食器津軽びいどろの魅力と美しさを歴史から紐解く!

ハンドメイドで作られる津軽びいどろの受け継がれる技術と伝統

本州北端の地、青森県津軽地方の地域ブランドとして知られる津軽びいどろは、熟練の技と職人の自由な発想から生み出された個性的なデザインが魅力的なガラス工芸です。四季の色彩をガラスの中に取り入れたその美しさは、津軽びいどろの歴史とも関わりがありました。

津軽びいどろの歴史

ルーツは漁業道具の浮玉

津軽びいどろは、青森県で生産されるガラスの工芸品で、そのルーツは定置網の設置や漁船の係留に使用されていた浮玉(うきだま)という漁業道具です。

青森県青森市にある、1949年創業の北洋硝子株式会社が創業当時から製造している浮玉は、ガラス工芸の成形技法である「吹きガラス」のなかでも紀元前から受け継がれてきた「宙吹き」と呼ばれる技法を採用し、頑丈で高い品質を実現、国内トップの生産高を誇るようになりました。

とはいえ、ご存知のとおり浮玉はそのほとんどがプラスチック製です。プラスチック製の浮玉が主流になっていくにしたがって、北洋硝子のガラス製の浮玉の販売量は急激に落ちていきます。そこで、これまでの技術を新商品に活かせないかという検討の中で、グラスなどの日用品にターゲットが当たったのです。

そして、1977年に津軽びいどろが完成することになります。

色彩がより豊富に

津軽びいどろは当初、青森県津軽半島の西部に位置する、南北に30キロメートルにも及ぶ長い砂浜が続く七里長浜からすくい上げられた砂をガラスの原料に加えて製造されていました。

その後、職人たちは技術開発に注力し、色彩美を感じる色ガラスの調合やより高い技術を要する技法を次々と習得。ついに津軽びいどろは、青森の雄大な自然を彷彿とさせるハンドメイドのガラス製品として青森県の伝統工芸品に指定されます。

津軽びいどろは、技術レベルの高いガラス工芸品として花器や盃・食器など多くのテーブルウェアに取り入れられるようになりました。その人気は日本だけにとどまらず、海外にも多くのファンがいるほどです。

津軽びいどろの鮮やかな色彩は偶然の産物?
元々、ガラスの色は無色透明というのが一般的にも常識でしたが、偶然にもある職人が七里長浜の砂をガラスの原料にしてみたのが、津軽びいどろの鮮やかな色彩の始まりと考えられています。ここから青森の四季を映し出す色合いを生み出すための努力が重ねられ、今ではその数なんと100色以上にもなっているのです。

 

津軽びいどろの魅力

日本を代表するハンドメイドガラス

日本を代表するハンドメイドガラスとして名高い津軽びいどろは、「日本の豊かな四季を感じるハンドメイドガラス」をコンセプトに作られています。そのため、作品の一つひとつにガラスの涼しげなイメージだけではなく、ハンドメイドならではの温かみを感じることができるのです。

また、津軽びいどろは色合いが大きな特徴で、四季の移ろいが感じられる彩色を実にうまく取り入れています。

春は淡い桜色が広がる景色、夏は東北三大夏祭りの一つ「ねぶた祭」をイメージさせる色彩豊かで鮮やかな彩り、秋は青森を代表するりんごの収穫時期に合わせた色合いや紅葉の景色、そして、冬は東北の厳しくも美しい一面に雪に覆われた表情と、津軽びいどろを通して季節を感じることができるのです。

微妙な色の違いや四季彩色の演出は、幾千ものこだわりと高い技術レベルの開発によって実現されています。その技術は色彩だけでなく自由で個性的なデザインを生み出し、ハンドメイドならではのやわらかく温かみのある表情を映し出しています。

受け継がれる伝統の技法

津軽びいどろは、紀元前一世紀ごろから受け継がれてきた宙吹きによって製造されています。1500度にもなる原料を溶解し、灼熱の中でどろどろに溶けた真っ赤なガラスをさおに巻き取り、息を吹き込んで膨らませる方法です。

さおを上下左右に振りながら形を整えていき、長年にわたって受け継がれてきた熟練の技術を持つ職人により命が吹き込まれていくのです。

 

津軽びいどろの色彩美しいグラスや酒器

津軽びいどろの色彩美しいグラスや酒器

色とりどりの12色のグラス

「津軽びいどろ 12色のグラス」は、津軽びいどろの美しい色合いがグラスの中央部から下にかけて色鉛筆のようなタッチで描かれた作品です。

日本の美しい色合いである「和の伝統色」をイメージした12色展開で、それぞれの色を組み合わせることにより日本を表現しています。また、中身が入ることで上部の透明部分とのコントラストが生まれ、より輝きを増します。

高さ、口径ともに90㎜ほどで、手になじみやすいサイズが人気の逸品です。

季節の移り変わりを楽しむ酒器(盃コレクション)

「盃コレクション」は、色使いにより12ヵ月の季節の移り変わりを楽しむことができる作品です。春雷・花見・新緑・梅雨晴れ、といった具合に季節行事や暦をテーマにした作品名が名付けられており、それぞれの季節の色が見事に表現されています。

りんごの表情を繊細に表現したオイルランプ

「オイルランプ リンゴ」は、津軽びいどろの熟練した職人によって作られる温かみのあふれる作品です。

色は赤リンゴと青リンゴをイメージした二種類で、丸みを帯びた形がユニークで可愛く、りんごの表情を繊細に表現しています。

オイルランプのきらめきとほのかな揺らぎが、津軽びいどろの持つ粒状の色ガラスの透明感を引き立てています。

春の優しさにつつまれる冷茶グラス

「花紀行 桜流し」は、春をテーマに水面を流れる桜の花びらがデザインされたグラスです。グラスのピンク色は桜をイメージさせる淡くほんのりとしたやわらかい色彩で、春の季節感を演出しています。

また、桜名所百選の一つ「弘前城の桜」をイメージして、ガラスの表面には繊細な桜模様が砂掘りされ、日本茶を注ぐと美しい緑色と桜模様が春のふんわりとした優しさを運び込んでくれます。

ハンドメイドによる微妙な表情の違いを楽しむことができる冷茶グラスです。

夏の風物詩「ねぶた祭り」の鮮やかさを表現するタンブラー

「NEBUTA タンブラー」は、東北三大夏祭りの一つで青森の夏の風物詩として親しまれている「ねぶた祭り」の鮮やかさが色ガラスで表現された作品です。

タンブラーの下半分に彩られた8色の彩りはねぶた祭の楽しさや華やかさを表しており、ハンドメイドならではの揺らぎによってガラスの中に和のぬくもりを感じることができます。

ガラスが持つ透明感が8色もの多彩な色使いをうまく調和させている逸品です。

秋の燃え上がるような紅葉をイメージした花器

「十和田 紅葉」は、青森県十和田市周辺の燃え上がるように色づいた紅葉をイメージして作られた花器です。

紅葉の色彩のなかでも、目が覚めるような鮮やかな黄色と朱色が絶妙に組み合わさった色使いで、秋の景色の一瞬を切り取ったように感じられます。

黄色やオレンジの色ガラスを幾重にも重ねる、熟練の技術があってこその作品と言えるでしょう。

厳しい冬の八甲田山の景色をモチーフにした盃

「八甲田 ザラメ雪 盃」は、一面雪で覆われる八甲田山の厳しい冬の景色を感じることができるシリーズの一つ。一面真っ白な雪の世界と、澄み渡る冬の青い空のコントラストをグラスの色彩に取り入れて表現しています。

盃の表面にはザラメ雪のような質感がありますが、これはガラスの表面に透明なガラスで凹凸を付けているのです。また、微妙なガラスの溶かし加減により作品一つひとつが違う表情をしています。

 

浮玉という実用的な漁業道具がルーツの津軽びいどろには、熟練の職人による繊細で手作りならではの温かみを感じることができます。

ガラスの質感が持つ「涼」のイメージに季節の色彩を施すことで、四季を通してグラスのある暮らしを楽しむことができる津軽びいどろ。その魅力をぜひ堪能してみてください。