特産品美濃和紙の特徴・良さと歴史|世界の無形文化遺産登録の理由はこの魅力!

美濃和紙の特徴・良さと歴史|世界の無形文化遺産登録の理由はこの魅力!

清流長良川と自然豊かな山々に囲まれた岐阜県の中心部に位置する美濃市では、品の良さ・しなやかさ・強度などが特徴的な美濃和紙作りが地域の産業として継承されています。今回は、そんな美濃和紙の長い歴史と世界の無形文化遺産にも登録された魅力について紹介していきます。

美濃和紙の歴史

美濃和紙の歴史

奈良時代には戸籍用紙として使用

美濃和紙とは、岐阜県美濃市で製造される和紙のことです。

古くから和紙産業とともに歩んできた美濃市は、良質な材料と清流長良川の水質に恵まれた日本の代表的な和紙の産地として知られています。

正倉院文書には「奈良時代の戸籍用紙として使用されているのは美濃和紙だった」との記録が残されていることから、奈良時代にはすでに製造されていた非常に歴史のある和紙であることが分かります。

仏教の伝来とともに紙の需要が進むと、丈夫で美しいと都で評判の美濃和紙は贈答品としても用いられるようになりました。

現存する日本最古の戸籍も美濃に関係
奈良時代が始まる710年からわずかに遡ること8年、702年(大宝二年)に作成された戸籍が今でも存在しています。きっかけは701年の大宝律令で、戸籍を集めることによって各地の人々の情報を書面を通じて把握し、税や兵士の徴収、さらには班田のためのベースとしたのです。偶然にも天皇家の宝物庫の正倉院にあったこの戸籍の巻末には、美濃国の戸籍編集者の署名が確認できます。

紙市場によってさらに発展

室町時代には美濃周辺で紙の市場が開かれ、全国から紙を買いにくる人が集まり、紙作りはさらに発展を遂げていきます。また、江戸時代には幕府御用達として障子紙としても納められるようになります。

もともと美濃は紙の原料である良質の楮(こうぞ)が多く採れ、その技術レベルもほかの地域に比べて高く、美しく頑丈であることから、国内だけでなく中国大陸にも良質な和紙として広く伝わっていたと言われています。

美濃和紙が世界遺産に?

美濃和紙が世界遺産に?

ユネスコ無形文化遺産への登録

現代に続く美濃和紙は長い歴史と高い技術レベルが認められ、2014年に「和紙:日本の手漉和紙技術」として島根県の石州半紙・埼玉県の細川紙とともにユネスコの無形文化遺産に登録されました。

無形文化遺産は、世界各地で人から人へ伝えられる無形の文化(文学・芸能・儀式・催事・伝統工芸技術など)を伝承していくために国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によって設けられた制度です。

無形文化遺産も世界遺産と同じくユネスコの条約により保護される対象ですが、世界遺産は人工・自然によって生まれた歴史的な遺跡や建造物(日本では厳島神社や、石見銀山遺跡、原爆ドームなど)など、目に見えて触れられる有形の遺産を保護する対象とするのに対して、無形文化遺産は、無形の文化も国の歴史や文化と結びついた重要な文化遺産であるという考えに基づき、国際的な水準で保護していくという枠組みになっています。

日本の無形文化遺産
日本における無形文化遺産としては、2008年に能楽・人形浄瑠璃文学・歌舞伎が登録されたのをはじめとして、記憶に新しいところでは2013年に日本人の伝統的な食文化である和食など、2022年12月時点で22件が登録されています。さらに、23件目の登録を目指して、風流踊(ふうりゅうおどり)に関する提案書が2023年3月末までにユネスコに提出される予定になっています。

なぜ美濃和紙は無形文化遺産に登録されたの?

日本国内のさまざまな地域で和紙作りが行われていますが、美濃和紙が無形文化遺産に登録されたのは、

  • 原料に楮(こうぞ)のみが使用されている
  • 日本独自の伝統的な技法を用いて製造されている

ことが理由として挙げられます。

日本産の楮はほかの和紙の原料よりも光沢があり、美しく白い和紙を漉くことができると言われています。また、流し漉きは紙の強度を上げられる日本固有の紙すきの技法として称賛されています。

東京オリンピック・パラリンピックの表彰状への採用

美濃和紙は、2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの入賞者に渡された表彰状に採用されたことでも有名です。

全国手すき和紙連合会の活動のもと、当初は、同じくユネスコ無形文化遺産に登録されている3つの和紙(他は石州半紙と細川紙)と合同での製作が検討されていましたが、異なる特徴を持つ和紙で統一規格の表彰状を作ることは現実的に難しく、最終的に美濃和紙にスポットライトが当たりました。

この表彰状には後述する手漉きの和紙の本美濃紙が使用され、入賞者の実感・思い出をより一層深めたに違いありません。

 

美濃和紙の特徴

美濃和紙の特徴

美濃和紙は、和紙のなかでも白くて美しく、しなやかな柔らかさを持ちながらも強度が高いことが特徴です。また、「流し漉き」の方法で漉かれるため、紙面にムラがなく光に透かすと繊維が整然と絡み合っていることが分かります。

薄い紙でありながら布のように丈夫で美しい美濃和紙は、障子紙や保存用文書などに使用されてきました。

美濃和紙と本美濃紙

美濃和紙は、機械で漉く和紙を含めた「美濃で作られる和紙全般」を指し、美濃和紙ブランド共同組合によって生産・加工・販売などの管理が行われています。

一方「本美濃紙」は、美濃和紙の一つで本美濃紙保存会による手漉きの和紙のことです。

本美濃紙在来書院保存会(後の「本美濃紙保存会」)は、大正から昭和にかけて伝統的な和紙の生産者が減少したことから、職人の伝統技術の継承・品質維持を目的に地元の有志により誕生しました。

本美濃紙は楮のみを原料とし、抄造(しょうぞう)にトロロアオイを用いて伝統的な技法や規定に基づき製造されており、現在、本美濃紙を漉くことができるのは本美濃紙保存会に登録されている会員のみです。

また、美濃和紙のなかでも指定されている条件を満たしたものだけが本美濃紙として認められるため、美濃和紙の全製品における一割ほどと言われています。

手漉きと機械抄き

美濃和紙には、手漉きによるものと機械抄きで作られるものの二種類があります。

手漉き

一枚ずつ職人が手作業で丁寧に漉いていく手漉きには「流し漉き」と「溜め漉き」という方法があります。

伝統的な流し漉きは日本独自の技法と言われており、木の皮の繊維にネリと呼ばれる植物性の粘液を混ぜ、紙すきの道具ですくい上げて全体を縦・横に揺り動かして捨て水を行いながら何度も繰り返し漉いて層を作り、余分な材料を流しながら作られます。

「雁皮(がんぴ)」「三椏(みつまた)」「楮(こうぞ)」などがあり、横にも縦にも破れにくい頑丈な紙を作ることができるのです。

前述の本美濃紙は、この手漉きの技法で作られています。

溜め漉きは、中国から伝わった紙漉きの技法で、一枚ごとに紙すきの道具へ紙料液を入れ、揺り動かしてすくい上げたまま放置し、水を落としながら紙の層を作っていく方法です。

この技法により、厚さのある紙を作ることができます。

機械抄き

和紙の伝統的な製法である流し漉きの手法を機械で製造する方法です。

伝統的な原料を使用することで手漉きと同様に和紙の持つ風合いを保つことができ、丈夫で均一に大量の和紙を作れます。

 

美濃和紙の良さを人気急上昇中の靴下で楽しむ!

和紙なのに靴下は作れるの?

和紙糸は、和紙の主原料である耐水性が高く強靭なマニラ麻を使用しており、天然素材のためエコロジー。吸水性と放湿性にも優れており、麻糸と同様に清涼感があり非常に軽いことが特徴です。

この和紙糸を用いて作られたのが美濃和紙の靴下です。

松久永助紙店 和紙の靴下 レディースソックス

松久永助紙店は、1876年に美濃和紙の卸店として創業し、美濃和紙をはじめとして靴下やタオル・紙糸の販売など新商品開発に力を入れている老舗の企業です。

和紙糸で作られる靴下は、綿素材に比べて1.3倍もの吸湿性と吸水性を持つと言われています。

そのため夏は涼しく、冬は空気の層により暖かく足を包む効果があります。また、吸湿効果が高いことから抗菌防臭効果も期待できる靴下なのです。

さらに、和紙は素材の特性から、何度履いても表面が毛玉で覆われないことも利点です。

てぶくろ屋さんがつくった 美濃和紙 先丸ソックス

1300年以上の歴史と伝統を誇る美濃和紙を素材に使用した靴下は、優れた消臭効果とサラッとした履き心地が新感覚のソックスです。

糸そのものに消臭機能があるため洗濯してもその効果が持続。取り扱いも楽で、丈夫かつ快適な素材です。

 

奈良時代から大切な記録を残すための紙として使用されてきた美濃和紙は、その耐久性と美しさからいつの時代でも重宝されてきました。

ユネスコの無形文化遺産にも登録された美濃和紙は、日本ならではの高い技術力を世界に発信する役割も担いつつ、今後も継承されていくことでしょう。