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若者に急増中!カフェイン中毒とは
深刻化するカフェイン中毒
2015年、九州で急性カフェイン中毒による死者が出ました。死亡したのは20代の男性で、深夜勤務に就いていた際にエナジードリンクとカフェイン製剤を同時に飲み過ぎたことが原因でした。
この事故を受けて日本中毒学会が調査したところ、2011〜2015年度の5年間に、カフェインの急性中毒で救急搬送されたのは少なくとも101人にのぼり、7人が心肺停止、そのうち3人が死亡していたことが分かりました。救急搬送された101人の平均年齢は25歳と若い世代が中心であり、18歳以下も16人いました。
また、NHKによると、2012〜2016の5年間に東京23区内において死因不明で亡くなった人のうち、36人から高濃度のカフェインが検出されていました。
若者世代を中心にカフェインの摂取過多が広がっており、カフェイン中毒の危険度は増しているものとみられます。
カフェインの効果
カフェインには興奮作用があり、眠気覚ましや活力向上に効果があります。
カフェインが身体にもたらす効果は次のようなものです。
- 脳:疲れを感じにくくなります。これは、疲労感を伝えるアデノシンという神経伝達が占有する受容体(レセプター)をカフェインがブロックするためです。エネルギーに満ちた気持ちになり、記憶力も高まります。
- 腕:上半身と持久力を強化します。
- 足:走り続けた際の、限界に達する時間を延ばすことができます。ただし、この効果を得るためには体重1kg当たり3〜6mgのカフェインを摂取する必要があり、相当量を摂取しなければなりません。
このようにカフェインには身体の機能を高める効果がありますが、短時間に多量に摂取すると吐き気や心拍数の増加、興奮、震え、下痢、めまいといった中毒症状が現れます。
また、カフェインには利尿作用があり、取り過ぎると脱水症状を引き起こす恐れもあります。
カフェインが含まれるものとその量
カフェインが含まれているのは、コーヒー豆、茶葉、カカオ豆、ガラナなどです。
食品添加物としても用いられており、抽出されたカフェインがコーラやエナジードリンク、眠気防止薬などに使われています。
どのようなものにどのくらいのカフェインが含まれているのかを見てみましょう。
- レギュラーコーヒー:約60mg(100ml当たり)
- ピュアココア:約10mg(粉末5gを溶かす)
- 玉露:約160mg(粉末20gを溶かす)
- 煎茶:約20mg(粉末20gを溶かす)
- 紅茶:約30mg(粉末20gを溶かす)
- ウーロン茶:約20mg(粉末20gを溶かす)
- コーラ:約10mg(100ml当たり)
- 高カカオチョコレート:68〜120mg(100g当たり)
- カフェインサプリメント:200〜600mg/日(輸入品)
- 燃焼系サプリメント:100mg/日(国産品)
- 缶コーヒー:100〜150mg/本(ショート缶)
- エナジードリンク:22〜142mg/本
- 眠気予防薬(錠剤):100〜200mg/回、300〜500mg/日
- 解熱鎮痛薬:80mg/回、240mg/日
コーヒーやエナジードリンクのほかにも、お茶やチョコレートにも意外と多くの量が含まれていることが分かります。
どのくらいなら安全なのか
では、どのくらいのカフェインの摂取量なら安全なのでしょうか。
日本ではその基準が決められていません(2017年11月時点)が、海外では複数の国において、カフェインの安全な摂取量の基準が定められています。ここでは一つの例として、欧州食品安全機関(EFSA)が2015年5月に発表した基準を参考にします。
この基準では、体重ごとに摂取しても安全と考えられる量が示されています。
- 成人(1回当たり):1回に3mg/kgまで(体重40kgなら120mgまで/60kgなら180mgまで/80kgなら240mgまで)
- 成人(1日当たり):1日に5.7mg/kgまで(体重40kgなら228mgまで/60kgなら342mgまで/80kgなら456mgまで)
- 小児〜青年:1日に3mg/kgまで(体重40kgなら120mgまで/60kgなら180mgまで/80kgなら240mgまで)
- 妊婦および授乳婦:1日200mgまで
これを見ると、ものによっては1回摂取することで安全とされる量を超えてしまうケースがあることが分かります。
例えば、体重40kgの青年が142mgのカフェインが含まれるエナジードリンクを飲んだら、それだけで安全な量(上の例では120mg)をオーバーしてしまうということです。
同時にカフェインが入ったものを複数摂取することで、中毒症状が現れる量に達してしまう恐れもあります。
中毒症状がどのくらいのカフェイン量で出るのかは人によって差があるため、一律には分かりません。ただ、一般的には一度に1g以上を摂取すると中毒症状が出るとされています。
また、上に示した安全量はあくまでも基準値であって、全ての人に当てはまるわけではありません。
カフェインの感受性は人によって異なり、上の数値よりも少ない量であるにもかかわわらず、めまいや頭痛、吐き気などの異常を感じる場合もあります。そのような場合は、カフェインの摂取量をより少なくする必要があります。
ある研究では、日本人はカフェインへの耐性が低めであることが示唆されています。およそ4人に1人は、カフェインを150mg摂取した後に不安感が高まるといった影響を及ぼす遺伝子を持っているとの研究結果もあります。
また、カフェインによるアレルギー患者も報告されています。これは非常にまれなケースですが、アレルギー反応が生じる可能性もあることは知っておく必要があります。
カフェインはどうやって作られる?
カフェインはその由来により、天然と化学合成の2種類に分けられます。
天然のカフェインはコーヒー豆からカフェイン成分を抽出します。高い所からコーヒー豆を落下させ、高圧力の二酸化炭素を用いてカフェインを抽出するという方法で作られています。
一方、化学合成のカフェインは尿素から作られます。尿素から化学変化によって合成カフェインが生まれるのですが、そのほとんどは中国で生産されています。
カフェイン中毒の原因と症状
カフェイン中毒には急性と慢性の2種類があります。それぞれの原因と症状を見てみましょう。
急性カフェイン中毒
原因
カフェインを短時間に多量に摂取することで起きるのが急性中毒です。上記のように、カフェインの安全量を超えて摂取した場合に、カフェイン自体の持つ毒性によって神経が影響を受けて症状が現れます。
症状
症状は精神および身体のそれぞれに現れます。
- 精神症状:不安感、焦燥感、幻覚、幻聴、パニック発作など
- 身体症状:めまい、吐き気、嘔吐、動悸、不整脈、頻尿など
慢性カフェイン中毒
原因
カフェインを少量であっても継続的に摂取することで生じます。
症状
頭痛や胃痛などの症状が現れますが、中毒であるというはっきりとした症状ではなく、分かりづらい場合が多くあります。
カフェインの摂取を止められないという依存傾向が見られるときが慢性中毒である可能性が高いとされています。
カフェイン中毒にならないために/なってしまったときに
予防方法
カフェイン中毒になるのを防ぐためには、自分が口にするもののカフェイン量を把握することが重要です。
特にコーヒーやエナジードリンクなどを間隔を空けずに飲む時は、カフェインの含有量を確認するとともに、めまいや動悸などの異常を感じたらすぐに飲用を中止するようにしましょう。
カフェインの急性中毒で一時深刻な状態に陥った人のなかには、明らかに中毒症状が現れていたにもかかわらず、それがカフェイン中毒であるとは知らずにカフェインを多量に含むものを飲み続けていたという事例もあります。
異常を感じたら、即座に対処することがあなたの命を守ります。
なお、カフェインの血中濃度が半分以下に低下するまでにかかる時間(半減期)は4〜6時間とされています。一回の量は安全でも、短時間で次々とカフェインを摂取すると安全量を超えることがあります。
治療方法
急性中毒の場合
カフェイン中毒の可能性を感じたら、まずはカフェインを身体から抜くことが大事です。一番の方法は休養して身体を休めること。カフェイン中毒の症状を和らげるような薬は存在しないため、新たなカフェインの摂取を避けることになります。
ただし、幻覚や幻聴を感じるような場合は重度の急性中毒とされるため、すぐに病院へ行き、医師の診察を受けましょう。
慢性中毒の場合
慢性中毒の場合も対処方法は急性中毒の場合と同じで、カフェインを身体から抜き、新たな摂取を控えることになります。
ただ、慢性の場合にはカフェイン中毒であると気付きにくい場合も多いでしょう。
しばらくコーヒーを飲まないでいて、イライラするなど心身の変調が生じる場合は、慢性中毒になっている可能性があります。
カフェインを摂取し続けると、身体が慣れてより多くのカフェインを欲するようになります。その場合は急性中毒につながる恐れもあるため、深刻化しないうちに改善する必要があります。
カフェインを抑えたコーヒー
コーヒーは飲みたいけれど、カフェインの摂取は抑えたい。そのような時に役立つのがカフェインレスコーヒーです。ひとくちにカフェインレスコーヒーと言われるものには、細かく分けて以下の3つがあります。
デカフェ
カフェインが0ではなく、ごくわずかに含まれている(欧州基準では0.1%以下)。カフェインを含むものからカフェインを除去したもの。
カフェインレス
カフェインが0ではなく、少し含まれている。
ノンカフェイン/カフェインフリー
カフェインが全く含まれていない。
カフェインを全く摂らないようにするためには、ノンカフェインまたはカフェインフリーと表記されたものを選びましょう。
カフェインの危険性についてはあまり認知されていませんが、エナジードリンクや眠気防止薬を多用することは、急性中毒を引き起こして死に至る恐れもあるのです。
カフェインの効能と自分の安全量を知って、正しく用いましょう。