全国で活躍する盲導犬は大勢によって支えられていた

全国で活躍する盲導犬は大勢によって支えられていた
道路交通法は目が不自由な方に対して白杖または盲導犬の利用を義務づけていますが、盲導犬は国家公安委員会が指定した訓練を受けている必要があります。そして、この盲導犬の育成には多くのボランティアが携わっているのです。

盲導犬として活躍している犬種

盲導犬として活躍している犬種
(写真:photoAC)

街中で見かける盲導犬で多い犬種はレトリーバーですが、実は日本で最初の盲導犬は1939年にドイツから輸入されたシェパードでした。

警察犬のイメージが強いシェパードは、忠誠心が強く訓練しやすいものの、ピンと立った耳や精悍な顔つきなどの威圧的な外見が周囲の人に緊張感を持たせてしまうため、あまり用いられていません。

一方、レトリーバーは人の補助をするために改良された犬種で、訓練しやすく人の補助を楽しめる性格です。また、垂れた耳と愛らしい目が周囲を和ませるため、盲導犬をはじめとする多くの介助犬に用いられています。

そのほかにも、ダルメシアンやドーベルマンなどの狩猟犬も盲導犬に向いている犬種ですが、見た目の可愛さからレトリーバーが好んで用いられています。

 

盲導犬が訓練で一人前になるまで

盲導犬が訓練で一人前になるまで
(写真:photoAC)

盲導犬は、適正のある親から生まれた候補犬を「身体障害者補助犬法」に基づき指定された施設で訓練し、試験を通過させることで育成されます。

子犬が生まれてから訓練を開始するまで

盲導犬の候補犬は、生後二ヵ月までは母犬のそばで育てられ、二ヵ月目からパピーウォーカーと呼ばれるボランティア家庭に移され、一歳になるまでそこで人間と暮らすためのルールを学びます。

盲導犬になるための主な訓練内容

2002年に制定された「身体障害者補助犬法」により厚生労働省に指定された訓練施設で盲導犬になるための訓練が行われることになっており、その施設を持つ団体は2017年3月時点で11団体あります(厚生労働省社会 援護局 障害保健福祉部)。

(公財)北海道盲導犬協会(公財)関西盲導犬協会
(公財)東日本盲導犬協会(社福)兵庫盲導犬協会
(公財)日本盲導犬協会(公財)九州盲導犬協会
(公財)アイメイト協会(公財)日本補助犬協会
(社福)中部盲導犬協会(一財)全国盲導犬協会
(社福)日本ライトハウス

候補犬の訓練は一歳から始まります。そして、最初に「Good」という言葉の意味を覚えさせますが、これは行動の成否を候補犬自身が判断できるようにさせるための準備です。

次は基本訓練として5つの命令「シット(座れ)・ダウン(伏せ)・カム(来い)・ヒール(左に付け)・ウエイト(待て)」を教えます。

それができるようになると誘導訓練としてのタウンウォークに移行します。この訓練では盲導犬としての3つの役割「角を教える・段差を教える・障害物を避ける」を教えます。

また、実際の外出を想定した「エスカレーターに乗る」「駅のホームを安全に歩く」「電車の乗り降り」といった訓練も行われます。

それらの訓練の後、試験を通過した盲導犬は実際にユーザーとなる人との共同訓練に臨みます。この段階では、主にユーザーが盲導犬への指示の出し方や管理の仕方を学びます。

盲導犬の仕事内容

半年から一年の訓練を終えた盲導犬の候補犬は、3度の試験を通過することで晴れて盲導犬としての仕事に就くことができますが、その合格率は全体の3割~4割ほどです。

そして、盲導犬になれた場合は、訓練を受けた3つの役割「角を教える、段差を教える、障害物を避ける」を主な仕事として行っていくことになります。

盲導犬が引退したら

盲導犬が役割を果たすのは10年程度です。犬の10歳は人間の60歳ほどのためまだ元気な年齢ですが、元気なうちに引退して、後は飼育ボランティアの元でのんびり過ごすことが、幼いころからずっと人のために働いてきた盲導犬へのご褒美なのです。

 

盲導犬へのさまざまなボランティア活動

盲導犬へのさまざまなボランティア活動
(写真:photoAC)

盲導犬を必要とするユーザーに少ない負担で届けるため、この事業は多くのボランティアと寄付金に支えられて成り立っています。ボランティアには、候補犬や引退犬の飼育をする「飼育系ボランティア」と、空き時間に参加できる「その他ボランティア」があります。

飼育系ボランティア

盲導犬は人を誘導する力を持った中型犬ですので、飼育系ボランティアになるには空間的・時間的ゆとりが必要になります。具体的には以下の条件があります。

・家族の一員として室内飼育ができること
・留守がちにならず、しつけのため常に監視できること
・犬の体重管理、健康管理などケアができること
・ほかの犬を飼っていないこと

そのほかにもボランティアによっては追加の条件がありますが、いずれも二週間程度のトライアル期間が設けられているため、自分がどのボランティアに向いているのか迷っている方でも安心して始められます。

パピーウォーカー

パピーウォーカーは、「パピー(子犬)」と「ウォーカー(一緒に歩く)」で子犬を散歩させる人を意味し、子犬の飼育としつけをする飼育ボランティアのことを指します。

パピーウォーカーになるには、

・訓練施設の周辺に居住している
・移動手段として車を持っている
・訓練センターのレクチャーに参加できる
・月々4000円~5000円の食費や治療費を負担できる

といった条件があります。

パピーウォーカーは訓練を担当するのではなく人と候補犬が仲良くなるためのボランティアのため、犬との生活を楽しめる人が適しています。

引退犬飼育ボランティア

引退した盲導犬は、飼育ボランティアの元でのんびりと暮らすことができます。それが分かっているからこそ盲導犬ユーザーは盲導犬の将来を心配せずに受け入れることができるのです。

引退犬飼育ボランティアは室内で生活するための訓練が行き届いている犬を飼うことになるので、改めてしつけをする必要がありません。

キャリアチェンジ犬飼育ボランティア

盲導犬に向いていないと判断された候補犬は、盲導犬のPRを行う犬や手足が不自由な人への介助を行う犬となりますが、そのような犬を飼育するのがキャリアチェンジ犬飼育ボランティアです。

盲導犬にはなれなかったキャリアチェンジ犬も人と一緒にいることが大好きな犬ですから、家族の一員として与えられた役割を果たしてくれます。

繁殖犬飼育ボランティア

繁殖犬飼育ボランティアは、盲導犬の出産を行う親犬を飼育するボランティアです。交配・出産といった繁殖自体は訓練施設を有する団体で行われ、子犬が生後50日に達した時点で繁殖犬はボランティア宅に帰宅します。また、繁殖犬としての役割を終えた後も引退犬ボランティアとして一緒に暮らすことが可能です。

このボランティアは、ペットの犬と同時飼育はもちろんのこと、多数の繁殖犬を飼育することもできません。

その他ボランティア

ケンネルボランティア

ケンネル(犬舎)の清掃・犬の散歩・シャンプーなどの手伝いを行うボランティアです。たくさんの可愛い子犬に囲まれた活動は、成長を見守っていく喜びに満ちています。

イベントボランティア

イベント会場の設営・片付け・受付・誘導・募金活動などを行います。室内が狭いなどの理由で飼育はできないけれど犬が好き、という人に向いているボランティアです。

裁縫ボランティア

盲導犬が着用するマナーコートを作るボランティア。布などの素材は支給され、指定の形のものを作ります。作業は大変ですが、色とりどりのマナーコートを着た盲導犬を見るだけで癒やされること間違いなしです。

 

盲導犬は電車に乗れる?

盲導犬は電車に乗れる?
(写真:photoAC)

バス・電車・航空機などでの移動は身体障害者にとってハードルの高いものですが、さまざまな法整備により、盲導犬の交通機関における同乗は認められています。しかし、実際の利用場面では周囲の協力と盲導犬ユーザーの周囲への配慮が欠かせません。

もしも盲導犬に出会ったら

盲導犬には力の強い中型の犬種が用いられますので、信号待ちなどでいきなり現れると驚いてしまうこともあるでしょう。しかし、周囲の動揺は盲導犬の注意力を低下させてしまうことがあるため、普段から盲導犬の存在が日常のことだと思って生活することが協力への第一歩です。

盲導犬は人と遊ぶのが大好きな犬ですから、なでられたりすると仕事中であることを忘れてしまうことも。そのため、盲導犬に出会ってもなでたりさわったり、じっと見つめたりしてはいけません。

盲導犬の食事は時間や種類が決められているため、仕事中の盲導犬に餌をあげてはいけません。もし一度でも人間の食べ物をもらってしまうと、ユーザーや周辺の人の食べ物に興味がわいて欲しがるようになるからです。

手伝いをしたい場合は、いきなり盲導犬やユーザーに触れたりせず、「お手伝いすることはありませんか?」などと声をかけましょう。

もしユーザーに手助けをお願いされた場合には、右側に立って左肘か左肩につかまってもらい、誘導しましょう。盲導犬は左側に付くように訓練されているからです。

盲導犬はバスや電車・飛行機には乗れるのか

2013年に制定された「障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)」で、差別解消に向けて「合理的配慮」を求めていること、「身体障害者補助犬法」に基づきほかの利用者に損害を与えるなどのやむを得ない事情がない限り公共交通機関の利用を妨げられないことにより、バス・電車・航空機などへ盲導犬をともなって乗車することが権利として認められています。

しかし、法律で認められているからといっても「混雑する時間帯を避ける」などのマナーは必要です。

 

人間と犬との関係を通して人と人との関わりも考え直すことにつながる盲導犬事業は、ボランティアによって支えられています。

そして、視覚障害者の外出をサポートしてくれる盲導犬は、ユーザーだけではなく社会全体を障害者差別のない未来へと導いてくれるでしょう。

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