この記事の目次
品質マネジメントシステムとは
「組織が方針・目標を定め、目標を実現するための責任・権限を明確にし、製品実現のための計画をたて、そのための環境を整え、製品品質の監視・測定を行い、レビューによって継続的なパフォーマンス改善ができている」
このことを第三者により認証してもらうシステムです。
ISO9000規格について
ISO9000規格は、ISO(国際標準化機構)が定めた「品質マネジメントシステム」の規格です。
ISO(国際標準化機構)とは
以前は各国独自の規格によってものづくりが行われていた時代がありました。しかし、国際間の取引が増えてくるにしたがい各国の規格の違いが貿易上の障壁となってきます。
これを解決する手段として1947年に規格統一のための国際協力機関「ISO(International Organization for Standardization)」がロンドンに組織されました。現在の本部はスイスのジュネーブです。
みなさんが普段使っている「メートル」や「キログラム」、天気予報で耳にする「ヘクトパスカル」などのSI単位もISOが標準化した「規格」です(ISO1000。今はISO80000の一部)。
「規格」は長さや重さを統一するためのものですが、これがネジなどの形状・寸法(ISO724など)に適用され、さらに「組織」にも適用されるようになったのです(ISO9000・ISO14000など)。
ISO9000規格とは
ISOでは、単位や製品の形状・寸法などについての規格を多く発行しています。しかし、ISO9000は組織のあり方である「マネジメントシステム」についての規格です。このマネジメントシステムに関する規格はISO9000以外にも下記の通り多くあります。
- ISO9000:品質マネジメントシステム
- ISO14000:環境マネジメントシステム
- ISO22000:食品安全マネジメントシステム
- ISO27000:情報セキュリティマネジメントシステム
- ISO39000:道路交通安全マネジメントシステム
- ISO18000:労働安全衛生マネジメントシステム
ISO9000の歴史
第二次世界大戦後、NATO軍の購買部門の要請により1979年にアメリカで「ANSI/ASQCZ1-15」、イギリスで「BS5750」が品質システム規格として制定されました。
その後、「購入者と供給者の二者間の信頼関係確保」というBS5750基本的な考え方を出発点としてISO規格発行の議論が進められ、1987年に品質保証の国際規格としてISO9000シリーズが発行されます。
さらに、1994年には第三者審査の考え方を取り入れたISO9000シリーズの改訂版が発行され、第三者審査による認証登録を行うシステムとして広がっていきます。
2000年の改訂では、ISO14000のPDCA構造に類似させた構造へと変更がなされました。この頃からISO9000は、「品質システム」から「品質マネジメントシステム」へと変わっていくのです。
2015年の改訂では、各マネジメントシステム要求事項規格の整合性がさらに高まり、「共通構造」「共通テキスト」「共通用語及び定義」が採用されました。
「ISO9000シリーズ」
ISO9000シリーズは、組織が提供する製品やサービスの品質に的を絞って構築するマネジメントシステムの規格です。
この規格は、「組織が方針や目標を決め、それを達成するために顧客を含む利害関係者のニーズ及び期待を把握し、経営資源を適切に用いて、継続的にパフォーマンスを改善するための仕組みを持っている」ことを第三者が認証するシステムになっています。
ISO9000シリーズとは
ISO9000シリーズは、9000番台を中心とする以下のISO規格で構成されています。
- ISO9000:基本及び用語
- ISO9001:要求事項
- ISO9004:持続可能な成功のためのマネジメントに関する指針
- ISO10005:品質計画書の指針
- ISO10006:プロジェクトにおける品質マネジメント
- ISO10007:構成管理の指針
- ISO10018:マネジメントシステムにおける人々の参画及び力量
- ISO10019:コンサルタントの選定及びそのサービス利用のための指針
- ISO19011:監査のための指針
ISO9000シリーズの特徴
品質マネジメントの特徴は以下に示す8原則にまとめられます。
顧客重視
顧客のニーズをよく理解し、顧客の期待を越えるように努力すること
リーダーシップ
リーダーが組織の目標をメンバーに理解させ、人びとが参画できる環境をつくること
人びとの参画
人々の能力や知識を有効活用するため、開かれた組織を構築すること
プロセスアプローチ
組織へのインプットをアウトプットに変換する活動をプロセスに分解し、それを管理する、いわゆるP(Plan)D(Do)C(Check)A(Action)サイクルのこと
マネジメントへのシステムアプローチ
相互に関連するプロセスを一つのシステムとして運営管理することにより、組織の目標を達成できるようにすること
継続的改善
常により良いパフォーマンスを求め続けること
意思決定への事実に基づくアプローチ
データ及び情報分析に基づいて意思決定をすること
供給者との互恵関係
供給者からの部品や材料が品質に影響することから、互恵関係によって両者の能力を高めること
ISO9000の登録審査について
ISO9000に実効性を担保するための登録審査制度は、1994年の改定でその要素が組み入れられたものですが、この第三者審査による認証登録の有効性について疑問視する向きもあります。
また、企業秘密保持の観点から、組織の事業範囲のうち一部を認証範囲外としたいケースもあります。しかし、認証範囲とシステムの適用範囲が必ずしも一致している必要はありません。
ISO9000品質マネジメントシステム審査員とは
ISO9000には、品質マネジメントシステムの客観性を担保するために審査員という制度があります。
審査員は審査員養成コース(審査員教育を行う許可を受けた機関の審査員教育)を受け、試験に合格し、さらに品質マネジメントシステム審査員登録機関(日本ではJRCAとIRCA)の登録審査をパスする必要があります。
審査員は、その実績により「審査員補」「審査員」「主任審査員」に分けられています。組織の活動が継続的なパフォーマンス改善にいたる道筋上にあるかどうかを検出し、規格要求事項に結び付けてコメントし、組織の改善にスピードとパワーを与えるための審査を行います。
メリットやデメリット
ISO9000の客観性を持った第三者による審査という制度は、システム構築初期には一定の成果を得られるものの、その後は停滞気味になってしまう組織が多いともされています。
しかし、それは形式だけのシステムを構築しているからです。組織の実態とシステム文書が乖離(かいり)した状況になっているのでは効果もままなりません。
そのような組織の実態から乖離(かいり)した認証維持のためだけのマネジメントシステムは、審査前に組織内の文書や記録をまとめて作成・整備するという負担を組織に与えるだけの結果になってしまいます。
本来のISO9000は、組織における事業目的の達成のために顧客満足度の向上を図り、「人・モノ・金・情報」といった経営資源を状況の変化に素早く対応させることで、組織の継続的パフォーマンス改善が達成できるシステムです。
今こそ、ISO9000の本来の意図に基づいて、トップが決断し、トップの行動をもシステムに組み入れるマネジメントシステム、事業経営を見据えたマネジメントシステムを構築するという、本当の意味での「品質マネジメントシステム」が必要とされています。