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県産原料100%使用?TheSAGA認定酒とは
「TheSAGA認定酒」とは、佐賀県が味と品質を保証した日本酒のことです。
2004年(平成16年)にスタートした「佐賀県原産地呼称管理制度」の認定は、毎年春と秋の2回行われ、有効期限は認定された日より1年間。純米酒と本格焼酎の2種類に分けられ、それぞれ規定が定められています。
質の高い酒造りができた背景には、佐賀県の豊富な原材料と環境も関係していますが、それだけではありません。蔵元同士が互いに切磋琢磨し、佐賀の酒を高める努力を続けてきたことも要因の一つでしょう。
認定の条件
TheSAGA認定酒として認定されるには以下の条件を満たしている必要があります。
純米酒の規定
- 1. 佐賀県産の米・水を100%使用している
- 2. 佐賀県内の蔵元が醸造している
- 3. 味・香りのバランスが良く、味覚検査に合格した純米酒である
本格焼酎の規定
- 1. 佐賀県産の米・水を100%使用している
- 2. 佐賀県内の蔵元が醸造・蒸留している
- 3. 味・香りのバランスが良く、味覚検査に合格した本格焼酎である
TheSAGA認定酒
特別純米 窓乃梅
佐賀市久保田町の窓乃梅酒造は、鍋島藩から「余剰米を利用した酒造り」を命じられた、という歴史を持つ佐賀県内最古の酒造。創業は1688年(元禄元年)と、たいへん古い歴史を持っています。
1860年(安政7年)の春に、風に舞った白梅が大量に仕込み桶に入るという出来事が起こります。杜氏(とうじ)は困惑しましたが、仕込み桶から馥郁(ふくいく)たる香りがあがっていたため、八代目当主である古賀六右衛門に報告。
豊かな香りとまろやかな味わいの酒は、10代藩主・鍋島直正にも献上され、お褒めの言葉をいただきます。「窓乃梅が香」はその際、直正公がしたためた歌に書かれたものです。
そのような背景を持つ窓乃梅は、佐賀県産米を100%、精米を60%仕込んだ特別純米酒。優れた香りと深みのある味わいが特徴で、木桶仕込みにより造られています。
2018年春のTheSAGA認定酒にも認定されており、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」などで提供されています。
純米吟醸 東長
「東長(あずまちょう)」は、佐賀の米どころ、嬉野市塩田町で造られています。
製造元である瀬頭酒造が創業したのは1789年(寛政元年)。「丸平正宗」の銘で販売された酒は、明治時代、大阪内国博覧会で一等金牌を受賞し、明治天皇へ献上されました。
大正時代には梨本宮殿下にも献上され、社名変更に合わせて新たな酒「東長」が発売されます。
名付け親は第19代内閣総理大臣・原敬。「あずまの国のおさ、東洋の王者にふさわしい」という言葉より、銘が付けられました。
明治・大正・昭和をとおして、さまざまな博覧会で受賞しており、GHQへの納品も行われています。
長東の原料には、地元産の山田錦や佐賀の華が使われ、酵母にも佐賀酵母を使用。やわらかでうま味が感じられて、華やかな香りも楽しめます。
伝統製法で造られる、「正直な酒」です。
地酒 天山
特別純米酒原酒「地酒 天山」を造っているのは、小城市小城町にある天山酒造株式会社。古くは祇園川河畔という立地で水車業を行っていた、という歴史を持っている会社です。
1861年(文久元年)に製粉製麺業を始め、造り酒屋から依頼された酒米の精米を行っていましたが、1875年(明治8年)、廃業する蔵元から頼まれて、酒蔵道具一式を購入。酒造業を始めることになります。
- 2代目は蔵
- 3代目は酒米をはじめとする農場全般
- 4代目は近代化
- 5代目はさらなる品質向上
にこだわわりを持ち、六代目となる現在でも、天山の伝統である先代こだわりを掲げながら優れた酒を造り続けています。
佐賀県産の米を使用し、60%精米で造られている「地酒 天山」は、天山山系の伏流水で仕込まれています。ホタルの名所でもある清らかな水は、ミネラルが多い硬水。濃厚でしっかりした味わいが特徴です。
海外での評価も高く、毎年ホノルルで開催されている全米日本酒歓評会では、過去何度も受賞しているほど。竹皮のパッケージも人気を集めています。
なぜ焼酎ではなく日本酒?
焼酎王国としての佐賀
焼酎王国とも言われるほど焼酎の人気が高い九州地方の中で、佐賀県は日本酒愛好家が多いため、日本酒県と呼ばれることもあります。
自然環境や歴史的背景もあり、酒造りが盛んになった佐賀県でしたが、時代が進むにつれてビールやチューハイなどさまざまなお酒が登場したり、焼酎ブームも起こったりしたことで一時は佐賀県内の日本酒消費量が減少し、焼酎消費量を下回ってしまいます。
蔵元も廃業するなど難しい状況に立たされましたが、蔵元同士が協力し合ってさまざまな取り組み行い、認知度をアップ。2011年(平成23年)に鹿島市の富久千代酒造の「鍋島大吟醸」が、国際酒類品評会の日本酒部門で最優秀賞を受賞し、再び注目を集めるようになりました。
地元佐賀県では、2013年(平成25年)、佐賀県産の日本酒で乾杯する習慣を広めようと「佐賀県日本酒で乾杯を推進する条例」も制定。
県内での活動も精力的に行われています。
佐賀で日本酒が造られるようになった背景
平野の広がる佐賀は日本有数の米どころであり、良質な伏流水も豊かという環境。江戸時代、10代目の佐賀藩主・鍋島直正公が米作りと酒造りを奨励し、県内各地には多くの酒造が建てられました。
最盛期の明治時代には、県内の酒造は700とも言われています。時代とともに蔵元の数も減ってしまいましたが、他県のように酒造が一部地域に固まることもなく、県内各地に酒造がおいしい酒を造り続けています。
佐賀の日本酒が世界一に
世界一認定の背景
上述したように、2011年(平成23年)、佐賀の富久千代酒造の鍋島大吟醸が、世界的な品評会で最優秀賞を受賞しました。
品評会は、毎年4月に行われている「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」。当初は「ワイン」部門のみで開催されていましたが、2007年(平成19年)に「SAKE」部門が設けられました。
審査は厳しく、二週間にわたって行われます。世界各国、数百人の審査員が出品されたワインや酒をテイスティング。
公平性を期すため、銘柄などは伏せたまま行われます。
2011年(平成23年)、206蔵元が出品した468銘柄から、まずゴールドメダル獲得品を認定。その中から優れている品にトロフィーが与えられます。
さらに、トロフィー授与品の中でも特に優れていると認められた品が「チャンピオン・サケ」となります。
上品で甘みを感じられる味と、軽い口当たりの鍋島大吟醸は、国内で行われている全国新酒鑑評会をはじめ、海外でも高い評価を得ており、全米日本酒鑑評会(The Joy Sake)でも、金賞・銀賞を何度も受賞しています。
佐賀県産日本酒の輸出量
佐賀の酒の輸出量は、年々増加しています。1996年(平成8年)に香港とアメリカへの輸出が始まって以降、佐賀県酒造組合が、さまざまな国からバイヤーを招き、商談会を行うなど精力的に活動。
契約締結となる会社が増え、2011年(平成23年)から2015年(平成27年)の4年間で、輸出量が5倍にもなりました。
2017年(平成29年)には17カ国にまで販路を拡大しています。
商談会を行った際の対応と結果を振り返り、今度の目標を定め、さらなる発展に努めています。
豊かな環境をもとに、藩の奨励を受けて始まった酒造りは、今や世界に認められるブランドとなりました。
県内各地の酒造が、互いに切磋琢磨しながら酒造りを行い、県をあげてアピール。世界に認められた佐賀の酒はさらなる発展を目指し、精力的に活動を続けています。