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児童扶養手当
長い間母子家庭のみが対象とされてきましたが、2010年8月からは父子家庭にも適用されるようになった児童扶養手当。具体的にはどのようなものなのしょう。
児童扶養手当の定義
児童扶養手当とは、夫婦の離婚などによって父または母が一人で児童(18歳未満で就労を行っていない子ども)を育成している家庭の生活の安定や自立の促進に寄与し、児童の幸福で安定した生活を推し進められるようにと支給される手当のことです。
つまり、母子(父子)家庭などの親または親代わりの人(または法人)に対して、子育てすることを条件として支給される手当です。
支給時期
児童扶養手当は、
- 4月(12月~3月分)
- 8月(4月~7月分)
- 12月(8月~11月分)
にそれぞれ支給される制度です。
児童扶養手当の対象者
対象児童は、
- 父母が婚姻を解消した児童
- 父(または母)が死亡した児童
- 父(または母)が障害の状態にある児童
- 父(または母)の生死が明らかでない児童
- その他政令で定める児童
となっています。
支給額
対象は18歳に達した後の最初の3月31日までの児童で、支給額は下表のとおりです(2018年4月から2019年3月分までの金額)。
支給月額 | 全額支給 | 一部支給※ |
---|---|---|
1人目 | 42,500円 | 10,030円~42,490円 |
2人目 | +10,040円 | +5,020円~10,030円 |
※所得に応じて10円単位で変動
また、この制度には所得制限があり、その内容は下表のとおりとなっています。
扶養親族数 | 受給資格者本人 | 扶養義務者 | |
全額支給 | 一部支給 | ||
0人 | 19万円 | 192万円 | 236万円 |
1人 | 57万円 | 230万円 | 274万円 |
2人 | 95万円 | 268万円 | 312万円 |
3人 | 133万円 | 306万円 | 350万円 |
以降、人数が一人増えるごとに38万円が金額に上乗せされます。
所得制限の計算例
所得制限の金額を超えた場合には児童扶養手当の支給が停止してしまいますが、この所得額は
- 申請をした日が1月~6月の間の場合:前々年の金額
- 申請をした日が7月~12月の間の場合:前年の金額
を元に計算されます。
また、申請者はもちろんのこと、申請者と同居(生計が同じ)しており、なおかつ所得がある人全員が所得制限のチェック対象です。
以下の家族構成を例に挙げて紹介していきます。
- シングルマザー(前年の所得:102万円)
- 18歳未満の児童(中学生)
- 祖父(前年の所得:300万円)
- 祖母(専業主婦のため前年の所得は0円)
- ※一緒に住んではいるが、住民票の世帯は「母・子」「祖父・祖母」と別になっている
この構成の場合、所得があるのはシングルマザーと祖父の二人ですので、それぞれ上表で照らし合わせましょう。
シングルマザーは、
- 扶養親族一人(子どもが一人)
- 所得:102万円
のため、受給資格者本人の扶養親族数一人の部分を確認します。全額支給の57万は超えているものの、一部支給の230万円以内に収まっているので、シングルマザーは一部支給の対象者です。
祖父は、
- 扶養親族一人(専業主婦の祖母)
- 所得:300万円
- 3つめの文
のため、扶養義務者の扶養親族数一人の部分を確認します。所得が274万円を超えているため、対象者ではありません。
児童扶養手当は、所得者の誰か一人でも所得制限の基準を上回ってしまうと支給が停止されてしまいます。そのため、このケースでは支給を受け取ることができません。
児童手当
児童手当は、児童の健全な育成を目的とする制度です。児童扶養手当と名称が似ており混同されやすいですが、別の法律によるものです。
児童手当
児童手当とは、父母など保護者が子育てを第一に考えているという認識を前提として、生活の安定を保証するとともに未来の社会を担っていく子どもの健全なる成長への手助けとなるよう「子ども・子育て支援」を適切に行っていく、というものです。
つまり、子どもの親または親代わりの人(または法人)に対して、子育てすることを条件として支給されます。
児童扶養手当との違いは、ひとり親世帯でなくとも支援対象になる点です。また、ひとり親世帯であれば、児童手当+児童扶養手当という受給も可能となります。
支給時期
児童手当は、
- 2月(10月~1月分)
- 6月(2月~5月分)
- 10月(6月~9月分)
にそれぞれ支給されます。
児童手当の対象者
児童手当は、子が生まれてすぐに申請できます。遅れて申請することもできますが、さかのぼっての適用はされない※ので、月末近くに子どもが産まれた場合には注意が必要です。
支給額
子どもの年齢に応じて定められた額が支給されます。収入が多いと減額されますが、特例給付が適用されます。
支給月額 | 3歳未満 | 3歳以上 小学校修了前 | 小学校修了後 中学校修了前 | 特例給付 |
---|---|---|---|---|
1人目 | 15,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 5,000円 |
2人目 | 15,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 5,000円 |
3人目以降 | 15,000円 | 15,000円 | 10,000円 | 5,000円 |
所得制限については、毎年6月1日の現況届を自治体に提出すると、自治体によって判断されます。
母子家庭で生活保護は受給できるか
児童扶養手当や児童手当を収入に加算しても最低生活を維持できない場合には、不足分を生活保護費で補うことができます。
生活保護とは
生活保護はあくまで、利用できる資産や能力などあらゆるものを活用したうえで、最低限度の生活を維持できないときに受けることができる支援です。
生活保護のメリット
生活の安定が第一のメリットです。生活保護は
- 日常生活に必要な生活費
- 家賃などの住宅費
- 義務教育に必要な教育費
の3つを最低生活費の判断に用います。
そのほか、生活保護のなかには「生業扶助」があり、これを利用して小規模な事業を始めることもできます。また、資格取得費では自動車運転免許の取得も可能です。
生活保護のデメリット
最低生活費の5割を超える預貯金をはじめ、株券・ブランド品などを持つことはできません。生命保険は原則解約となるなど、将来の自立に備えることもできません。
なお、土地や建物は、住居とするもので著しく大きくなければ所有は可能。自動車も必要性が認められる場合は所持可能です。
生活保護によってほかの手当に影響はあるか
生活保護法の第4条に「あらゆるものを、その最低限度の生活維持のために活用することを要件として行われる」とあるため、ほかの手当を受給すると生活保護費は減額されます。ただ、最低生活費を超えていなければ生活保護そのものが打ち切られることはありません。
生活保護で受けられる扶助
生活保護では、以下の8つの扶助を受けることができます。
- 生活扶助…衣食その他日常必需品
- 教育扶助…義務教育のための教科書その他学用品、通学用品、学校給食
- 住宅扶助…住居、補修その他維持に必要なもの
- 医療扶助…診察、薬剤、手術および治療のための処置・移送
- 介護扶助…介護、福祉用具、住宅改修、介護予防・移送
- 出産扶助…分べん介助、分べん後の処理、脱脂綿などの衛生材料
- 生業扶助…生業に必要な資金、器具、資料、技術の修得、就労に必要なもの
- 葬祭扶助…死体の運案、火葬または埋葬、納骨その他葬祭に必要なもの
このうち生業扶助は自立支援のための扶助であるため、生活保護対象になる可能性のある世帯(保護基準より収入の多い生活困窮世帯)に対しても支給されることがあります。
各地域で実施されている母子家庭のための手当
各自治体には、上記の支援に上乗せする形で支給される制度があります。住んでいる自治体の窓口やホームページで調べてみましょう(以下は全て2017年4月1日時点の内容)。
足立区 児童育成手当
- 対象者 :対象児童を扶養するひとり親世帯または一方が病気や障害などで働けない世帯への支援
- 支給額 :月額13,500円(障害手当は15,500円)
- 所得制限:所得制限あり(児童扶養手当より緩い)
- 支給日 :児童手当と同じ
- 対象児童:18歳に達した年度の末日までの足立区内に住所がある児童
- 特徴 :児童扶養手当と重複して受け取れる
盛岡市 ひとり親家庭等医療費助成制度
- 対象者 :対象児童を扶養するひとり親世帯または一方が病気や障害などで働けない世帯への支援
- 支給額 :自己負担額から入院外1月750円、入院1月2500円を差し引いた額(3歳児未満と住民税非課税世帯は自己負担額全額の支給)
- 所得制限:児童扶養手当に準じた所得制限あり
- 支給日 :自己負担額を支払った2ヵ月後
- 対象児童:18歳に達した年度の末日までの盛岡市に住所がある児童
- 特徴 :岩手県外での医療行為にも適用される
名古屋市 教育訓練給付金制度
- 対象者 :対象児童を扶養するひとり親世帯への支援
- 支給額 :入学金、受講料の60%(上限20万円、1万2000円未満は支給しない)、雇用保険の教育訓練給付を受ける場合は当該金額を差し引いた額
- 所得制限:児童扶養手当と同等の所得制限あり
- 支給日 :教育訓練の講座ごとに差はあるが、おおむね講座修了後
- 対象児童:20歳未満の名古屋市に住所がある児童
- 特徴 :対象児童の親に支給される
千葉市 母子及び父子家庭等医療費助成制度
- 対象者 :対象児童を扶養するひとり親世帯または父母のいない児童を養育する世帯への支援
- 支給額 :自己負担額の全額(保険診療適用外は除く)
- 所得制限:児童扶養手当に準じた所得制限あり
- 支給日 :自己負担額を支払った翌月以降
- 対象児童:18歳に達した年度の末日までの千葉市に住所がある児童
- 特徴 :入院時の食事療養費も助成対象
東京都 都営交通無料乗車券発行規程
- 対象者 :身体障害者、生活保護世帯、児童扶養手当受給者への支援(身体障害者以外は1世帯1名)
- 支給額 :ー
- 所得制限:児童扶養手当に準じた所得制限あり
- 支給日 :使用者の誕生月の翌月1日から1年間(更新可能)
- 対象児童:ー
- 特徴 :通学定期券も無料になる
今回紹介した支援制度はいずれも現住所を対象としており、国籍は問われません。これらの支援制度が目当てで来日する外国人も多いため、人口減少からの脱却のためとはいえ、このことが批判の的にもなっています。しかし、制度を悪用する人を減らすために本当に必要とする人を支援できなくなることはだけ避けなければなりません。