この記事の目次
萩焼の特徴
萩焼とは
萩焼は山口県の萩市を中心に生産されている伝統的工芸品です。華やかというよりは控えめな色味と装飾ですが、古くから「一楽、二萩、三唐津」と謳われるほど茶人好みの器として知られ、細かい部分にまでこだわった質の高い陶器として根強い人気があります。
萩焼の歴史
萩焼は、1604年に藩主である毛利輝元の命によって、朝鮮人陶工である李勺光(リシャッコウ)と李敬(リケイ)の兄弟が城下で御用窯を築いたのが始まりとされています。そのため、当初は朝鮮半島の高麗茶碗に似たものでした。
藩の保護を受けていた萩焼の窯元でしたが、明治維新の変革で後ろ盾がなくなると苦境に立たされ、日本の西洋化にしたがって多くが消滅していきます。しかし、三輪休雪が「休雪白」という独特の作風を確立し、さらに十二代坂倉新兵衛が萩焼を全国に広めることで衰退から免れたのです。
萩焼の特徴
萩焼の特徴は独特のやわらかい風合いと、原料の陶土と釉薬(うわぐすり)が引き起こす貫入(かんにゅう)という細かいヒビのような模様です。使用する土が粗いために浸透性・保水性・保温性が高く、土と釉薬の収縮率の差によって表面に細かなヒビが生まれます。
長年萩焼を使用すると、貫入の部分にお茶の成分などが染みこみ、風合いが変化していきます。この現象は「萩の七化け(はぎのななばけ)」と呼ばれるほど魅力的で、ファンが多い理由の一つです。
素朴なものが多く、絵付けなどの装飾はほとんどありません。土の配合、釉薬の掛け具合、刷毛目、焼成の炎によって生まれる偶然によって独特の風合いが生み出されます。色彩は土の色を生かした肌色や枇杷色、褐色、灰青色、白色などの限られたものが主流です。
使用する陶土
萩焼の風合いを出すために大切な土は、主に見島土(みしまつち)・金峯土(みたけつち)・大道土(だいどうつち)の3つです。釉薬との相乗効果を考慮して、原土を調製・調合して作られます。
見島土
鉄分を多く含んだ赤黒色の土で、萩沖約45㎞にある離島、萩市見島で採れます。配合することによって多様な風合いや色彩を生み出します。
金峯土
萩の東方の福栄村福井下金峯で採取される細かな砂質・カオリン質の白色土。粘性を抑え、耐火度を高める効果があります。
大道土
萩焼の主要原土で、防府市台道や山口市鋳銭司四辻一帯で採れます。鉄分が比較的少ない灰白色の粘土で、可塑性が高く、萩焼の基本的な風合いや性質はこの大道土によるものになります。
萩焼の高台
高台とは
「高台」というのは器の底にある輪の部分のことで、底部を削り出して成形した「削り高台」と、別の粘土を成形して器に貼り付けた「付け高台」に分けることができます。高台は器が倒れないように支えたり、お茶の熱さが直接伝わらないようにしたりするのに役立ち、器の鑑賞の重要なポイントにもなっています。
萩焼の茶碗は「切り高台」と呼ばれる、高台の部分に切り込みを入れたものが多く見られます。この切り高台も萩焼の特徴の一つと言われていますが、萩焼独自の特徴ではないため、必ずしも切り高台になっているというわけではありません。
また、装飾の少ない萩焼では高台のデザインが器全体の印象を左右する大きな要素になるため「土見せ」といって釉薬をかけない場合も多く、陶工のこだわりが表れやすい部分とも言えます。
萩焼の高台の切り込みについて
萩焼の高台に切り込みを入れた「切り高台」が多く見られる理由は諸説ありますが、「もともと萩焼は藩の御用窯だったために庶民が使うことはできなかったが、切り込みを入れることで器を傷物にして、庶民が使っても問題ないようにした」という説が有力です。
しかし、萩焼が起こる以前の焼き物にも切り高台が見られることや宮家の方用の萩焼にも切り高台が見られることなどから、これを疑問視する考えもあります。
ほかにも、
- 荷縄を引っかけやすくすることで、器を重ねて運びやすくするため
- 萩焼は水が浸透するので、高台部分に蒸気がこもりにくくするため
- 焼成時に高台部分まで火を通しやすくするため
- 傷のない完全なものよりも、少し欠けてしまった物の方が味わいがあると考えられたため
- 萩焼の元となった朝鮮李朝の手法がそのまま受け継がれたため
など数多くのいわれがありますが、どれが正しいかは分かっていません。萩焼は、長い歴史においてさまざまな要素が合わさって生まれたものなのでしょう。
魅力あふれる萩焼を通販で
萩焼窯元泉流山 窯変夫婦湯呑
淡いピンクの色合いが白い生地に美しく映える、大小の夫婦湯呑です。
1826年創窯の「泉流山」では、昔ながらの足蹴り轆轤(ろくろ)を使用しています。人の力で回すことで職人の息づかいが粘土に反映され、味わいや温かみが刻まれます。陶磁器焼成のための窯の一種である登り窯を使ってしっかりと焼き上げることで、上質な焼き物を生み出しています。「窯変(ようへん)」と呼ばれる薄ピンクの色合いは、登り窯の偶然によってしか出せません。
御本手飯茶碗
素朴な風合いの白い茶碗です。ギフトラッピングをして贈り物にできるので高級感があり、手頃な価格という点もおすすめ。
新たな萩焼づくり「N・400」とは
「N・400」とは
「受け継いできた400年、変わっていく400年」を掲げて、萩焼業界の業績が年々悪化するなか、これを打破するために生まれたプロジェクト。「N」はNext、「400」は400年を表します。
「N・400」には、「萩焼が誇る400年の歴史を大事にしながらも、次の400年に向けての器作りへ挑戦する」という意味が込められています。古いものを否定するのではなく、今まで使ってきた土や釉薬とは違ったものを取り入れ、精度や緻密さを追求した萩焼を作り出しています。また、萩焼が茶の湯だけのものでなく、普段の食事から特別な日まで、食を彩る器として身近な存在になることを目指します。
萩市内にある大手窯元と共同で新しい萩の器作りを行うだけでなく、飲食業界・国内市場の掘り起こしや海外販路を獲得して「N・400」ブランドを広く流通させることで、低迷している萩焼業界の再興を目指しています。
人口減少が進む萩焼の町で、ものづくりを通して人びとの交流にもつながるプロジェクトです。
これまでの取り組み
岩崎酒造✕服部天龍×JIBITA コラボレーション
「料理のおいしさが盛り付けによって左右されるように、酒器の違いによって日本酒の味わいの変化を愉しむ」をテーマにした限定コラボ商品。より楽しく日本酒を飲むために岩崎酒造は新酒(大吟醸)を、「N・400」はおいしく飲むための形状の異なる酒器二種を開発しました。
フードフォトアーティスト「Pepe」×JIBITA コラボレーション
Pepe氏はフォロワー42,000人を超える人気インスタグラマーで、大手企業からの撮影オファーやインスタグラムジャパンからフィーチャーをされるほどの実績を持ちます。「N・400」から生まれる器を使った食品を撮影することで、スピード感のある発信を行っています。
このプロジェクトはまだ始まったばかりですが、料理人とのコラボや酒蔵とのコラボなど、商品は着実に開発されており、今後の展開に期待ができそうです。
萩焼は「古くからの歴史ある器」というイメージが強いですが、それを踏まえたうえで新しい試みがされています。これから新しく作られていく萩焼の歴史に注目してみてはいかがでしょう。