この記事の目次
唐辛子の種類
唐辛子とは
ナス科トウガラシ属トウガラシ種である「唐辛子」は、その果実自体や果実から作られた香辛料を指します。原産地は中南米で、メキシコでは紀元前・数千年前から栽培されていました。唐辛子が世界に広がったのは一説によると15世紀のコロンブスの大航海時代とされ、日本に伝わったのは16世紀半ば、あるいは17世紀はじめとされています。
日本で一般的に唐辛子と認知されているのは「トウガラシ(学名:Capsicum annuum)」ですが、沖縄や伊豆諸島では島唐辛子が栽培されており、これは「キダチトウガラシ(学名:Capsicum frutescens)」という品種になります。トウガラシ属(Capsicum)には多くの品種があり、鷹の爪やハバネロなどもこの内の一品種です。
漢字では「唐から伝来した辛い種子」という成り立ちの唐辛子ですが、この「唐」は中国を指すわけではなく、広く外国を意味しているとされます。同じく外国を指す言葉である「南蛮」から来た辛子ということで、「南蛮辛子」あるいは「南蛮」と呼ぶこともあります。
上記のとおりトウガラシの品種はさまざまで、辛いものばかりではなく、ピーマンやパプリカ、シシトウガラシ(シシトウ)などの辛みが全くない、または少ない甘味種や甘唐辛子も含まれます。
日本でよく食べられている唐辛子
鷹の爪
日本料理でなじみの深い「鷹の爪」は、薬味や香辛料として古くから重宝されてきました。乾燥された果実はそのまま使うこともありますが、輪切りで料理に使用したり、粉末にしたものは一味唐辛子としてうどんやそばの薬味調味料として使われたりと、使用方法はさまざまです。また、防虫効果があるため、昔から米びつに入れるなどして食用以外にも活用されてきました。
ハバネロ
トウガラシ属シネンセ種である「ハバネロ」も日本でよく食べられている香辛料です。熟す前の果実は緑色で、熟すと一般的によく見られるオレンジ色や、白色、茶色、ピンク色などの色になります。
ハバネロは猛烈に辛いことで知られていますが、柑橘系の香りがすることも特徴の一つです。2003年に東ハトが発売した「暴君ハバネロ」が大ヒットして激辛ブームを巻き起こしたことでハバネロの日本での知名度は一気に上がり、一過性の人気では終わらずに浸透しました。
激辛唐辛子ランキング
日々、世界中の生産農家が唐辛子の辛さを競って新種を開発しています。「激辛」というよりもはや「激痛」という表現がふさわしい驚異的な辛さの唐辛子の数々。辛さの目安となるスコヴィル値とともにそのランキング(2017年時点)を紹介します。
1位:ドラゴン・ブレス・チリ
約248万スコヴィル。「ドラゴンの吐く息」という名のこちらの唐辛子は、舌を焼かれて火を噴くように感じるほど危険で、食用には向かないと言われる世界最強の辛さです。原産地はイギリス。
2位:キャロライナ・リーパー
約220万スコヴィル。その形から「大型の鎌を持った死神」と名付けられたこちらの唐辛子は、食べた瞬間は果実のような甘みを感じますが、その後に口中が焼かれるような刺激、咳き込みといった症状に襲われます。原産地はアメリカ。
3位:トリニダード・スコーピオン・ブッチ・テイラー
約146万スコヴィル。調理するのに防護服がいるほどの激辛。果実の先端がサソリの尾のように尖っていることから「スコーピオン」と名付けられました。原産地はトリニダード・トバゴ。
4位:ナーガ・ヴァイパー
約138万スコヴィル。2011年には世界一辛い唐辛子としてギネスに認定されていました。原産地はイギリス。
5位:ブート・ジョロキア
約100万スコヴィル。食道に穴を開けるほどの恐ろしい激辛。原産地はインド。
激辛好きにとってはなんとも好奇心をそそられる面々ですが、摂取量や体質、そのときの健康状態によっては死に至る可能性があるほどの危険な辛さですので、チャレンジする場合や取り扱い時にはくれぐれも気を付けましょう。
唐辛子の栄養成分と効能
唐辛子に含まれる主な成分
唐辛子には辛さ成分であるカプサイシンのほか、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB2、カロテン、カリウム、鉄など、健康に嬉しい成分が多く含まれています。
唐辛子の効能
カプサイシン
カプサイシンはアドレナリンの分泌を促し、代謝が上がることで発汗や体温の上昇が起こり、体脂肪の燃焼に効果的です。血管が拡張するため血行が良くなり、体内の老廃物が排出されて新陳代謝が高まることで疲労回復にもつながります。
また、胃腸に働きかけて消化液の分泌を促すため、消化促進や食欲増進の効果があることも知られています。辛みによって味覚を満足させることで塩分を控えられる、というメリットもあります。
ビタミン・ミネラル
ビタミン類やミネラルによって抗酸化作用が生まれたり免疫力が上がったりすることで、風邪の予防や夏バテ防止、肌荒れへの効果も期待できます。
栄養豊富な唐辛子ですが、刺激物でもあるため過剰な摂取は胃腸に負担がかかります。適度な量を上手に楽しんでください。
地元で愛されるご当地唐辛子料理
京都名物「舞妓はんひぃ~ひぃ~」
ユニークな商品名とパッケージが目を引く「舞妓はんひぃ~ひぃ~」は、市販の唐辛子の約10倍という「狂辛」の一味と七味で、激辛では物足りない方におすすめです。
契約農家で生産された「レッドサビナ」という国産のハバネロと国産の本鷹唐辛子などがブレンドされており、辛いだけではなく風味と旨味があります。後を引く辛さと味わいにハマる人が続出する、リピーターの多い京薬味です。
そのほかにも「舞妓はんひぃ~ひぃ~」のシリーズ商品としてラー油やカレーソース、七味豆あられ、カレーせんべいがあり、お土産にも好評です。
九州ではおなじみ「柚子胡椒ピリ辛ひじき」
九州ではよく使われているおなじみの柚子胡椒は、粗く刻んだ唐辛子に柚子の果皮と塩を加えてすり潰し、熟成させた薬味です。柚子の爽やかな香りと唐辛子の辛みが独特の味わいとなり、さまざまな料理の旨味を引き立てます。
この柚子胡椒で味付けされたひじきの佃煮が「柚子胡椒ピリ辛ひじき」です。甘辛く炊かれたひじきに柚子胡椒の風味がピリッと効いて、ご飯やお茶漬けと相性抜群。和え物やサラダのトッピングにも使えるほか、お酒のあてにもなり、便利な惣菜です。
大阪伝統の味「青唐辛子味噌漬け」
大阪の鶴橋にある豊田商店が販売している「青唐辛子味噌漬け」は、辛さのなかにも甘みを多く含んだ韓国産の青唐辛子を生のまま味噌漬けにしています。
コクのある自家製味噌で漬け込んだ香り豊かな青唐辛子はクセになる味わいで、ご飯やビールが進みます。料理の素材としてもお使いいただけます。
上越地域の伝統調味料「かんずり」
豪雪地帯の上越地域に古くから伝わる「かんずり」は、地元産の唐辛子を発酵させて作られた真っ赤なペースト状の調味料です。
かんずり用の肉厚な唐辛子は、塩漬けされた後に雪に数日さらされることでアクと塩が抜け、辛さがマイルドになります。こうして雪さらしをされた唐辛子と糀(こうじ)、柚子、食塩を樽に入れ、3年かけて熟成・発酵させたものが「かんずり」となります。
手間と時間をかけて作られた「かんずり」は、辛さのなかにも旨味と甘みがある奥深い味わい。料理の味を引き立てる薬味や香辛料、隠し味として、地域に根差した伝統調味料です。
度々の激辛ブームの影響もあり、辛いものを好む人や激辛マニアは珍しい存在ではなくなりました。そして、辛さを競って危険なほど過熱する海外の唐辛子事情にも見られるように、辛さへの飽くなき探究は今後も続きそうです。