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茶葉の種類:収穫時期の違い
お茶は、収穫時期によって四つの種類に分類されます。お茶の樹は、芽を収穫してから二週間ほどで新しい芽が出ます。芽が出たら収穫を行うサイクルを繰り返していることにより、茶葉の品質に差が出るのです。
一番茶
「新茶」とも呼ばれる、新芽を収穫して作られる種類のお茶です。茶葉の甘みとさわやかな香りが特徴で、うま味成分であるテアニンを多く含んでいます。
なぜ一般的に一番茶が人気があり、大きく紹介されるかというと、もちろんその品質の高さであることは間違いないのですが、なぜ美味しく感じられるかというと、葉の中に多くの栄養分が詰まっているからだと考えられています。
前年の秋(後で載せている牧ノ原地域の場合は10月中旬以降)から茶葉の収穫がストップし、芽の成長が停止しますが、この期間にも栄養分は根や葉に蓄積されます。この栄養分が一番茶の新芽の中に多く行き渡るため、うま味成分も多く、おいしく感じられるというわけですね。
二番茶
一番茶を収穫してから約一月後に収穫した茶葉で作られる種類のお茶が二番茶です。一番茶より栄養分が減っているため風味は落ちますが、渋みを感じるカテキンの量は多くなっています。
一番茶に比べてなぜ味が劣るかというと、先ほど説明したように一番茶にすでに多くの栄養が行き渡ってしまったことと、徐々に夏に向かっていくにあたって気温が上がっていき、芽の成長速度が早まるからだと考えられています。成長速度が比較的早まることで、芽が一番茶のようにたくさんの栄養を蓄える時間がなくなってしまうわけですね。
三番茶
二番茶の収穫後、約一月後に収穫された茶葉を使用したものが三番茶です。二番茶よりさらに栄養分、風味が落ちます。
四・秋冬番茶
四・秋冬番茶に使用される茶葉は、三番茶を収穫してから約二ヵ月後に収穫されます。風味は落ちますが、血糖値を抑える効果があるとされるポリサッカライドを多く含んでいます。
それぞれの茶葉の収穫時期(静岡県の牧ノ原地帯)
このように、茶葉は収穫時期によって一番茶や二番茶といった種類で呼ばれますが、具体的な収穫時期は以下のようになっています。
茶期 | 収穫時期 |
---|---|
一番茶 | 4月25日~5月10日 |
二番茶 | 6月28日~7月10日 |
三番茶 | 7月25日~8月10日 |
四・秋冬番茶 | 10月上旬~10月中旬 |
緑茶に含まれる成分と効能
緑茶には健康に良い優れた成分が多く含まれています。カテキン、カフェイン、テアニン、ビタミンをはじめとする、緑茶成分と効能の一部を紹介します。
- カテキン:がん予防、抗酸化作用、抗菌作用、口臭予防、血中コレステロール低下作用、血圧上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用など
- カフェイン:覚醒作用、利尿作用、強心作用など
- テアニン:リラックス作用など
- ビタミン:抗酸化作用のあるビタミンCのほか、皮膚や粘膜の成長や維持を助けるビタミンBも含まれている
ほかにも抗菌作用のあるサポニン、虫歯予防効果のあるフッ素、血圧降下作用のあるγ-アミノ酪酸なども含んでおり、香りにもアロマ効果があります。
茶葉の種類:発酵度合いの違い
日本茶のほか、紅茶や青茶(ウーロン茶)など、世界中には多くの種類のお茶があります。それぞれ色や味・風味は異なりますが、原料となっているのは同じ茶の樹。つまり、元をたどると同じ茶葉なのです。
お茶は、収穫された茶葉を発酵、もみ、乾燥させることで完成となりますが、製茶作業で行われる発酵の度合いにより、お茶の種類が変わります。
不発酵茶(緑茶)
収穫した茶葉を蒸して発酵を止めてから、何度ももみ作業を繰り返して乾燥させたものです。
発酵茶(青茶:ウーロン茶)
茶葉に傷を付けるなどして発酵させてから、釜で炒り発酵を止めたものです。
完全発酵茶(紅茶)
収穫後、少し乾燥させた茶葉をもみ発酵させます。完全発酵後に乾燥させて完成します。
後発酵茶(プーアール茶)
乳酸菌などを使い発酵させたお茶です。茶葉を蒸して発酵を止め、菌を付けて発酵させますが、お茶の種類によりもみの作業が入ることもあります。
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日本三大茶の一つ「静岡茶」
静岡のお茶の歴史
静岡で茶が栽培されるようになったのは鎌倉時代。臨済宗の高僧、聖一国師(しょういちこくし)が静岡市に種をまいたことが起源とされています。その後、今川氏が駿河を支配した戦国時代には静岡で茶の栽培がされるようになり、茶どころとして広く知られるようになりました。
江戸時代に入ると、庶民が飲むものとは別に、年貢用の特別なお茶にはじまるさまざまな種類のお茶が作られていましたが、あるとき、徳川家康は静岡市の山間部を支配していた海野氏に碾茶(てんちゃ)作りを命じます。蒸し製緑茶の一種であり、抹茶の素となる碾茶は、高価な茶壺に収められて標高の高い大日峠のお茶壺屋敷で夏を越し、秋に駿府に運ばれる際にはお茶壺道中が行われていました。
幕府に献上される御用茶が中止となると、庶民が飲む茶が多く作られるようになりました。幕末には徳川慶喜と旧家臣が牧之原を開拓。苦心して開拓された茶畑は農民に引き継がれ、地元清水港から海外に向けて輸出されるようになります。
それにともない質の良いお茶を作る努力もなされ、製茶のみを担当する茶師も誕生しました。
明治末期には杉山彦三郎が「やぶきた」茶を発見。やぶきたは、やぶのなかで樹を発見したことから付けられました。
同一県内で異なる味を楽しめる
広い静岡県内では、多くの地区で茶作りが行われています。それぞれ収穫時期と茶葉の特徴があり、同一県内で異なる味を楽しめることも静岡茶の魅力です。静岡茶には多くの地域ブランドがありますが、その一部を紹介します。
- 川根:高級茶として知られる。黄金透明の美しい水色と豊かな香りが特徴
- 牧之原:通常の煎茶の二倍から三倍の時間をかけて蒸す「深蒸し茶」が主流。水色は濃く、香り豊か。渋みが少ない
- 天竜:香りが強く、さっぱりとした味わい。手摘みで収穫する茶園が多い
- 本山(ほんやま):香り豊かでお茶のうま味を感じられる。緑色が鮮やか。聖一国師が茶の種をまいたとされる場所
おいしい淹れ方
お茶の種類によっておいしい淹れ方は異なりますが、ポイントとなるのは温度です。
煎茶・深蒸し茶
- 手順1人数分の茶碗の8分目ほどまでお湯を入れる。一人あたりの湯量は、上級茶:60ml、並級茶:90ml
- 手順2お湯の温度は上級で70度、並級で90度
- 手順3急須に茶葉を入れる(5人で10gほどが目安)
- 手順4急須に茶碗の湯を注ぎ浸出させる(上級茶:約2分、並級茶:約1分、深むし茶:約30秒)
- 手順5濃淡が出ないよう、均等に茶碗に廻し注ぐ
玄米茶・ほうじ茶
- 手順1急須に茶葉を入れる(5人で15g)
- 手順2熱湯を急須に注ぐ
- 手順3浸出時間は約30秒
- 手順4茶碗に均等に廻し注ぐ
玉露
- 手順1急須にお湯を注ぐ
- 手順2お湯の温度は上級茶で50度、並級茶で60度
- 手順3茶碗の7分目まで急須の湯を注ぐ(約20ml)
- 手順4残った湯は捨てる
- 手順5急須に茶葉を入れる(3人で10g)
- 手順6急須に茶碗の湯を注ぎ浸出させる。浸出時間は約2分
- 手順7茶碗に均等に廻し注ぐ
通販で静岡茶を味わう
荒畑園 静岡茶・特選荒茶
おいしいお茶を生み出すため、こだわりの土からお茶作りを行っている荒畑園。牧之原台地で育った強い茶樹から良質な茶葉を収穫して作られているのが、荒畑園の自信作「特選荒茶」です。
茶葉は、極上荒茶を収穫した5日ほど後に、まだ芽の状態の芯とその下の3枚の葉を摘む「一芯三葉」で収穫されたもの。緑が鮮やかで香り高く、まろやかな味わいを楽しめます。
静岡県掛川市で生産される「掛川茶」
掛川茶とは
掛川茶の始まりは戦国時代。市内の永住寺改築にあたり、檀徒が京都方面から持ち帰った茶の種をまいたのが起源と言われています。
地質や地形を活かした茶作りが行われており、荒茶三大品評会で多くの賞を獲得するなど全国的に品質の高さが認められています
おすすめの製法「深蒸し茶」
掛川茶は、通常の煎茶の二倍から三倍の時間をかけて蒸す「深蒸し茶」で知られています。茶葉は、じっくり蒸すことで渋みが少なくまろやかな味わいに。色も鮮やかで香りも優れており、荒茶三大品評会において数々の賞を獲得。また、全国茶の品評会では9度の産地賞を受賞しています。
掛川茶を実際に飲むなら
長峰製茶・深蒸し茶 掛川茶
明治時代創業の長峰製茶。優れた技術を持つ茶師が自社工場で仕上げるお茶は、多くの受賞歴を持つことでも知られています。
「深蒸し茶 掛川茶」は、掛川産の茶葉のみで作られた深蒸し茶。色味が美しく渋みの少ないまろやかな味わいで、茶葉が細かいため、お湯に溶けない成分もしっかり摂取することができます。
茶葉の種類や静岡茶から学ぶお茶の世界、いかがでしたでしょうか。子どものころから口にしているお茶の世界は、知れば知るほど深く趣のあるものです。いつも飲んでいるお茶をさまざまな角度から見てみると、新たな発見があるかもしれませんね。