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人気の果物「梨」
梨の歴史
梨の発祥地は中国といわれ、その起源となる植物は約7000万年前に中国南西部の山地で発生しました。その後は西アジアへ広がり様々な品種が生まれます。東はヨーロッバへ広がり、のちに西洋梨となります。
日本では弥生時代のころから食べられていたとされており、登呂遺跡からも梨の種が多く見つかっています。また、日本書紀の文献で初めて梨の栽培を奨励する記述が発見されています。
江戸時代になると梨の栽培はますます盛んになり、100種類以上の品種が作られるようになりました。そして、明治時代になると「二十世紀」や「長十郎」が発見されます。
品種改良を繰り返しながら果肉のやわらかい甘い梨に生まれ変わり、戦後になると「幸水」、「新水」、「豊水」の3種類の梨が誕生して全国に普及しました。
梨の旬や特徴
梨の多く出回る時期は7月中旬~10月下旬ごろです。生産量が多いのは千葉県、茨城県、福島県になります。
また、梨には「赤梨」と「青梨」があります。
赤梨の代表が「豊水」や「幸水」といった皮が茶色の梨です。熟してくると斑点が目立ち皮がザラっとしますが、これが水分をしっかり閉じ込めるための役割を果たしているのです。
青梨の代表は「二十世紀」。皮が緑色の梨のことです。黄色っぽくなれば甘味が増している証拠です。
どちらもシャリっとした食感が独特ですが、これは、「ペントザン」や「リグニン」といった成分からできている石細胞によって作られているためです。
糖度は、芯より皮に近い部分が、上部より下部のほうが高くなります。皮に張りがあり、色ムラがないもので軸のしっかりしたものを選びましょう。両手に梨を持ってみたときに重みがあり、お尻がふっくらとしたものが良質です。
梨の種類一覧
梨は種類が多く、「和梨」「洋梨」「中国梨」などを合わせると150以上にもなります。一般的に日本で「梨」と呼ばれるのは「和梨」のことです。私たちがよく目にする「和梨」だけでも、変わり種の品種を合わせると多くの種類があります。では、梨の種類を生産量が多い順にご紹介しましょう。
- 幸水
- 豊水
- 新高
- 二十世紀
- あきづき
- 南水
- 新興
- ゴールド二十世紀
- おさゴールド
- 愛宕
- にっこり
- 長十郎
- 彩玉
- 新水
- 菊水
- 晩三吉
- 新甘泉
- かおり
- 愛甘水
- 八雲
「幸水」「豊水」「二十世紀」「新高」の4品種だけで収穫量の約9割が占められています。また、全体的にほとんどの種類が皮の茶色い赤梨系となっています。
新たな商品「下妻甘熟梨」
茨城県下妻市は梨の生産地として有名です。その下妻市が「梨本来のおいしさを伝えたい」とプロジェクトチームを結成、時間をかけて「下妻完熟梨」を作り上げました。「梨のおいしさの秘訣は土づくりから」と、有機質素材(馬ふん)を使った肥料にこだわっています。
さらに、熟成させてから収穫するという独自の生産手法で極上の完熟梨を実現しました。選び抜かれた梨は重みのある大玉です。「完熟」の名前のとおり「とってもジューシー、甘くておいしい」と好評です。
梨で有名な3種類 「幸水」「豊水」「二十世紀梨」
夏も中旬になると、スーパーや八百屋には梨が並び始めます。このなかで特に日本人に親しまれているのが「幸水」「豊水」「二十世紀梨」の3種類です。
幸水とは
1959年に「菊水」と「早生幸蔵」が交配・品種改良されて登場した赤梨です。「菊水」の「水」と「早生幸蔵」の「幸」をとって「幸水」と名付けられました。梨の代表的な品種で、日本の梨の約40%を占めます。
大きさは250g~350gほど。芯が小さくお尻の部分がへこんでいます。酸味が少ない代わりに糖度は12度と甘味が強く、シャキシャキとした食感が特徴です。
甘くて食べやすい梨として人気で、見た目は薄い黄緑色で褐色がかったものもあります。梨の中でもいちばん早く出荷され、販売時期は7月下旬から9月上旬ごろ。千葉県、茨城県、福島県で多く生産されています。
豊水とは
「幸水」×「石井早生」×「二十世紀」が交配されて1972年に登場した赤梨です。大きさは350g~450gほど。大きめのサイズで比較的日持ちもします。糖度は11度~13度と甘く、そこに酸味も加わります。ほどよい酸味と甘味との絶妙なバランスが特徴です。
販売時期は8月下旬から10月上旬ごろ。こちらも千葉県、茨城県、福島県で多く生産されています。
二十世紀梨とは
鳥取県のブランド梨として有名ですが、実は1888年に千葉県で発見されたといわれている青梨です。当初は「新太白」と呼ばれていましたが、1904年に質の高い梨として認められたことで、「二十世紀を代表する品種の梨になってほしい」という願いをこめて「二十世紀」に改名されました。
大きさは300gほどで、糖度は10度~13度。みずみずしくシャリシャリとした食感が特徴です。販売期間は8月中旬から10月上旬ごろ。鳥取県、長野県、福島県が主な生産地です。
茨城県オリジナルの梨「恵水」とは
茨城県で生まれたオリジナルの梨「恵水」は2016年の秋に市場にデビューしました。酸っぱさがなく甘くてジューシーな味わいと、みずみずしい食感で高い評価があります。期待の新品種「恵水」の魅力に迫ります。
「恵水」の重さは600gと大玉です。糖度は13度と甘味が強く、酸味はほとんどありません。シャリシャリ感がある、少し硬めの食感が特徴です。販売時期は9月上旬から下旬。冷蔵庫で約3カ月の長期保存が可能です。
普及拡大を目指すこだわりの梨「恵水」の開発
「恵水」は、茨城県の農業総合センターが「豊水」に代わる品質の良い梨を育成するために栽培に取り組みました。「新雪」と「筑水」を交配して育てられた赤梨で茨城県オリジナルの新品種です。
年月をかけて試験栽培を繰り返し、2011年に品種登録。そして2013年には、県内の生産者を対象に「恵水」の苗木の一般販売が開始されます。
育成の背景
なぜ茨城県が力を入れて「恵水」の育成に取り組んだのでしょうか。その背景には、梨の木の高樹齢化による生産力の低下や梨価格の低迷があります。
茨城県は全国でもトップクラスの梨の生産地であり、生産ではほぼ選果機が導入されて効率的な選果と共販体制が整備されています。しかし、品種は「幸水」「豊水」だけであり、これらが作付面積の約90%を占有しています。
このため新しい品種による生産力の向上や販売力の強化が求められたのです。
普及への課題
また、主力品種の「豊水」には気象条件の変化などによって「みつ症(果肉障害)」が多発するという問題もあります。みつ症は、これまで多くの研究の成果もむなしく、いまだ原因の解決には至っていません。リスク回避は難しく、減収や価格低迷は否めない状況が続いています。
品質の優れた「恵水」を開発するために、花が咲いて果実が実をつける「着果量」を制限するという管理を徹底して行いました。みつ症(果肉障害)が少ないことも検証されました。
収穫の目安は梨の色で判断します。「やや赤め」から「赤め」になったら収穫期、糖度も上がり品質の良い梨の完成です。筑西市、石岡市、下妻市などの7市町村で栽培され、2016年の9月に初めて出荷されました。
普及のために東京の高級果実店での試験販売や、県内での消費者の試食アンケートを実施。いずれも高い評価があり、茨城県はブランド力のある商品として販売強化に挑んでいます。
「恵水」は国内市場だけではなく冷蔵庫で長期保存ができることから、海外への輸出も予定されています。生産への期待は高く、収穫量の確保と普及の拡大を目指して、古い苗木の植え替え時の「恵水」への移行の促進や定期的な試食販売などのPRイベントも積極的に行われています。