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曲げわっぱの弁当箱が人気の理由
曲げわっぱとは
曲げわっぱとは、スギやヒノキを薄板状に加工し、円筒形に曲げて作られる木製の箱のことです。お弁当箱として使われることが多く、特に秋田県の大館市で作られる大館曲げわっぱは日本の伝統工芸品として有名です。
本体とふたが一対になっている、いわゆる曲げ物(まげもの)の伝統工芸品としては、
- 青森県藤崎町の「ひばの曲物」
- 静岡県静岡市の「井川メンパ」
- 福岡県博多区の「博多曲物」
などが挙げられます。
調温作用など多くのメリット
曲げわっぱの材料には主にスギが使われていますが、木目の美しさに加えて弾力があって加工しやすいことや、調温・調湿・空気浄化作用に優れていることなどが特徴です。
- 調温作用:夏は食材が痛みにくく、冬は米が固くなりにくくなる
- 調湿作用:米から出てきた水分をしっかりと吸収し、べちゃべちゃにならずにおいしく食べられる
- 空気浄化作用:スギの香りをたしなみながら弁当を食べることができる
この3つの作用で弁当の中身がしっかりと守られます。色々な悩みを一掃してくれるメリットが曲げわっぱにはあるのですね。
さらに、曲げわっぱを使うことで、多少寂し気な食材でも厳選された食材のように見た目を演出することができます。あまり手間をかけずに見栄えの良いお弁当を作れるため、お弁当男子にも支持を得ています。
曲げわっぱを毎日使うのは問題ない?注意点をチェック
多くのよい点がある曲げわっぱですが、一方でデメリットや気を付けなければならない点も多くあります。できるだけ長く曲げわっぱの魅力を楽しむためにぜひ押さえておきましょう。
値段が高い
曲げわっぱに使用されるのは樹齢150年〜200年の天然秋田杉で、とても貴重な木地のため、曲げわっぱも高価になります。また、人工で作られた価格の安いスギは天然スギに比べて柔軟性が低いため加工が難しいなどの理由もあります。
管理が難しい
曲げわっぱの材質は木のため、プラスチックに比べると非常にデリケートなのはやはり頭に置いておかなければなりません。雑に扱ってしまうと塗料がはげて、そこから水が入り黒ずみになります。表面を削れば落とすことはできるものの手間がかかってしまうので、できるだけ丁寧に扱うようにしましょう。
汁漏れを起こしやすい
曲げわっぱは木材で作られているため、気候の変化により容器自体が伸び縮みします。加えて、プラスチック弁当箱のようにゴムパッキンがないため、密閉性が低く汁漏れを起こしやすいです。
米から出る水分は吸収することができますが、過剰な汁物は入れないようにしましょう。
電子レンジが使えない
電子レンジは水分を振動させて食材を温めるものですが、曲げわっぱの場合は木材の性質上、本体がゆがんでしまいます。それほど曲げわっぱはデリケートなのですね。
毎日使うのはできれば避ける
後述するカビの見出しで詳しく説明しますが、曲げわっぱを長く楽しむためには乾燥が重要なポイントです。
木材はそれ自体に水を含み、さらに乾燥に時間がかかるため、できれば丸1日乾燥させましょう。つまり曲げわっぱを毎日使うのはできれば避けた方が無難で、少なくとも帰りが遅い場合には十分に乾ききらない可能性が高いため、次の日は別のお弁当箱にしましょう。
「帰宅時間が不定期だけど毎日使いたい…」という方は、少々お金がかかってしまいますが、2個購入して毎日交互に使用するとよいでしょう。それも難しい方は、洗い終わりに40度から60度くらいのお湯をかけると、気化熱の影響で乾燥時間が少し短縮できます。
曲げわっぱを5年10年と長く使うためには、このように細かな部分に気を付けることが大事になってくるのですね。
曲げわっぱ弁当箱のカビの予防&対処法
大切な曲げわっぱ弁当箱にカビが生えてしまっては、美味しいお弁当もその楽しさが台無しになってしまいます。ここからは、カビが発生しにくくなるお手入れ方法や、カビが生えてしまった場合の対処法について見ていきましょう。
食材のつめ方
ご飯を先につめるようにしましょう。あとはほかの弁当箱と同じです。また、汁漏れしてしまわないように、汁が多いおかずにはおかずカップなどを使うと安心。キッチンペーパーで余分な水分や油を取っておくのもよいでしょう。
水と洗剤で手洗い
前提として手洗いが必須で、ほかの弁当箱と同じように水と洗剤で洗います。その後、よくすすぎ、水気をしっかりと切ってから干しましょう。できれば木材の伸び縮みがあるので長く水には漬けないでください。
また、毎日使っていると気になるのが臭い移り。もし臭いが弁当箱に移ってしまったら、お湯に数十分漬けることを毎日繰り返すと、だんだんと臭いが消えていきます。
しっかりと水気を飛ばす
曲げわっぱで特に注意する点は、洗った後に完全に水気を飛ばすことです。
水分への対策が曲げわっぱを長く使えるか否かの分かれ道。乾燥が不十分だとカビが発生してしまうため、洗い終わったら乾いたふきんでしっかりと水気を拭き取ってから日が当たらない風通しの良い場所に置きます。また、食器乾燥機の使用はNGです。
カビは表面的なものだけ処置が可能
曲げわっぱ弁当箱に付いたカビは、表面までで進行が止まっている軽いものの場合、薄めた中性洗剤を使って洗った後にお湯をかけると取り除ける場合があります。
ただ、塗装がしてあっても、剥がれてしまった箇所からカビが侵入するなど奥深くまで進行してしまっている場合には、取り除くのが難しくなります。
このような場合には、購入元・製造元に修理をお願いするか、新品を買い直したほうがよいでしょう。
曲げわっぱの種類と伝統品
秋田伝統の名品 大館曲げわっぱ
秋田県大館市の工芸品である大館曲げわっぱは、経済産業大臣指定伝統的工芸品です。曲げわっぱブームの火付け役とされる一品で、秋田音頭にも名物としてうたわれています。17世紀後半には、大館城主佐竹西家が下級武士の副業として奨励し発展しました。
美しい木目を持ち弾力性に富む天然秋田杉を、薄く剥いで熱湯に漬け、やわらかくなったらそれを曲げて加工し、山桜の皮で縫い止めをして完成です。なお、伝統工芸品は国から認められた伝統工芸士が一つひとつ手作りで作っており、全て木目が違うため世界で一つの品になります。
塗りの種類
曲げわっぱの塗りには「白木」「漆」「ウレタン」の3種類があります。
白木(しらき)
白木とは塗料を塗らない白地(しらじ)のままの状態、簡単に言えば何も塗らない状態のことです。白木の場合は木材に悪影響が出てしまうため洗剤を使わないで洗うようにしましょう。
漆(うるし)
漆は漆の木から作られた塗料で塗ったものです。これは漆塗りと呼ばれる技法になります。
漆の塗り方の種類と基本は?|漆器の有名ブランドも解説
ウレタン
ウレタンという化学塗料で塗られたものです。白木や漆に比べて独特な匂いがします。
どれが良いかは個人の感覚によりますが、
- 箱からの自然な香りに関して白木に勝るものはありません
- 漆は鮮やかな色合いがバツグンで存在感もあります
- ウレタンは塗装により耐久性が増しています
自分のスタイルに合ったものを選ぶと良いでしょう。
2012年度をもって材料である天然秋田杉が資源保護のために伐採禁止となってしまいました。在庫がなくなると、天然秋田杉で作られた曲げわっぱは手に入りません。まだ新しい製法はできていないため、正真正銘の曲げわっぱはチャンスを逃すともう手に入らない可能性があります。
この瞬間にも曲げわっぱの材料のスギはなくなっています。思い立ったが吉日という言葉があるように、数少ない「真の曲げわっぱ」を手に入れてみませんか。