コンパクトシティとは?地域活性化への糸口となるか

コンパクトシティとは?地域活性化への糸口となるか
拡大の一途を辿ってきた都市が、少子高齢化社会となったいま、新たな再構築の時代を迎えようとしています。利便性を追求したまちづくりにはどのような影響があるのでしょうか。

コンパクトシティの形成に向けて

コンパクトシティとは

「コンパクト」と聞くと、小さくまとめられたイメージを持たれるかもしれません。しかし、コンパクトシティは都市の規模を小さくすることではありません。

買い物、通院、通勤通学、役所への届出。もしこれらを一度に行おうとした時、どのくらいの時間や移動距離を予測して生活していますか。それぞれの目的地がバラバラになっていると、とてあ一日では足りないでしょう。

このようなことを改善するため、生活上どうしても必要な施設や商業区域を一定の場所に配置し、公共交通機関や徒歩などで短時間に回ることができる範囲に居住区域を設けて、時間や距離の無駄を省いた生活を目指した都市。それがコンパクトシティです。

コンパクトシティ・プラス・ネットワーク

少子高齢化による人口減少は、拡大した都市にダイレクに影響を及ぼしています。特に、高齢化が進んでいる地方都市では福祉・医療機関や商業施設へのアクセスに問題があり、高齢者が安心して生活していく環境が整っていません。

国土交通省はこのような問題を解決するため、平成26年8月に都市再生特別措置法を一部改正、同年11月には地域公共交通活性化再生法の一部を改正し、住環境と地域の公共交通機関の再編へと乗り出しました。

コンパクトシティ・プラス・ネットワークとは、必要な施設とそれを利用する人の居住地を利便性のある土地へ集約するまちづくりと、それに連携する形で公共交通機関のネットワークを再構築するという施策です。

この仕組みは、立地適正化計画制度により進むコンパクトシティの構築と同時に、地方公共団体を中心にして公共交通機関のネットワークを構築していきます。

車を使わなくても公共交通機関でスムーズに移動することができ、高齢者の人も安心して暮らせるまちづくりを行う。それが、コンパクトシティ・プラス・ネットワークの最大の目標です。

 

コンパクトシティの現状と課題

コンパクトシティの現状と課題
出典:photoAC

コンパクトシティのメリット

生活の利便性を追求したコンパクトシティには、次のようなメリットが挙げられます。

・公共交通機関の発達による移動時間の削減
・行政施設や医療機関、商業施設へのアクセスの良さ
・地域コミュニティの活性化

居住区域と利用施設がある場所が分散している地域では、車での移動が不可欠になります。コンパクトシティはそれぞれの区域を集中させて公共交通機関で結ぶため、移動時間が大幅に削減され、車を所持する必要性も減ることになります。

公共施設や医療機関、普段の買い物へと気軽に出かけられる環境は、生活するうえで欠かすことができない大きなメリットです。職場や学校が近くなることで時間と心に余裕が生まれることも期待できます。

福祉・医療の面で不安を抱えている高齢者にとって、何かあった時にすぐに頼れる環境があることは大きな安心へとつながります。

さまざまな年齢の人が集まって暮らすコンパクトシティには多様性があり、地域活動が活発になることも期待されます。高齢者を見守ったり子育て世代を手助けしたりといった昔ながらの協力体制が整い、行政も統括しやすくなるのです。

コンパクトシティのデメリット

魅力あふれるコンパクトシティですが、それを実現するためには解決しなければならない課題も多くあります。

一つの地域に人が集まるということは、その分の土地を確保・整備して整えなければならないということです。商業施設や行政施設・医療機関の配置と居住区域の確保、それにともなうインフラ整備や公共交通機関の構築には、莫大な費用が必要となります。

また、人口密度が上がることでどうしても起こってくるのが居住環境の悪化です。もともと別の地域に住んでいた人が一つの場所に集まって暮らすことになるため、考え方や習慣が統一されていないことが多く、それを原因としたトラブルも少なくないのが現状です。

治安の悪化や騒音といった問題に頭を悩ませ、落ち着いた生活ができないことに不満を持つ住人も少なくありません。

利便性を重視しているコンパクトシティですが、それを実現するためには移動してくる住人への細かな配慮と目指すべきまちづくりの明確なイメージ、そして、充分な資金が不可欠なのです。

 

コンパクトシティの事例

コンパクトシティの事例
出典:photoAC

青森市

図書館などの公共施設と商業施設を複合したビル「AUGA(アウガ)」を建設し、コンパクトシティを目指した青森市。中心市街地の活性化への目玉として建てられたこのビルは、およそ158億円もの費用で人びとの関心を集めました。

理想的なコンパクトシティを目標とした青森市では、市街地をインナー、その周辺地をミッド、郊外をアウターと定め、それぞれに役割を持たせる形で計画を推進しました。

インナーの商業地区と行政施設を充実させ、ミッドに人を集めて居住させ、アウターに定めた部分は基本的に開発をせず、学術や芸術といった文化活動と自然保護をメインとするようにしたのです。

居住区の集積の面では人口の減少が抑えられたとして成功しているのですが、市街地の活性化の目玉となったAUGAで思うような収益が得られず、さらに、郊外の大型施設の進出にも歯止めが掛けられていません。

理想的なコンパクトシティを実現するためには、ハコモノ行政だけではない魅力あるまちづくりが必要であることを考えさせられる結果となりました。

富山市

人びとが生活する地域を「お団子」、その地域をつなぐための公共交通機関を「串」ととらえ、コンパクトシティへと変化させていったのが富山市です。

富山市は自動車保有率が全国でも上位で、住民の足は基本的に車となっていました。マイカー移動が前提のため、居住区は郊外へと広がり行政サービスのコストが増大。高齢化にともない医療サービスの手も届きにくくなったことから、コンパクトシティ化へと舵を切ったのです。

富山市のコンパクトシティ計画において、特に重点が置かれたのは公共交通機関でした。

JR富山駅を中心とした市街地と、それぞれの地域にある駅やバス停をつないで串とするため、利用者が減少していたJR富山港線を「富山ライトレール(ポートラム)」という次世代型路面電車へと再生したのです。

バリアフリーで運転間隔も短く使いやすいライトレールはすぐに受け入れられ、JR時代の倍以上の利用客となりました。さらに、居住推進地区では居住支援を行い、お団子となる居住地への転入も増加傾向にあります。

市街地へ通いやすくなったことから民間企業の開発も進み、コンパクトシティの成功例として全国から注目を集めている富山市。しかし、昔からある商店街の客足が戻らない、設備投資のための地方債券の発行額増加などの問題も残っており、コンパクトシティ構築の難しさを感じる一面もあります。

熊本市

富山市と同様に、公共交通機関を軸にしてコンパクトシティを目指しているのが熊本市です。

熊本市は四方を豊かな自然に囲まれ、その中心部に市街地があります。車の普及率が上がったことと比較的手頃な値段で郊外に土地を持つことができるという点から、居住区は拡大の一途をたどりました。

そこで熊本市では、「都市マスタープラン」というコンパクトシティへ向けた取り組みを開始。大きく広がった各居住区を地域拠点ととらえ、それぞれに都市機能を持たせる方針を打ち出したのです。

もともと熊本市内には路面電車が通っており、市街地を中心として放射状に公共交通機関が広がっています。大きな都市機能を持った中心部の周りを小さな都市機能を持った居住区で囲み、それを全てつなげるように公共交通機関を強化する計画です。

小さな核としての都市部を大きな都市部につなげる「多核連携都市」を目指す熊本市。その挑戦は今も続いています。

 

自然発生的に拡大していった都市を人工的に作り変えていくコンパクトシティ。まちの構造だけではなく、そこに住む人々の意識も変わる必要があるかもしれません。

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