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大気汚染とは
「大気汚染」とは、大気中の微粒子や気体成分が増加して人の健康や環境に悪影響をもたらすことです。1960年代から始まった高度成長にともない、日本各地に大きな工場や工業地帯が次々と建設されました。その結果、工場から排出されるばい煙(煙)や粉塵、物流に使用する輸送車(ディーゼル車)の排気ガスにより、大気汚染も発生しました。
1980年代になって「バブル」が始まると、国民が豊かな生活を送るようになってマイカーを所有する家庭も増え、工業地帯周辺の地域や首都圏を中心として大気汚染に拍車がかかりました。
大気汚染物質の種類と問題点
大気汚染物質の発生源には大きく分けて、
- 自然発生源:火山の噴火などにより排出されるもの
- 固定発生源:工場や事業所から排出されるもの
- 移動発生源:自動車の排気ガスなど、人間が生活するうえで発生するもの
がありますが、人間の健康に最も害を及ぼすものは工場などから排出される固定発生源です。大気中に排出される汚染物質には、気体のほかに大気中に浮遊するほど微細な固形物質(砂や土、粉塵、液体)があります。
今回は、特に私たちの身近で発生している汚染物質と、その問題点を見ていきたいと思います。
二酸化炭素(炭酸ガス)
- 特徴:無色・無臭の気体。弱酸性で水に溶けやすく空気よりも重い。植物の光合成により分解される
- 発生理由:火山の噴火や生物の呼吸、石油や石炭などの燃焼により大気中へ排出される
- 問題と影響:赤外線を吸収するため、温室ガス効果(大気中に熱をこもらせてしまう効果)がある。この二酸化炭素が増加すると、地球の温暖化や環境・生態系に大きな影響を与えるとされる(暖冬、流氷が溶け出すなど)
光化学オキシダイト(光化学スモッグ)
- 特徴:紫外線が強く、風が弱い真夏に多く発生する
- 発生理由:工場や自動車から排出される窒素酸化物、揮発性有機化合物(炭化水素類)が紫外線を吸収すると化学反応を起こし、光化学オキシダントが生成される
- 問題と影響:大気中の光化学オキシダントが拡散されず高濃度になると、人間の粘膜(気管支や目)を刺激し目が痛くなったり、呼吸器に被害を及ぼし息苦しくなったりする
粒子状物質(PM2.5、PM10など)
- 特徴:大気中に浮遊するごく微細な固体の物質
- 発生理由:工場や自動車などから排出される人為的発生源と、細かい土壌粒子が強風により地面から舞い上げられる自然発生源の2つがある
- 問題と影響:長期間にわたり吸い続けると肺や気管支に蓄積されていくため、喘息などの呼吸器系疾患、心疾患の原因となる
二酸化硫黄
- 特徴:水に溶けると脱色作用を持ち、漂白剤としての用途もある。酸化したもの(三酸化硫黄)が水に溶けると硫酸となる
- 発生理由:化石燃料(石油、石炭など)が燃焼することにより発生する。また、火山の噴火によっても多く発生する
- 問題と影響:吸入することにより呼吸器が刺激され、呼吸器系疾患の原因となる。四日市喘息の原因ともなった。目に付着すると、目の疾患の原因にもなる
二酸化窒素
- 特徴:赤褐色の気体。水と反応して硝酸、亜硝酸になる。薬品やロケットの推進剤等に用いられる
- 発生理由:工場や自動車の排気ガスとして一酸化窒素が生成され、これが空気中で酸化することにより発生する。また、薬品製造等による副生成物としても発生
- 問題と影響:吸入することで呼吸器を刺激し、呼吸器系疾患の原因となる
一酸化炭素
- 特徴:無色・無臭の気体。酸素を吸収し二酸化炭素となって、酸素を減少させる
- 発生理由:有機物が酸素濃度の低い状態で燃焼し、不完全燃焼した際に発生する
- 問題と影響:血液中のヘモグロビンと結び付き、体内に一酸化炭素を循環させてしまうことで、一酸化炭素中毒や呼吸困難になる危険性がある
大気汚染の現状と解決策
1960年代から始まった急激な高度成長の影響により、工業地帯がある地域では大気汚染や環境汚染が進み、人体に影響を及ぼす公害が顕著になり、深刻な社会問題となりました。
この深刻な問題を改善するために、環境省は1968年に「大気汚染防止法」を制定し、工場や事業所に対して大気汚染物質の排出制限や立ち入り検査、汚染物質の測定の義務化を実施しました。
その結果、二酸化硫黄を含む硫黄酸化物、一酸化炭素による大気汚染は大幅に改善されました。排気ガスの規制により二酸化窒素を含む窒素酸化物も減少傾向にありますが、光化学オキシダイトの濃度は今でもあまり改善されていません。
大気汚染を防ぐために私たちにできること
火力発電による大気汚染物質の排出は、私たちのちょっとした心掛けで減らすことができます。
- 外出する時や日中は照明のスイッチを切る
- 電球をLEDに交換する
- 電化製品の手入れをこまめに行い、効率よくしておく
- 使っていない電化製品のスイッチは必ず切る
- 洗い物をする時や洗面の時に水を出しっぱなしにしない
- ゴミの分別をしっかり行い、資源ゴミはリサイクルに出す
- 冷蔵庫やオーブンの開閉の回数を減らす
- 洗濯物、洗い物はできるだけまとめる
- 移動する際は、自家用車ではなく公共交通機関を利用する
- 輸送車の移動を減らすため、できる限り地元の食材を購入する
- エアコンや給湯器の温度をマメに調整する
- 料理の際は、コンロの余熱とレンジを上手に利用する
このように、大気汚染物質を減らすためにできることは意外と多く存在しています。とても小さなことに思えるかもしれませんが、一人でも多くの人がほんの少し省エネを意識するだけで、空気が浄化されていくのです。