そもそも孤独死とは
孤独死とは、一人暮らしの人が自身の部屋で誰にも気付かれることなくひっそりと一人で亡くなることを指します。また、その多くは突発的な体調不良・持病の悪化・けがによって死亡するケースです。
似たような言葉に、
- 独居死
- 孤立死
- 無縁死
がありますが、これらは全て孤独死と同義であると考えて良いでしょう。
孤独死の定義
実は、日本の法律には孤独死という概念は存在しません。世間で使われている孤独死は、死因の分類上では変死にあたります。孤独死という分類を作ってしまうと、事件性のある死も孤独死として処理され、詳しく調べられない恐れが出てくるからです。
また、孤独死にも例外はあり、下記二つの死因は対象にはなりません。
- 自殺:室内で一人で行われ、発見までに時間を要することが多く生前に孤独を抱えていた場合であっても自殺は自殺として処理され、孤独死には含まれない
- 殺人:他者によってその命を奪われた場合には、たとえ一人暮らしの人であっても孤独死には分類されない
孤独死に注意するべき人
孤独死が起きてしまう人は、
- 身寄りのない人
- 地域とのつながりがなくなった独居老人
というイメージを持つ人が多いでしょう。
しかし、実のところ高齢者だけが孤独死を引き起こしている訳ではありません。いまや若い世代や障がいを抱える親子が社会から孤立し、亡くなってしまうケースも多く見られるようになりました。特に、50代半ばの男性における孤独死の件数は、女性と比較しても圧倒的に多いです。
このことから、孤独死になりやすいタイプには以下のような特徴があるとされています。
家事のできない中高年男性
働くことを生きがいとしてきた中高年の男性は、掃除・料理などの家事全般に苦手意識を持つ人が多いです。そのため、長年連れ添った妻と離れてしまった際には、健康状態と住宅の衛生状態は悪化し、生活環境は日に日に低下していきます。
しかし、このような状態が続いているにもかかわらず、頼れる人はいないため助けも呼べず孤独死してしまう人が多いのです。
人付き合いが苦手な人
女性に比べて、男性の方がコミュニケーションに苦手意識を持っている人が多い点も孤独死の多さに直結しています。
定年退職を迎えた男性は、社会との接点が減ったにもかかわらず地域コミュニティーにも参加しない人が多いため、特に孤立しやすい傾向にあります。結果、もしトラブルに巻き込まれても助けを求める人も発見してくれる人もおらず、孤独死につながることが多いのです。
病気や貧困を抱えている人
健康状態が悪く、かつ、誰も頼れる人がいない場合、一人で家にこもってしまうことが多くなるため、孤独死につながる要因の一つとなります。
また、会社の突然の倒産やリストラにあったり定年退職を迎えた場合にも、金銭的な苦労から日常生活に楽しみが持てず孤独を感じてしまう人は多いでしょう。
年間の孤独死件数
65歳以上の高齢者の割合が27.3%にもなる超高齢化社会の日本において、孤独死は決して避けることのできない問題となっています。実際、孤独死での死亡件数はどのように推移しているのでしょうか。
孤独死者年間件数の推移
年間の死亡者数130万人のうちの約3%が孤独死によって亡くなっていると推測され、いまやその人数は3.5万人~4万人にもなると言われています。
平成27年度に行われた東京都23区の65歳以上を対象とした調査では、孤独死者数は3127人であると発表されました。過去からの推移を見てみましょう。
東京都内における孤独死者数の推移 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
平成15年 | 平成20年 | 平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 | 平成27年 |
1451人 | 2211人 | 2618人 | 2733人 | 2878人 | 2891人 | 3127人 |
平成15年度の1451人に対して、その人数は2倍以上にも膨れあがっているのです。孤独死者数が3000人を超えたのも平成27年度が初で、その人数は今後も増え続けるであろうと予測されています。
孤独死が増えている原因
他者と接する機会の減少
近所付き合いの減少
一人暮らしをしている高齢者のうち半数以上は日常生活での近所付き合いを避ける傾向にあります。
- 回覧板を回す
- 近所の公園を清掃する
- 町内会のイベントに参加する
のような付き合いが嫌で、都会のマンションへと引っ越す人もいるほどです。
そのため、何か病気や発作で体に異常が起きた場合であっても、周りに頼れる人はおらず、誰にも気付かれることなく最悪のケースに至る場合も少なくありません。
疎遠になる家族関係
かつては二世帯住宅に住む人が多く、親の面倒を子どもが見ることが基本であったため、あまり表沙汰にはなっていませんでしたが、核家族化が進み親と子どもが離れて暮らすようになったことで、孤独死の問題は世間に広く知れわたるようになります。
一緒に暮らしていればちょっとした体調の変化から病気の前兆を感じ取れるかもしれませんが、年に何回か会う程度ではそれが老いなのか病気の兆候なのかを判断するのは難しいでしょう。
また、長時間一緒に過ごした家族と離ればなれに暮らすことも、精神面にも多大な影響を与えるでしょう。
このような理由から孤独死での死亡者数は増え、多くのメディアで取り上げられるようになったのです。
ソーシャルメディアの普及
スマートフォンが身近なものとなり、ツイッターやフェイスブックで見知らぬ人と会話をすることも増えた一方、日常生活内で誰とも話すことなく一日を追える人が3割近くいるというのも事実です。なかには一週間誰とも話さなかった、と言う人もいるほどです。
このような状況が、家族や近所との付き合いを減らして孤立してしまう原因となります。
パラサイトシングルの増加
独身のままいつまでも親と同居し、食事・選択など生活のほとんどを親に依存する「パラサイトシングル」の増加と高齢化も独居老人増加の要因となり、結果的に孤独死者数の増加へとつながる恐れがあります。
日本人の結婚に対する意識低下と「晩婚化」への影響
テレビや雑誌などさまざまな媒体で取り上げられるようになってきた孤独死。原因は分かっていても問題解決には至っていないのが現状です。
私たちも深刻なこの状況をしっかりと理解し、自身が孤独死の予備軍にならないよう人付き合いを大切にする、親には定期的に連絡する、など、今すぐにでもできることから行動していくことが重要となるでしょう。