歴史ある日本の伝統工芸越前市で愛され続ける越前と名の付く3つの伝統工芸品

越前市で愛され続ける越前と名の付く3つの伝統工芸品

越前市の嶺北地方にある越前では、大変古い時代から日常使いに適した漆器・和紙・焼き物が作られています。そんな、世界的にも知られる工芸品である越前漆器・越前和紙・越前焼を紹介します。

1500年の歴史を持つ「越前漆器」

越前漆器とは

福井県鯖江市の伝統工芸品「越前漆器」の歴史は古く、大和・飛鳥時代までさかのぼります。

継体天皇が片山集落の塗師に冠の塗り替えを依頼した際、塗り直した冠とともに黒漆の椀を献上。素晴らしい出来に感銘を受けた天皇は、漆器作りを奨励したことが起源とされています。

越前には古来より、漆の木に傷を付けて漆液を採取する漆かきが多かったため、全国各地で漆かきが行われていました。日光東照宮建立の際、徳川幕府は越前に漆液の採取を命じたことからも分かるように、越前の漆かきが集める漆液の品質の高さがうかがえます。

また、明治時代になると越前衆と呼ばれる多くの漆かき職人が出稼ぎに出たり移住したりしたため、全国各地で漆器の産地が誕生しました。

越前漆器の特徴

光沢が美しく上品で堅牢、という言葉で表現される越前漆器。蒔絵や沈金が施されたものは、さらに華やかさが加わります。

明治時代半ばまでに作られたもののほとんどは椀ものでしたが、転換期となる明治時代後半には、重箱や手箱・花器などさまざまなものが作られるようになりました。

MEMO
漆器が多く作られるようになり、河和田地区全体で漆器作りが行われるようになったことから、河和田塗りとも呼ばれている

制作工程

越前漆器は、多くの職人の手による分業制で作られます。

  • 手順1
    木地作成
    ケヤキ・トチ・ホオ・サクラの原木を乾燥。その後、木取りをして傷や穴の補修を行います。椀ものはろくろで、角ものは板を裁断して削り、組み立てていきます
  • 手順2
    塗り(下地)
    手塗り、またはスプレーで漆を塗る。漆器制作に必要な塗りと研ぎを繰り返すための重要な工程
  • 手順3
    塗り(上塗り)
    均一の厚さに漆を塗る作業です。漆塗りには一定の温度と湿度が必要なため、高い技術力が必要とされます
  • 手順4
    加飾(蒔絵・沈金)
    漆を塗った上に金や銀の粉を蒔いて研ぎ・磨いて仕上げる蒔絵や、沈金刀で模様を彫り、金や銀の粉・顔料などを定着させる沈金が施される
木取り
作りたい品に合うように木材の形を切っていく作業のこと

商品紹介「井出漆器・越前漆器 袋型 汁椀 溜内朱」

じっと見ていると吸い込まれてしまいそうな美しい塗りのお椀です。天然木をくりぬき、朱の下地の上に半透明の漆を塗って仕上げる溜内朱が施されています。

口に当たる椀のフチがわずかに外側に開くようになっているため、飲みやすく肌触りは優しくやわらか。職人の温もりを感じられます。自宅用はもちろん、贈答用にもおすすめです。

 

全国一位の品質を誇る「越前和紙」

紙の種類・品質・出荷量全てにおいて日本一という越前和紙は、越前市の今立地区で作られています。大変古くから作られており、1500年ほど前に紙祖神・川上御前が岡太川に現れ、紙漉きの技術を授けたという伝説が残っています。

奈良時代には写経の紙として、江戸時代には奉書紙として、また、福井藩や丸岡藩では藩札としても用いられてきました。明治元年(1868年)に発行された、日本初の政府紙幣である太政官札も越前和紙で作らています

明治以降は多くの著名な画家に使用され、造形作品の材料として、また、インテリア用品としても多く用いられています。

越前和紙の原料

繊維があるものは全て材料になり得る、という越前和紙ですが、主な原料は、

  • 楮(こうぞ)
  • 三椏(みつまた)
  • 雁皮(がんぴ)
  • 麻(あさ)
  • トロロアオイ
  • ノリウツギ

となります。

太くて強い繊維が特徴。栽培が簡単で毎年収穫が可能なため、さまざまな和紙の原料となっています。主に越前市と高知県・茨城県で栽培されています。

三椏

繊維は細くてやわらかいことが特徴。光沢のある和紙を造ることができます。手漉きの和紙にはわずかしか使われないが、印刷用紙として優れており、大蔵省(現在の財務省)発行の紙幣に用いられるなど用途はさまざま。主に中国・四国地方で栽培されています。

雁皮

こちらも繊維が細かいため、光沢の美しい薄い紙が造られます。虫に強いという特徴も持っており、

  • 保存を目的とした紙
  • 金箔などを打ちのばす箔打紙

などにも用いられています。ただし、栽培が難しいため、山野に自生しているものを原料としています。

古くから製紙材として用いられてきた製紙補助原料で、楮などと合わせて強い紙を作ります。また、海外産などさまざまな麻が用いられています。

トロロアオイ

紙をすく際の添加物として欠かせない植物です。潰した根から出る粘度のある液からゴミを取り除き、繊維と合わせると、繊維が絡み合うことなく均一に分散します。

ノリウツギ

樹皮に粘度を持っており、トロロアオイと同じように添加物として使用されます。トロロアオイを使う前から使用されていたと言われています。

ほかの和紙と何が違うのか

川上御前から紙漉き方法を伝授された越前では、日本で唯一、川上御前をお祀りする神社があります。毎年春と秋に行われるお祀りのほか、33年毎の「御開帳」や50年に一度の「中開帳」なども行われています。

色々な紙漉き方法

紙漉きの方法にも色々あり、多種多様な和紙を作り出しています。

特によく使われるのが

  • 流し漉き
  • 溜め漉き
  • 流し込み

の三つです。

流し漉き

平安時代、トロロアオイなどのねりが発見されたことで考案された日本独自の製紙方法です。紙をすく漉舟(すきふね)に原料を入れてかき混ぜ、漉簀(すきす)ですくって左右にゆすることを繰り返します。

漉簀
紙をすくために用いる用具のこと

溜め漉き

中国から伝わったもので、漉舟に原料を入れてかき混ぜ、それを金網ですくってゆする方法です。ねりは入れず、すく作業も一度きりです。

流し込み

模様のある金属製の枠に、色を付けた繊維を流し込む技法です。2つの紙を漉き合わせることもあります。

このほかにも金属の型にひっかける「引っかけ」や、漉いた紙の上に染色済みの紙料を落とす「落とし掛け」など、多くの技法があります。

商品紹介「ANiSIE 越前和紙(手漉き)白線流し」

習字の書にも使用できる白色和紙です。インテリアにもぴったりで、写真立てなどの小物に使っても良いのですが、障子やふすま、照明などにもおすすめ。明るい場所ではやわらかな光をとおしてくれます。

 

日本六古窯の一つ「越前焼」

越前焼の歴史

越前市の宮崎地区と織田地区で焼き物が作られ始めたのは平安時代末期。発見された古窯は200基以上あり、大変多くの窯があったことが分かっています。

日用的に使う水ガメや壷・すり鉢などが作られ、

  • 硬くて丈夫という特徴
  • 越前海岸が近いという立地条件

を持っていたことから、北海道から島根県まで、広く北前船で運ばれました。

しかし、江戸時代にほか地域の焼き物が広まったことなどにより越前焼の需要は落ち込み、明治・大正時代には廃業が相次ぎます。存続が危ぶまれた越前焼ですが、1948年(昭和23年)、「日本六古窯」の一つとして数えられるようになり、再び世に広まります。

1971年(昭和46年)には越前陶芸村が建設され窯元が増加。古来より作られていたもののほか、伝統をふまえた新たな越前焼も作られるようになりました。

19867年(昭和61)年には伝統工芸品の認定を、2017年(平成29年)には日本遺産認定を受けています。

越前焼の特徴

越前焼は釉薬を使わない焼き物です。渋みがありながら素朴な味わいがあり、温もりも感じられる肌触り。鉄分を多く含む土が使われるため、焼き上がりが赤褐色や赤黒くなるという特徴もありますが、明治時代以降は、さまざまな色付きの越前焼も登場しています。

耐火性があり、水漏れもしにくいため日常使いに最適で、水や酒・染料液の保管のほか、穀物保存にも用いられてきました。

商品紹介「ニッコー・国成窯手洗鉢」

屋外の立水栓用の手水鉢です。やわらかな白色の地に入ったライン、ゆるやかなデザインは和の雰囲気たっぷりですが、洋風の庭にもしっくりマッチするモダンさを持ち合わせています。

 

伝統工芸が多い福井県の中でも、全国的、世界的に知られる漆器・和紙・焼き物を作っている越前市。歴史と伝統をふまえ、新たな作品を作り続けているだけでなく、後継者の育成にも努めています。

どの工芸品も、芯となとなるものに揺らぎのないことが、時代を超えて愛される理由の一つではないでしょうか。