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泡盛とは
泡盛のルーツ
泡盛の製法が琉球に伝わったのは15世紀(室町時代中期)ごろ。当時、琉球は東南アジア諸国との交易が盛んだったことから、タイや中国など、ルーツとされる国は複数あります。
泡盛の歴史
「泡盛」の文字が記録されているのは、江戸時代の1671年(寛文11年)になります。琉球中山王(りゅうきゅうちゅうざんおう)が、泡盛酒を徳川幕府へ献上した時のことです。それ以前は「焼酎」と書かれていました。
正式な記録は残っていませんが、琉球では泡盛が15世紀末期にはすでに製造されていたと考えられています。薩摩・島津家の記録では、1575年(天正3年)、琉球から泡盛らしき酒が届いたとの記述があります。
江戸時代には薩摩家を通して将軍や諸大名に献上され、薬としても用いられていました。
琉球での泡盛作り
15世紀末期には製造されていたとされる琉球の泡盛ですが、献上品やお客をもてなす際に用いられたこともあり、18世紀~19世紀には琉球王府管轄の元で作られるようになります。
泡盛の製造が許可されたのは首里の三箇(赤田・崎山・鳥堀)のみ。40人ほどの酒造所で泡盛は作られ、原料は王府から支給、機器も借り受けという形で使用されていました。
これは琉球王国が終わりを告げる明治時代(1868年~1912年)になるまで続けられ、泡盛は密造や密売という形でしか庶民の口に入ることはありませんでした。そのため19世紀半ばごろ、王府は、集落の大きさに合わせた酒造を許す規制緩和の処置を出すことになりました。
名前の由来
名前の由来として知られているのが、蒸留時、導管からたれてくる泡盛が受壺に落ちる際、泡が盛り上がることから来ているというものです。
ほかにも、アワラモチという献上品を指す言葉から来ている、酒の意味を持つサンスクリット語かか来ているなど、諸説あります。
泡盛の原料は?タイ米が使われている?
泡盛の4つの特徴
麹は黒麹菌を使用
古来より日本の酒作りには黄麹菌(きこうじきん)が使われていますが、泡盛には黒麹菌を使います。黒麹菌は雑菌に強いという特徴があり、高温多湿の琉球諸島での酒造に適している麹菌と言えます。
泡盛に使われているものが黒麹菌と判明したのは明治時代になってからのことです。黒麹菌は琉球諸島に古くから存在しており、泡盛が作られる前から黒麹菌で酒造が行われていました。
原料にはタイ米を使用
泡盛には、主にタイ米が使われます。タイ米は日本米に比べて硬く粘りが少ないため黒麹菌が伸ばしやすい、アルコールの収穫量が多い、温度管理がしやすいという特徴を持っています。
全麹仕込み
黒麹でタイ米を米麹にした後、水と酵母を加えてもろみを作成します。この方法は「全麹仕込み」と言われ、原料の味わいや風味が出やすい方法です。
焼酎などは二段階で仕込まれることがほとんどで、麹菌に水と酵母を加える一次仕込み後に発酵、続いて、米、麦、芋などを加えて二次仕込みと発酵が行われます。泡盛の発酵には2週間ほど時間がかけられます。
単式蒸留
蒸留方法には「単式蒸留」と「連続式蒸留」という2つの方法があります。単式蒸留は、発酵させたもろみを熱し、アルコールを含んだ蒸気を冷やすもの。連続式蒸留は、一度蒸留した液体を何度も蒸留させる方法です。泡盛を作る際には、原料の風味が残りやすい単式蒸留の方法が採られます。
泡盛の原料
泡盛の原料は米のみです。大正時代ごろまでは米に粟を混ぜて作られていましたが、1924年(大正13年)に発行された書籍には、原料は米だけと書かれています。米と黒麹菌が、泡盛の泡盛たるゆえんと言えるでしょう。
泡盛と焼酎の違い
泡盛は米と黒麹菌で作られますが、焼酎は米、麦、芋、黒糖などさまざまな原料が使われ、原料ごとに名称も異なります。焼酎が日本で作られたのは16世紀ごろ。戦国時代である1559年(永禄2年)の記述が最古のものとなっています。
白麹菌で発酵したもろみは、二次仕込みの後に蒸留されます。単式上流方式のものは焼酎乙類、連続式蒸留方式の場合は焼酎甲種となります。
地域ブランド「琉球泡盛」
琉球泡盛とは
瓶のラベルにはさまざまな記載がありますが、そこに「琉球泡盛」と表示されているものは、泡盛の本場である沖縄で作られたものです。「本場泡盛」と表示があるものも、琉球泡盛と同様に沖縄の泡盛です。
沖縄以外でも泡盛を作ることが可能ということから沖縄産泡盛にこのような表示がされるようになりましたが、単に生産地の問題だけではなく、法律も関わっています。
琉球泡盛の由来
沖縄が本土に復帰した1972年(昭和47年)、泡盛は焼酎乙種として分類されました。しかし、古くから「泡盛」の名で親しまれていたため、例外としてその名が使用できるようになりました。
沖縄の酒造組合が働きかけ、沖縄以外で作られた泡盛と区別するために「本場泡盛」の名を使用できるようしたのもこの年です。「琉球泡盛」の表示が始まったのは、2004年(平成16年)。それまで沖縄産の泡盛は本場泡盛の表記で販売されていました。
おすすめの泡盛
有限会社比嘉酒造 残波 25度 残波プレミアム 30度
香りと風味が豊かで、水のような美しさを持つ泡盛「残波」。世界各地の優れた味を表彰する国際優秀味覚コンクール(iTQi)で、4年連続三ツ星受賞を果たすという快挙を成し遂げた泡盛です。まろやかでアルコール度が高くても飲みやすい、青いボトルが美しい、とファンが多い商品です。
「残波プレミアム」は、厳選された「残波」の古酒を60%ブレンドしたもの。より深い味わいと風味を楽しめる泡盛です。
泡盛を使った調味料「コーレーグース」とは
コーレーグースとは
沖縄の方言で唐辛子という意味のコーレーグースは、島とうがらしを泡盛に漬け込んだ調味料です。「コーレーグスー」とも呼ばれます。
島とうがらしの辛さと泡盛の刺激が合わさってかなり辛味がありますが、沖縄そばには欠かせないものとなっています。
正確な起源は不明ですが、移民としてハワイに移り住んだ沖縄県民が帰郷した際に伝わった、チリペッパーウォーターをヒントにした、という説があります。
コーレーグースの作り方
洗って陰干しした島とうがらしを泡盛に漬けて作ります。自宅で作る場合は、風味と辛味を見ながら、1週間~1ヵ月と好みの漬け時間で作ることができます。
泡盛の古酒を使うと風味が増す、島とうがらしや泡盛は少なくなったら足す、などの多くのコツがあります。
実際に食べてみよう
沖縄そばに欠かせないコーレーグースは、ほかにもさまざまな料理で楽しむことができます。野菜炒めやアジの南蛮漬け、味噌汁やさしみ醤油にたらしてもおいしくいただけます。うどんやそば、パスタにかけるという方も。和洋を問わず辛味を味わいたい時におすすめです。
サン食品 小ぶりの島唐辛子を泡盛に漬け込んだ沖縄産調味料「こーれーぐす」
コーレーグースが欠かせない沖縄そばの生産量が日本一、というサン食品のコーレーグースです。沖縄そばはもちろん、万能調味料としても人気が高く、リピーターも多数。島とうがらしがたっぷり入った120ml入の瓶のほか、島とうがらし抜きの1リットル詰め替え用も販売されています。
沖縄県民に愛される泡盛、いかがでしたでしょうか。泡盛は寝かせるほどに味と香りが甘くまろやかになると言われ、3年以上貯蔵されたものは古酒(クース)と呼ばれます。時を経ていない泡盛と飲み比べ、楽しんでみるのもおすすめです。