとんどは、プラットフォームと呼ばれる仲介業者に登録してマッチングが行われ、具体的な金銭のやり取りは個人間になります。
一般的な給与所得と違い、直接的なお金のやり取りは把握も追跡もしにくいため、所得隠しや申告漏れなどの問題が起こりやすくなるのです。
消費税
シェアリングエコノミーで得た利益に対する消費税も、認識しにくい問題の一つです。
ネット上で所有物の個人売買が行われるシェアリングエコノミーの場合、年間で1000万円以上の売り上げがあると消費税の納税義務が発生するのですが、複数のプラットフォームに登録しているとそれぞれの情報を追うことが難しく、結果として納税漏れが起こりやすくなります。
法人税
海外から発祥したシェアリングエコノミーの仲介業者は、拠点が日本にないため法人税の課税が困難であり、今後の普及にあたりどのような税制改正を行うべきかが問題となっています。
課題への対応策
新しい経済体制であるシェアリングエコノミーは、課税の面でさまざまな部分が整っておらず、それが問題の引き金となっている部分も多くあります。
- シェアリングエコノミーで得た収入の確定申告が難しい
- プラットフォームが多数存在しているため情報が分散している
- 登録者の情報開示が義務化されていない
こうした問題の対応策として、プラットフォームへの登録義務や仲介業者への取り引き情報開示の義務づけ・シェアリングエコノミーの収入に対する課税方法の確立などが早急に求められています。
サービス利用者への安全性の保証
サービスを安心して利用するための課題と、具体的な対策について見ていきましょう。
安全性確保への課題
シェアリングエコノミーを利用するうえで、一番心配なのがその安全性です。
- 個人とのやり取りでトラブルになってしまったら
- 利用した際に損害を受けた場合の補償はあるのか
- 利用する前に安全性を判断する材料は何か
対個人の取り引きはどうしても自己責任という不安があるため、それをどう取り除いていくかが重要な課題となります。万が一の際の相談先をはっきりさせるなど、安心・安全であることを示すことが、シェアリングエコノミーの普及には欠かせないのです。
安全性確保に向けての対策
シェアリングエコノミーの安全性確保に向けた対策として、一番重要視されるのは「バックグラウンドチェック」と呼ばれる「安全を証明する根拠の確認」です。
シェアリングエコノミーのプラットフォームでは、安全性の確保に向けて以下のような対策を行っています。
- プラットフォームへの登録時に、公的な身分証明書により本人確認を行う
- 提供するサービスに不正や違法がないかどうか、事前に審査を行う
- 優良なサービスを提供する人に対し、利用者の評価が反映された認証マークを付ける
プラットフォームはあくまで個人間のマッチングを行う場所ではありますが、仲介業者がこうした個人情報を持つことでトラブル時の相談先になれる、というメリットがあります。
シェアリングエコノミーをより安心かつ便利に利用できるよう、安全性確保に向けた模索が続いています。
シェアリングエコノミーのデジタル格差
利便性追求のためにインターネットを活用したサービスの提供・受給は、シェアリングエコノミーに欠かせない反面、利用者の幅を狭める危険性も持っています。
デジタル格差による課題
スマートフォンとタブレットの普及により、インターネットを利用したサービスの提供は格段に増えてきました。しかし、その利便性を受け入れられるかどうかは利用者の状況に左右されやすく、結果としてデジタル格差という課題を生み出しています。
例えば、
- 年齢的に通信機器の扱いが難しくプラットフォームに登録できない
- 住んでいる地域の通信状況が整っていない
- 収入が低いため通信費などの支払いが難しい
が、挙げられます。
インターネットを最大限に利用しているシェアリングエコノミーでは、このようなデジタル格差は普及を妨げる大きな課題となります。より多くの人に受け入れられるためには、まず参加できる状況を整えなければなりません。
デジタル格差への対応策
デジタル格差を無くし、多くの人がシェアリングエコノミーを利用できるようにするため、現在さまざまな対応策が打ち出されています。
- 無料Wi-Fi設置箇所を増やす
- ブロードバンド・ゼロ地域を解消し、インターネットに接続できる環境を整える
- リテラシー教育を行い、どのような年代の人でもインターネットに関する一定した知識やスキルを持てるようにする
これらの対応策が目指している先は、「シェアリングエコノミーを活用することで、年代を問わずサービスを提供・受給することができる未来」です。
デジタル格差を無くすための対応策は、シェアリングエコノミーの普及拡大に向けた第一歩となるでしょう。
世界中から注目され多くの人が登録をしているシェアリングエコノミーは、一生涯にわたり社会参加できる可能性を秘めています。日本での普及がより一層進められるよう、官民一体となった課題への取り組みが急がれます。