この記事の目次
食べて楽しむ「春の七草」とは
春の七草とは、1月7日に食べる7種の野菜(草)のことで、
- セリ
- ナズナ
- ゴギョウ
- ハコベラ
- ホトケノザ
- スズナ
- スズシロ
を指し、これらを用いた七草粥には邪気払いと無病息災の願いが込められています。
春の七草の覚え方
いざ春の七草の種類全てを覚えようと思っても、あまりうまくいかないこともしばしば。そこで、比較的簡単に覚えられる方法を紹介します。
短歌で覚える
最もオーソドックスな覚え方は、五七五七七という短歌のリズムに合わせてテンポ良く記憶する方法です。
- せり・なずな
- ごぎょう・はこべら
- ほとけのざ
- すずな・すずしろ
- 春の七草
多少強引で覚えにくいように感じますが、5分~10分ほど繰り返し唱えてみるといつの間にか身に付いているはずです。
春の七草に込められた意味と効果
せり
せり(芹)は日本原産の多年草で野山の水がある場所に自生し、奈良時代には食用されていたことが古事記や万葉集にも記されています。
秋田県の郷土料理であるきりたんぽ鍋の食材に使用されることでも有名なせりは、特有の強い香りとシャキシャキした歯ごたえが特徴的で、解熱・利尿・食欲増進などの効果があるとされています。
なずな
なずな(薺)はアブラナ科の草の一種で、風に揺れたときのペンペンという葉の音から別名「ぺんぺん草」と呼ばれており、日本各地に自生しています。
寒い冬の時期に貴重な野菜として重宝されており、解熱・利尿・止血効果があります。
ごぎょう
ごぎょう(御形)は、「おぎょう」とも呼ばれ、日本各地の道端などで自生しています。今ではヨモギを使用する草餅ですが、かつてはごぎょうが材料として用いられていました。
別名「母子草」と呼ばれ、春になるとつぶになって固まった黄色い花を咲かせます。咳やのどの痛みに効果があります。
はこべら
はこべら(繁縷)は別名「はこべ」とも呼ばれ、古くから空地や野原などでよく見られるなじみの深い草です。小さな葉が特徴で、さっと茹でて食べられます。
昔は、はこべらを炒り塩と混ぜて歯磨き粉として用いられていたこともあり、歯痛効果があるとされています。
ほとけのざ
ほとけのざ(仏の座)は、黄色い花を付けるキク科の「コオニタビラコ」。胃を整え、食欲増進などの効果があります。
すずな
すずなは(菘)、カブのことを指します。七草粥では蕪の白い実の部分ではなく葉を用います。
整腸作用や、消化促進の効果があります。
すずしろ
すずしろ(蘿蔔)は、大根のことです。すずなと同様に七草粥では葉の部分を使用します。
「ジアスターゼ」と呼ばれる成分があり、消化促進や咳止めの効果があります。
春の七草で七草粥
七草粥はいつ食べる?
七草粥は、正月7日「人日の節句」の朝、邪気を払って万病を防ぎ一年を無病息災で過ごせるようにと願って食べられる行事食。
6日の夜に包丁でたたいて細かく刻んだ七草を準備しておき、翌日7日の朝に粥に混ぜて食べるのが本来の食べ方です。
七草粥の由来
七草粥は、日本で古くからあった「若菜摘み」という風習と、中国から伝来して形となった「人日の節句」が結び付いたとされています。
若菜摘み
百人一首におさめられている光孝天皇が詠んだ歌にも、
「君がため 春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪はふりつつ」
とあるように、奈良・平安時代には若菜摘みについての記録が残されています。
人日の節句
人日の節句は中国で行われていた動物占いの風習に由来します。中国では、元日から一日ずつ鶏・狗・羊など異なる動物を当てはめ、各日に当てられた動物を占って一日その動物を大切にしました。
人日である7日目は人の日で、この1月7日にその年の運勢を占い、同時に邪気を払うため「七種菜羹(しちしゅさいこう)」が行われていたのです。
この1月7日に吸い物を食べる習慣が平安時代に中国から伝わり、日本で古くから行われていた若菜摘みと結び付いて、七草粥が食べられるようになったのです。
江戸時代には、幕府によって1月7日が「人日の節句」として五節句の一つに制定され、庶民の間でも七草粥を食べる行事が広まり、今に続いています。
春の七草の有名な産地
三島七草
三島七草とは、静岡県三島市の三島函南農業協同組合が栽培する七草です。三島市は、眼前に富士山を望み箱根西麓に位置することから、気候条件や土壌など露地野菜の栽培環境に恵まれている地域です。
品質が良くおいしい露地野菜の産地として知名度が高い三島市で栽培されている七草は、箱根西麓ブランドとしても認定され、多方面へと出荷されています。
西条の七草
愛媛県西条市で生産されている七草で、京阪神を中心に全国へ出荷されており、その生産量は全国トップクラスを誇ります。
環境庁(現在の環境省)の「名水百選」にも選ばれた「うちぬき」を利用しており、良質な水源により高品質でみずみずしい七草として人気です。
松平の七草
愛知県の中央に位置する豊田市松平地区にて、地元の農家が「松平の春の七草」として生産および出荷をしている地域特産品です。1982年より栽培が開始され、この地域では毎年1月の年始めに「春の七草粥を味わう会」も開催されています。
見て楽しむ「秋の七草」とは
春の七草は、七草粥にして食べることで邪気払いや無病息災へ願いを込めるのに対して、秋の七草は、野原に咲いた草花を鑑賞し秋の風情を楽しむものです。
その由来は、奈良時代の万葉集で山上憶良が詠んだ以下の2首の歌によるものとされています。
- 「秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花」
- 「萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」
一つ目の歌で「秋の野で咲いている草花は指折り数えれば7種類である」と説明をし、続けてその7種が詠まれています。
秋の七草それぞれの特徴
萩(ハギ)
秋を代表する花の一つで、秋のお彼岸にお供えする食べ物「おはぎ」の由来にもなっています。また、中秋の名月にはススキと一緒に萩の花を飾り、月を鑑賞する風習があるなど、秋の季節行事と結び付きの強い花です。
桔梗(キキョウ)
青紫色で星型のシルエットが美しく、武家の家紋にも用いられていた花です。桔梗の根を乾燥させて粉末にしたものは咳止めの薬用としても重宝されていました。
葛(クズ)
濃い赤紫色の花を咲かせるクズは生命力の強い植物です。風邪薬としても知られている「葛根湯(かっこんとう)」は、この葛の根を乾燥させた漢方薬です。
そのほか、葛湯や葛餅などの原料であるなどなじみの深い秋の花です。
藤袴(フジバカマ)
キク科で、淡紫色の花を咲かせます。花の弁の形状が袴に似ていることがこの名前の由来と言われています。
乾燥させると良い香りがするため、入浴剤や香水としても用いられています。
女郎花(オミナエシ)
黄色い花を咲かせる女郎花は、美女を圧倒するほど美しい花という説があるほど古くから美しい花として親しまれています。
女郎花を乾燥させたものには解熱・解毒などの作用があります。
尾花(オバナ)
尾花は「ススキ」の古語であり、イネ科の植物です。ススキの穂が動物の尾に似ていることから尾花と呼ばれていました。
月見の行事には、萩の花とともに飾って月見を楽しむ風習が残されています。
撫子(ナデシコ)
可憐で淡紅色の花を咲かせるナデシコは、日本の女性の美しさに例えられます。また、美しい草花として平安時代の読み物にもしばしば登場するほど古くから人気のある花です。
いかがでしたか。このように、七草はそれぞれに豊富な栄養を持つ歴史ある食べ物です。1月7日に七草粥を食べて、健康的な一年を過ごしましょう。