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岩手・青森の故郷の味「南部せんべい」
南部せんべいの由来
水で溶いた小麦粉を焼き上げる南部せんべいの歴史は古く、はっきりとした起源は分かっていません。
よく知られているのが、南北朝時代、長慶天皇が八戸の長谷寺を訪れた際に家臣の赤松助左衛門が自らの兜を鍋にし、そば粉とごまを焼いて天皇に献上したという説。ほかには、1411年(応永18年)の秋田戦争の際、八戸軍の兵士が兜で焼いて作ったという説などがあります。
南部せんべいはそのまま食べるだけでなく、青森県や岩手県などでは、しょうゆ味の汁に南部せんべいを入れる「せんべい汁」としても食べられます。
せんべい汁が誕生したのは江戸時代。天保の大飢饉が起きた前後に八戸藩内で誕生したと言われています。主食やおやつとして地域に根付いた南部せんべいは、明治時代まではそば粉や大麦が使われていましたが、明治以降には小麦粉が使われるようになりました。
青森県東部、岩手県北部・中部、秋田県北東部の旧八戸藩主・南部氏が治めていた地域の名物として知られていますが、北海道でも食べられています。
南部せんべいの特徴
南部せんべいの最大の特徴は、丸いせんべいの周りについている耳でしょう。せんべい型からはみだした薄い部分ですが、「カリカリしていておいしい」とファンが多く、耳だけを集めて販売している店舗もあります。
また、せんべいの裏に模様があることも特徴の一つです。よく見られるのが「菊水と三階松」。これは赤松氏が長慶天皇にせんべいを献上した際、「楠木正成(南朝に忠誠を尽くした)に匹敵する忠節」とお褒めの言葉をたまわり、せんべいの焼型に楠木氏の家紋である「菊水」、赤松氏の家紋である「三階松」の使用が許可されたことに基づいています。
さまざまな種類の南部せんべい
味の海翁堂 南部せんべい 胡麻・白
味の海翁堂の南部せんべいは、八戸本社の隣にある「南部庵」の看板を掲げた工場で作られています。たっぷり胡麻が入った風味豊かな胡麻せんべい、ノンオイルの白せんべいは、素朴で優しい味わい。通信販売で購入する場合も、工場からできたてを直送してもらえます。
阿部煎餅店 南部せんべいのみみ
1957年創業の阿部煎餅店では、袋詰めになった南部せんべいの耳が販売されています。ごませんべい・まめせんべい・白せんべいと、せんべいごとの商品があり、好みのものを選ぶことが可能。また、キャラメル・きなこ・バターなどさまざまな南部せんべいも販売されています。
渋川 飴せんべい
「香ばしくて甘い!」と人気の商品が、マルカワ渋川せんべいの「飴せんべい」です。「津軽飴」と呼ばれる麦芽飴をサクサクの胡麻せんべいでサンドしてあり、一度食べるとはまってしまう人が続出。大人から子どもまでファンが多い商品です。
巖手屋(いわてや) いかせんべい
南部せんべいを焼くおばあさんのイラストでも知られる巌手屋(いわてや)。「いかせんべい」は、軽く焼いた胡麻せんべいにたっぷりいかが入ったせんべいです。「とにかくおいしい!」とリピーターが多く、人からもらった「いかせんべい」がおいしかったので購入したという方も。おやつにはもちろん、お酒のおつまみにしてもおいしくいただけます。
埼玉県草加市名物「草加せんべい」
草加せんべいの発祥
バリンと堅めの草加せんべい。埼玉県草加市は古くから米どころとして知られており、農家では団子状にした米を乾燥させ、保存食としていました。
江戸時代になって五街道の整備にともない草加宿が誕生すると、保存食としていたせんべいも売られるようになり、各地に広まったと言われています。
販売当初は塩味でしたが、しょう油の普及にともない、幕末前後からしょう油が塗られたせんべいが登場。明治時代・大正時代にも人気の食べ物で、大正時代に川越で行われた特別大演習では天皇陛下に献上されています。献上菓子となったことから草加せんべいの名はさらに知られるようになり、草加のせんべい作りはますます盛んになりました。
地域ブランドとしての草加せんべい
草加せんべいは、農林水産省管轄の一般財団法人・食品産業センターが認定する地域食品ブランドとして認定されています。
2006年(平成18年)認定当時の基準
- 製造地:草加・八潮・川口・越谷・鳩ケ谷で製造
- 材料:関東近県で収穫された良質のうるち米
- 製造:最低10年の経験を持つ職人が製造を管理
- 焼き方:押し瓦での型焼きまたは押し瓦方式を取り入れた堅焼き
2007年には、地名が入った商標「地域団体商標」の登録もされています。草加せんべい振興協議会は草加市の協力を得ながら、品質の管理・栄養成分の分析・展示会への参加などさまざまな活動を行っています。
おすすめの草加せんべい
山香煎餅本舗 草加せんべいチョコ・みそせんべい
堅焼きしょうゆ味の草加せんべいですが、山香煎餅本舗ではさまざまな味の草加せんべいが作られています。
職人が一枚一枚丁寧に焼き上げるオーソドックスな草加せんべいはもちろんのこと、草加せんべいとホワイトチョコレートのクランチ「草加せんべいチョコ」、信州の高級吟醸味噌を使った「みそせんべい」なども販売されています。
斬新な草加せんべいチョコは、しょう油とチョコレートがコラボレーションした、サックリ食感のせんべい。みそせんべいは、山香煎餅本舗自慢の特製甘味噌ダレが塗られており、ひと味違った草加せんべいを楽しむことができます。
せんべいの手焼き体験ができる草加市の「草加せんべいの庭」のほか、草加市・清門店、川口市・戸塚安行店、東京・銀座にも店舗があり、通信販売でも購入が可能です。
源兵衛本舗 源兵衛焼き
老舗として知られるのが1870年創業の「源兵衛せんべい」です。上質の米としょう油を使って焼き上げられるせんべいは、香ばしく焦げ目がたまらなくおいしそう。バリバリと堅すぎることもないせんべいは、せんべいが好きな方にはたまらない昔ながらの味わいです。
店内にはせんべいの焼き場があり、運が良ければ職人がせんべいを焼く姿を見ることもできます。
江戸からの伝統駄菓子「からからせんべい」
からからせんべいとは
小麦粉と黒糖で作った生地を三角形に折り畳んだ形のからからせんべい。せんべいのなかにさまざまな玩具が入っており、振るとカラカラ音がすることからその名が付きました。
カリッした食感のせんべいには小さな民芸品が入っていることが多く、何が出るのかお楽しみ。ワクワクしながらおいしいおせんべいを味わうことができます。
からからせんべいの起源
からからせんべいの起源は、江戸・元禄時代の大黒煎餅と言われています。大黒せんべいに入っていたのは木彫りの小さな大黒様。次第にさまざまな玩具が入れられるようになり、各地に広がっていきました。
江戸時代に生まれた駄菓子は明治時代、大正時代にも大変人気があり、時代によって玩具の種類も変化しています。模型や焼き物などが入っていたこともありました。昭和時代になってから一部地域でしか見られなくなりましたが、山形県鶴岡では伝統菓子として知られています。
また、山梨県甲府市では節分の時期に「がらがら」という名で三角形のせんべいに玩具が入ったものが売られています。手の平サイズの山形県のからからせんべいに比べ、山梨県のがらがらは一辺が30センチほどの大きさです。
からからせんべいの特徴
からからせんべいの特徴は、見た目の三角形と玩具が入っていること。お菓子自体が特徴を全て表しているようですが、カリッとした食感と優しい黒糖の味も時代を超えて愛され続けている理由の一つです。
また、以前はせんべいのなかにそのまま玩具が入っていましたが、近年は薄紙に包まれた玩具が入っているため、カラカラという音を聞くことができません。少々残念な変化ですが「薄紙一枚分だけ余計にワクワク感を味わえるようになった」と考えてみると良いかもしれません。
伝統の味!宇佐美煎餅店「まるやまからから煎餅」
宇佐美煎餅店のからから煎餅は「まるやま」という名が付いていますが、丸い山という意味の「まるやま」は、からからせんべいの古い呼び名です。
生地は厚めでパリンとした食感。焼いた生地が硬くならないうちに手早く丁寧に玩具を入れて成形されています。黒糖には沖縄県与那国産の黒砂糖を使用し、添加物は不使用の素朴で優しい味のせんべいです。
宇佐美煎餅店のからから煎餅の特徴は、玩具のバリエーションが豊富なこと。常時150種類ほど用意されており、天童の将棋駒や庄内の御殿まりなどの地元山形の玩具も入っています。家族全員で楽しみながら食べられる煎餅です。
「地域で愛されているせんべい」、いかがでしたでしょうか。生活のなかから生まれた素朴な味、時代の流行から誕生したせんべいは、一部の地域だけでなく全国各地・老若男女を問わず時代を超えて愛され続けています。
通信販売でも手に入れることができるので、気になったものがあれば味わってみてはいかがでしょうか。