移住・定住「Iターン」地域活性化のために行われているさまざまな支援制度

「Iターン」地域活性化のために行われているさまざまな支援制度

住み慣れた土地を離れ、理想的な仕事や生活を求めて新たな場所へ移住する人が増えています。このようなスタイルを受け入れ、地域活性化へとつなげる支援制度について紹介します。

Iターンの意味(U・I・Jターン)

Iターンの意味(U・I・Jターン)

進学や就職などで生まれ故郷を出て自分の住みたい地域に移住すること、またはその逆などを、アルファベットの形になぞらえて「Uターン」「Iターン」「Jターン」と呼んでいます。

Uターン

生まれ育った地域から一度離れ、時を経て再び故郷へ戻り移住することを指します。都心部で働き、そのスキルを活かして故郷に戻り新たな生活を始める人がこのケースにあたります。

Iターン

興味のある仕事や生活環境を求め見知らぬ土地に移住し、新たな人生をスタートさせることを指します。

Jターン

進学や就職で地域から都心部へ出て暮らし、生まれ故郷ではなくその近くの地域に移住することです。「地元では就職が難しいが、せめて故郷の近くで暮らしたい」という人が、求職率や利便性を考えてこのような移住の形を選んでいます。

 

Iターン促進に向けてのさまざまな支援制度

Iターン促進に向けてのさまざまな支援制度

人口の減少や高齢化が進んでいる地域にとって、Iターンは地域活性化へとつながる重要な移住スタイルです。Iターン移住をより安心して選択してもらえるよう、受け入れ地域ごとにさまざまな支援制度が設けられています。

実際に行われている支援制度を、具体的な例を挙げて詳しく見ていきましょう。

出産支援

愛媛県伊方町では、出産時に助成される出産一時金とは別に、子どもの多い家庭に出産祝い金が支給されます。

2005年4月に始まったこの制度は、2001年4月以降に生まれた第3子以降の子どもに対してお祝い金が支給されるというものです。Iターン移住をした家族も対象となり、移住して一年以上経過してその後も定住する場合には支給されます。

例えば、18歳未満の子どもを4人育てている家庭の場合、3人目と4人目の子どもを対象にそれぞれ支給されます。もし第1子が18歳を迎えて最初の3月を過ぎている場合には、2人目の子どもが第1子とみなされ、4人目の子どもだけが支給対象となります。

子育て支援

子育て中の家族の買い物を支援し、直接的に生活を助ける制度を取り入れているのが埼玉県蓮田市です。

蓮田市は、「パパ・ママ応援事業」という名前の支援制度を設けており、埼玉県内の協賛店舗で買い物をする時に優待カードを提示することで、各店舗で定められた特典が受けられるようになっています。

中学生以下の子どもが対象となっているこのカードは、蓮田市の子ども支援課や各子育て支援センター、蓮田駅西口連絡所などの場所で配布されており、出産予定の人も受け取ることができます。

結婚支援

福岡県の工業都市である北九州市に隣接し、都市部のベッドタウンとしても注目されている芦屋町では、結婚して家族全員が幸せに暮らしていくための住宅に関係する支援に力を入れています。

「民間賃貸住宅家賃補助制度」は、子育て世代の家族の転入と定住を促進するための制度です。新たに転入する家族が芦屋町の民間住宅を借りる際に、最長3年を目安として月2万円分の地域商品券が補助されます。

地域密着型の支援を行うことで、Iターン家族のサポートと地域活性化へのアプローチを行っています。

医療支援

子ども医療費の助成制度は、特にIターンなどで地域活性化を目指している自治体が力を入れている傾向があります。

大阪市は、これまで15歳までだった子ども医療の助成制度を改正、2017年11月より18歳まで支援が受けられるようになりました。対象となる年齢の子どもが通院した場合、一医療機関につき最高500円の自己負担金で済み、薬局での支払いはありません。

北海道では、大学や専門学校などに通っている22歳までの子どもについても助成対象としている自治体があります。

移住支援

兵庫県洲本市では、移住支援として家を借りる際に補助金を支給する制度が行われています。

「お帰りなさいプロジェクト」と銘打たれた定住促進事業では、洲本市に定住を希望しているI・Uターンの若年層の新婚家庭に家賃補助や住宅取得の奨励金を交付し、子育をてしやすい環境作りをサポートしています。

新居購入の際の支援

より定住支援に力を入れているのが石川県のかほく市です。

定住を目的としてマイホームを新築する若い世代に対して最大200万円にもなるマイホーム取得奨励金を交付するなど、定住を促進するための事業を展開しています。

新築だけでなく、定住をするために物件を借りたり住宅を購入した人に対してもさまざまな補助金の制度が設けられています。

空き家バンク制度

空き家バンク制度とは、人口減とそれにともなう空き家が増えて放置されている問題を解決するために、各地方自治体やNPO団体が力を入れ始めた制度です。

登録された空き家は移住希望者や住居を探している人に情報提供され、貸主と借主の架け橋となります。自治体によっては補助金が支給されるケースもあり、特に土地勘のない移住希望者にとってはメリットの多い制度となっています。

しかし、基本的には自治体やNPOから物件を紹介されるだけなので直接交渉となるケースが多く、契約内容で合意が得られなかったり、借りた後にトラブルが発生する可能性も少なくありません。

利用する場合には、システムをよく理解した上で、後々トラブルとならないよう慎重に話を進めるようにしましょう。

 

Iターン転職のメリット・デメリットと支援内容

Iターン転職のメリット・デメリットと支援内容

大きな生活環境の変化となるI・Uターン。より安定した生活を実現するためには、メリットとデメリットを知ることが必要です。

I・Uターン転職のメリット

実際にI・Uターンを経験した人が一番実感していることは、「生活の流れがゆっくりになること」です。

満員電車で毎日往復2時間かかる通勤時間も、I・Uターンではほぼありません。空いた時間を家族サービスや趣味に使い、生活のONとOFFの切り替えができることが一番の魅力です。

待機児童の問題もほどんどないため、子育て支援に力を入れている地域では共働きと子育てを両立しやすく、ライフワークバランスが取れるというメリットもあります。

I・Uターン転職のデメリット

その一方で、地方での暮らしで考えもしなかった問題に悩む人もいます。

これまでのキャリアを活かした仕事が見つかりにくかったり、その地域独特の人付き合いや慣習に慣れないなど、思いもよらないことがストレスとなるケースがあります。

地域密着型の企業が多い地方では営業も兼ねた地域貢献や付き合いも盛んなため、I・Uターンの転職を考える際には、仕事内容だけではなく具体的な仕事の流れまでよく確認することが重要です。

転職支援の例

I・Uターンを機にこれまでのキャリアを活かして起業する人に対して、支援事業を行なっている地方自治体もあります。

福井県大野市では「元気チャレンジ企業支援事業補助金」という事業が実施され、産業の活性化に貢献している企業に対して補助金を支給しています。

対象となるのは、調査研究・商品開発・販路開拓事業や設備事業などの面で地域貢献に役立つ事業を展開している企業で、そのほかにも認定委員会において認定された企業に対して補助金が支給され、地域活性化が図られています。

就農者への支援

第一次産業である農業に従事する若者に対して支援を行なっているのは、宮城県南三陸町の「青年就農給付金事業」です。

作物の生産は初期段階では安定させることが難しく、農業に従事しても安定した成果をあげることは容易ではありません。南三陸町は、満45歳以下で農業に従事している人が意欲を持って継続して就農し、さらに規模を拡大していくことを目的として給付金事業を実施しています。

 

住む場所を変えることで「本来の自分へ還る」I・Uターン。これを応援するために、各自治体では支援制度の輪が広がっています。