社会増え続ける外国人労働者は今後の日本を支えるか

増え続ける外国人労働者は今後の日本を支えるか

日本で不足する労働力の一部を外国人が補うという構図により、外国人労働者の数が2016年に初めて100万人を越えています。しかし、留学生や技能実習生は事実上の単純労働力だという側面も指摘されています。そこで今回は、増え続ける外国人労働者が日本社会に与える影響について考えます。

外国人労働者の受け入れについて

外国人の在留資格は現在27種類ありますが、そのうち就労できる資格は18種類と制限されています。

在留資格

1.「外交」2.「公用」3.「教授」4.「芸術」5.「宗教」6.「報道」7.「投資・経営」8.「法律・会計業務」9.「医療」10.「研究」11.「教育」12.「技術」13.「人文知識・国際業務」14.「企業内転勤」15.「興行」16.「技能」17.「技能実習」18.「特定活動」

外国人労働者の雇用状況、労働者の受け入れ数の推移

外国人労働者は企業国際化や日本国内の少子化により増加しています。平成28年10月時点での外国人労働者雇用状況は以下の通りです。

◇外国人労働者数は1,083,769人で、前年同期比175,873人、19.4%の増加

◇外国人労働者を雇用する事業所数は172,798箇所で、前年同期比20,537箇所、13.5%の増加

国籍別の労働者数

  • 1位.中国:344,658人(外国人労働者全体の31.8%)
  • 2位.ベトナム:172,018人(同15.9%)
  • 3位.フィリピン:127,518人(同11.8%)
  • 4位.ブラジル:96,672人(同10.6%)

対前年伸び率

  • 1位.ベトナム:79.9%
  • 2位.ネパール:60.8%

在留資格別

  • 1位.「身分に基づく在留資格」:367,211人(外国人労働者全体の40.4%)
  • 2位.「資格外活動」:192,347人(同21.2%)
  • 3位.「技能実習生」:168,296人(同18.5%)
  • 4位.「専門的・技術的分野:167,301人(同18.4%)
身分に基づく在留資格
永住者や永住者を配偶者に持つ人
資格外活動
留学生のこと

【出典:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

外国人労働者の受け入れに関する取り組み

高度外国人材に対する優遇制度

高度な技能・知識を持つ外国人(「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3分類)には、出入国管理上の優遇措置が与えられ、高度外国人材の日本への受け入れ促進が図られています。

介護人材の養成

介護人材不足に対応し、残留資格に「介護」分類を設けることで外国人が介護福祉士の資格を取得して介護施設に勤務できるような制度が始まっています。

外国人技能実習生の保護強化

技能実習の適正な運用と技能実習生の保護のため、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制等が新たに導入されています。
また、優良な監理団体・実習実施者に対しては、実習期間の延長や受け入れ人数枠の拡大などの制度の拡充も図られています。

 

外国人労働者雇用のメリット

外国人労働者雇用のメリット

現在の日本企業を取り巻く環境は、少子高齢化による若い労働力の不足や国際的な競争の激化に伴うコストダウン、海外販路開拓大などのグローバル化の荒波に直面していますが、外国人労働者の雇用で活路を見出せる可能性があります。

コストと若い労働力の確保

少子高齢化の影響で、製造業をはじめとする多くの業種で若い労働力が減少しています。

技能実習生や日系の子孫等は、製造業では目や手先の技術・運動能力が求められるため、日本語の会話力が不十分でも若い労働力の確保という面で大きなメリットがあります。

また、日本人の若い世代を雇用するより人件費を安く抑えることができます(ただし、不当に安い賃金で雇用するのは法律違反に当たる)。

さらに、母国を離れて異文化の日本に働きにきているということからも分かる通り、高い労働意欲があり、金銭面だけでなく技術を吸収したいという強い意欲も持っています。

多様な労働力の確保

日本の市場が縮小するなかアジア圏を中心に海外進出を計画する企業が増えていますが、海外進出後に現地で労働者を雇用するより、日本国内に外国人労働者を呼んで雇用するほうが、文化や慣習を理解して海外進出するよりもリスクが減ります。

また、その外国人を通じて優秀な人材を確保しやすくなります。日本人にはない発想や考え方、語学を外国人から学ぶことで、製品開発などにイノベーションが発生する可能性もあり、日本人の社員にも語学を学ばせたり異文化に触れさせたりすることで国際感覚を身に付けやすくなります。

 

外国人労働者の雇用問題

外国人労働者の雇用問題

外国人を受け入れる際の問題としては、言語・文化的な違いなどの様々な事項がありますが、一番は外国人技能研修生の安価な単純労働者としての雇用だとされています。

単純労働の受け入れ拡大(技能実習生制度による雇用数の増加)

2017年11月に外国人技能実習制度に介護職が追加されることで、74種114作業において外国人技能実習生を雇用することができるようになります。しかし、一部の事業者においては最低賃金以下で働かせたり中間業者による賃金搾取などが起きています。

外国人労働者の雇用は、日本の高い技能を身につけて研修期間終了後に母国に帰って経済発展に貢献してもらうことを目的として考えられた制度でしたが、受け入れ側の日本では「少子高齢化による人手不足と国際競争力の激化によるコストダウンのために人件費を抑制したい」、送り出し側の発展途上国(主にアジア諸国)では「自国より生活水準の高い日本で働きたい」という双方の思惑が一致することで、安い労働賃金での外国人技能労働者の受け入れ数の増加に繋がっています。

介護人材の受け入れ

介護職への受け入れも可能になり、人手不足に悩む介護施設の問題解決として期待はされていますが、過酷な労働環境に外国人技能研修生が馴染むのかを懸念する声もあがっています。

日本人と外国人労働者の格差

最低賃金以下で働かせているケースも

高度な専門職の外国人は日本人より好待遇ですが、単純作業中心の建設(あるいは建築関係)や飲食・娯楽産業等では、アジア諸国との生活水準の差を利用して不法就労の外国人労働者を最低賃金以下で働かせているケースも増えています。

また、大学・専門学校・日本語学校に留学生資格目的でやってきて、働いている外国人留学生も増えています。

留学生には週に28時間までの労働が認められているほか、学校が長期休暇の間は1日8時間、週40時間まで働ける「例外」もありますので、待遇が日本人より悪くても文句を言わずに働いてくれる貴重な労働力ともなっている面があります。

就業環境も悪い

低賃金で日本人が嫌がる仕事を行わせるために外国人労働者を雇い入れているという意識を持っている事業者も多く、賃金だけでなく就業環境も悪い例が多くあります。

  • 男女別のトイレがない
  • 作業服に着替える更衣室がない
  • 外国人労働者の住居を用意しない
  • 住居はあっても勤務先から遠いところで、自転車・徒歩等で通わせる

など、日本人ならとても耐えられない劣悪環境で仕事をさせられている例が多く見受けられます。

 

ダブルリミテッド問題

日本で就労ビザを取得するには日本語能力が求められるため、日本語能力検定の取得が義務づけられています。しかし、技能実習生の一部は母国で日本語能力検定の証明書を偽造して来日するケースもあります。これにより、作業現場で作業指示が上手く伝えられない、周囲とのコミニュケーションが取れずに孤立する、そして最後には失踪につながるトラブルも発生しています。

日本人は俗に言う「阿吽(あうん)の呼吸」で言外の意味を理解して行動しますが、外国人労働者にはこれが理解できないためにコミニューケーション不足の一因にもなっています。日本に働きにきて定住する外国人も増えており、その子どもが日本語も母国語も十分に理解できない「ダブルリミテッド」と呼ばれる状態に陥るケースも問題になってきています。

今後の大きな外国人労働者受け入れの課題の一つとして対策が急がれます。

 

少子高齢化が進む日本では外国人労働者の受け入れは避けられない状況です。問題も多く存在しますが、外国人労働者も差別なく日本人と同等に受け入れることで、さらなる日本の発展に繋がっていくことを期待したいと思います。