この記事の目次
イタドリの効能
イタドリとは
「イタドリ」はタデ科の多年生植物で、日本では北海道西部以南や、中国、台湾、朝鮮半島に分布しています。
雌雄異株で、翼のある種は風で運ばれ春に発芽します。繁殖力が強く地下茎を四方に伸ばして群生を形成するため、日本各地の山野をはじめ、道端などさまざまな場所で見られる植物です。やや湿った場所を好むため、河川敷などに多く生育しています。
先がとがった丸みのある葉を互い違いに出し、茎は太く、竹のように節があり中空。草丈は50cm~150 cmほどですが、場所によっては2m近くになることもあります。
春に芽を出す若い茎はアスパガラスに似ており、先端の葉や表皮の斑紋が赤くなっています。夏には枝の先に3mmほどの白く小さな花を多く咲かせます。
若い茎は食用として、根茎は薬として古くから用いられてきましたが、アスファルトを突き破るほど強く、他の植物を締め出してしまうことから、「侵略的外来種ワースト100」に指定されています。
イタドリの効果・効能
イタドリの根は、花が終わり葉が黄色くなる晩秋、10月~11月ごろに採取します。これを天日乾燥させたものは、漢方薬・虎杖根(こじょうこん)として用いられています。虎杖根の主な効果・効能は利尿作用や緩下作用です。常習性の便秘、膀胱炎のほか、婦人病、健胃、リウマチなどさまざまな症状に用いられてきました。
また、民間療法では咳止めや止血に用いられてきました。イタドリを甘草と合わせ煎じて冷やした「冷飲子」は咳止めになるとされ、また、イタドリの柔らかい若い葉を揉んで傷に当てると止血作用と鎮痛作用があるとされており、このことから和名「痛取(イタドリ)」の名がつきました。
イタドリのさまざまな呼び方
イタドリは、以下のようにさまざまな呼び名を持つ植物です。
- 虎枝(いたどり):茎の赤い部分を虎の縞模様に見立てている
- 痛取(いたどり):痛みを取る作用がある
- 糸取(いとどり):葉の表面から糸状のものが取れる
- すかんぽ:茎を折ると「ぽこん」という音がして、口にすると酸っぱい
他にも「いたずり」や「かっぽん」など、地域によりさまざまな名で呼ばれています。
イタドリは山菜?雑草?駆除方法は?
高知県民が食べている山菜としての「イタドリ」
イタドリは山菜として食べることができます。しかし、実際に食用としている地域は多くありません。
イタドリをよく食べている地域として知られているのが高知県。雑草とされている地域も多いため、見つけるのは難しくありません。自分自身で収穫する人も多いのですが、時期になるとスーパーマーケットでも購入することができます。
イタドリの収穫方法
イタドリは成長すると茎が固くなってしまうため、春、新芽が出てきたころに収穫します。指で折り取って収穫できるイタドリは、特徴である「ぽこん」という音がする箇所で折るようにします。節と節の間が短く、茎がふっくら太っているものを選びましょう。
イタドリは危険な雑草?
薬にもなり食べることもできるイタドリですが、旺盛な繁殖力が問題を引き起こしていることも事実です。
イタドリは、国際自然保護連合(IUCN)が指定している「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。これは、「本来の生育・生息地以外に侵入した外来種のなかでも、特に生態系や人間活動への影響が大きい生物」がリスト化されたものです。
地下茎を伸ばし、爆発的ともいわれる強い繁殖力で、もともと生えていた植物の生育を妨げる恐れがあります。地下茎そのものも強く、コンクリートやアスファルトを壊すほど四方に茎を伸ばすことから、家屋や堤防などの損壊が懸念されています。
イタドリの駆除方法
イタドリの駆除は非常に難しいと言われています。地下茎を伸ばして繁殖するため、地面から上を刈り取っても意味がありません。また、冬でも枯れることがありません。
一度の除草剤散布では完全駆除が難しいため、除草剤を根気よく撒く、土を掘り返して根を除去してから除草剤を撒く、などが基本的な駆除方法となります。
除去したと思っていても残っていた小さな根からまた芽を出すことがあるので、根を掘り返す作業も一度では不十分の場合も。辛抱強く対策を続けることが必要です。
イタドリの食べ方
イタドリには酸味とえぐみもあるため、下処理をしてから調理を行います。収穫したらすぐに下処理をしましょう。
下処理方法
下処理には下記の方法がありますが、どれも、まずは皮をむき、調理しやすい大きさに切ります。茎の断面の皮をつまみ、先に向けてむいていくときれいに行えます。
- 手順1軽く茹でて一晩水にさらす
- 手順2塩を振り一晩置いたあと水にさらす
- 手順3塩を振ったあとしばらく置き、水にさらすか湯通しする
おいしい食べ方
下処理をしてアクが抜けたイタドリは、さまざまな料理に活用できます。おひたし、漬物、和え物のほか、天ぷらや煮付け、炒め物、味噌汁に入れても良いでしょう。豚肉やハムと炒めたりオイスターソースを使って中華炒めにしたりしてもおいしくいただけます。どのような調理にもよく合う、使い勝手の良い食材です。
商品紹介
ふらのジャム園 いたどりジャム
北海道富良野の地で手作りジャムの製造・販売をしている「ふらのジャム園」。園内にある畑で有機無農薬栽培をした素材をはじめ北海道産・富良野産の素材を使用したジャムは無加水で作られるため、素材の味をたっぷり楽しめる人気の商品です。
「くだもの・木の実」「ベリー」「やさい」「ミックス」のジャンルに分けられるほど多くの種類があり、珍しいジャムが多いこともふらのジャム園の特徴。「やさい」ジャンルにある「いたどり」のジャムは野趣満点。春に収穫したイタドリの柔らかい新芽をジャムにしたものです。
酸味が強く甘さは控えめ。採れたてのイタドリを丁寧に下ごしらえしているので、雑味が抑えられ食べやすくなっています。個性が強く野生味あふれる味のため好みが分かれるところですが、やみつきになるリピータも多くいます。
イタドリとイギリスの関係性
イギリスに持ち込まれたイタドリ
東アジア原産種のイタドリは、19世紀、ヨーロッパに輸入されました。観賞用としてイギリスにも持ち込まれましたが、強い繁殖力を持つために大繁殖して野生化。さまざまな問題を引き起こす原因となってしまいます。
イタドリがイギリスで環境問題に
野生化したイタドリはイギリス全土に広がり、他の植物の生育を阻害し、建造物を破壊するなど、深刻な事態を引き起こします。イタドリによる被害額は、駆除費用などの総額で年間1億5000万ポンド(約200億円)とも言われています。「イタドリを駆除しないと不動産価値が下がる」とも言われ、早急な対策が必要となりました。
日本でもイタドリの駆除は問題となっていますが、イギリスほどではありません。それは、日本にイタドリマダラキジラミというイタドリの天敵が存在するためです。イタドリマダラキジラミは、イタドリのみを餌とするシラミで、日本各地に生息しています。
そのため、イギリスはイタドリ対策の益虫としてイタドリマダラキジラミを生物農薬として日本から輸入することになりました。
薬にも食用にもなるイタドリ、いかがでしたでしょうか。強い繁殖力が問題となっていますが、この記事のようにおいしく食べることが可能な植物です。春に新芽を見つけたら「ぽこん」と折り取り、調理してみてはいかがでしょう。