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環境問題へつながるゴミ問題
大量に発生するゴミ
2015年に日本国内で出されたゴミの総排出量は4,398万トンでした。これを東京ドームに置き換えると、およそ118杯分にもなります。日本人一人の一日あたりの量に換算すると939グラムとなり、1キログラム近くになっています。
「それほどたくさん出していない」と思われるかもしれませんが、水分の含まれている生ゴミや金属、ガラスのカン・ビンなどを含めると上記の重さになってしまうのです。
これほどまでに多量に出されると街中にあふれてしまいそうなゴミですが、日本ではそのようにはなっていません。ご存知のとおり、ゴミ処理場での焼却やリサイクルなど、さまざまな方法によりゴミの処理が行われているからです。
ゴミを処理するためには多額のお金がかかり、2015年に日本国内のゴミの処理にかかった費用は1兆9,495億円となっています。国民一人あたりに換算すると15,200円となり、4人家族であればおよそ6万円をゴミ処理のために払っていることになるのです。
ゴミ処理の問題
大量のゴミの処理にはお金がかかっているだけでなく、ほかにもさまざまな問題があります。
処理施設が古くなっている
家庭や職場から集めたゴミは、ゴミ処理施設で分別したり焼却処理したりしています。しかし、この処理施設が全国的に老朽化し、処理に支障をきたすようになっています。ただ、ゴミ処理施設の建て替えには多額の費用がかかることに加えて周辺住民の反対運動などのために、簡単には進まないのが現状です。
多くの自治体は老朽化した施設を修理しながら使用していますが、そのための維持管理コストが多額であったり、壊れる寸前の状態で使っているなどの問題が生じています。
最終処分場が足りない
分別や焼却処理をしても処理できないゴミは、最終処分場で埋め立てることになります。しかし、その最終処分場の容量が満杯になりつつあり、余裕がなくなってきています。
2015年度末時点で、全国の既存の最終処分場で埋め立てることのできる残り年数は、およそ20年でした。最終処分場を作ろうとしても適地が限られていることや住民の反対運動などもあって非常に難しく、いまある処分場をできるだけ長く使う必要があります。
不法投棄が減らない
ゴミ処理には費用と手間がかかるため、全国各地で不法投棄の問題が発生しています。
特に人目の届かない山間地において不法投棄されるケースが相次いでいます。長年にわたり不法投棄が行われてきた場所では、大雨によってそれらが流されて土砂災害を引き起こすなど、災害が発生する危険性もあるのです。
ゴミが増えてしまう原因
なぜ、処理に困るほど大量のゴミが出されるのでしょうか。その要因は現代の私たちのライフスタイルにあります。「より便利に、より快適に」という人の欲求が過剰な包装やものの作り過ぎにつながり、ゴミ問題を複雑化・深刻化させています。
ゴミはどのように処分されているのか
一般的な処理方法
ゴミの処理は自治体が中心となって行っています。ここでは、家庭から出されるゴミの一般的な処理方法を紹介します。
ゴミは大きく、燃えるゴミ(可燃ゴミ)と燃えないゴミ(不燃ゴミ)の二つに分けられます。多くの自治体では、そのほかに資源ごみや粗大ゴミ、有害ゴミといった区分で収集しています。
燃えるゴミ
燃えるゴミはゴミ処理場で焼却処理されます。水分を多く含む生ゴミが含まれている場合、そのままでは燃えません。そのため重油を燃料として燃やしている場合が多くあります。
燃え残った灰などの燃えがらは最終処分場に運んで埋め立てます。最終処分場が近くにない場合は、遠くまで運んで処理しなければなりません。しかし、最終処分場を自前で持っている自治体は少なく、多くが遠方に処分場を確保して処理を行っています。
燃えないゴミ
燃えないゴミは、資源として再利用できるものとそうでないものに分別されます。分別や資源化のための梱包を行う施設は「中間処理施設」と呼ばれます。
再利用できないものは破砕するなどして細かくし、燃えるゴミの燃えがらと同じように最終処分場で埋め立て処分します。資源として再利用できるものは業者に買い取ってもらうなどして、資源化が行われます。
環境首都コンテストで1位となった名古屋の取り組み
名古屋市の「ごみ非常事態宣言」
ゴミ問題は、人口が多い大都市で深刻化しています。そのなか、大都市でありながら短期間で大幅なゴミの減量に成功した名古屋市の取り組みが注目を集めています。
名古屋市は、約230万人の人口を抱える中部地方最大の都市です。出されるゴミの量も多く、1998年時点で人口一人一日当たり1.2キログラムと、当時の全国平均を上回るゴミを排出していました。
当時の名古屋市は隣県である岐阜県に最終処分場を設けていました。しかし、大量に出されるゴミのために、処分場の容量はあっという間に一杯になってしまいました。
次の最終処分場として検討されていたのは、臨海部の藤前干潟でした。ところがこの藤前干潟は、渡り鳥の重要な飛来地として注目を集めたため、建設中止を求める声が市の内外から高まります。その結果、名古屋市は藤前干潟に処分場を建設する計画を中止する決断をしたのです。
処分場の建設中止を発表した直後の1999年2月、市はゴミ処理の窮状を伝え、ゴミ減量への理解を得るため「ごみ非常事態宣言」を発表。この宣言のなかで市は2年間に20%、量にして20万トンという大幅なゴミの減量を訴えました。
大幅な減量化のための取り組み
名古屋市は非常事態宣言を出すまで不燃ゴミの多くをそのまま埋め立てて処分していましたが、これを見直し、分別を徹底して資源化できるものは資源化するなどの取り組みを相次いで実施しました。
行われた取り組みは以下のとおりです。
家庭系ごみ
- ビン、カン収集の全市拡大
- 集団資源回収などへの助成強化
- プラスチック製、紙製容器包装の新資源収集開始、指定袋制の導入 など
事業系ごみ
- 古紙、ビン、カン、ペットボトル、発泡スチロールの市処理施設への搬入禁止
- 産業廃棄物の全面受け入れ中止
- 全量有料化
- 指定袋制の導入 など
これらの取り組みが功を奏し、2年後の2000年度には非常事態宣言で掲げた目標を見事達成したのです。
名古屋市での取り組みは、人口の多い大都市でも短期間に大幅なゴミの削減が可能であるということを証明しました。この取り組みが認められ、名古屋市は2001年に初めて開催された「日本の環境首都コンテスト」において1位を受賞しました。
その後も着実なゴミ減量の取り組みは継続しており、2015年度には「ごみ非常事態宣言」当時の総排出量の38%を削減、資源化量は2倍強、埋め立て量は8割減を達成するほどまでに進展しています。
また、名古屋市の成功に刺激を受け、横浜市などのほかの大都市でも取り組みが進められるようになっています。
私たちにできること
一人が出すゴミは少しだとしても、積もり積もれば大変な量になります。私たちが少し気をつけて出すゴミを減らすことで、ゴミ問題の解決に一歩近づくことができるのです。誰にもできて、ゴミを減らす効果的な取り組みが「4R」です。
よく似た取り組みとして、以前から行われている「3R」があります。3Rは、「リユース(Reuse:再利用)」、「リデュース(Reduce:減らす)」、「リサイクル(Recycle:形を変えて使う)」の3つの頭文字を取ったものです。
4Rはこの3Rに「断る」という意味の「リフューズ(Refuse)」を加えたものです。最近ではこの4Rが主流となりつつあります。
リフューズ:Refuse
不要なものや余計なものをもらわずに断る。
例)マイバッグやマイ箸、マイボトルを使う
リデュース:Reduce
ごみになるものを減らす。
例)洗剤やシャンプーなどは、詰め替えできるものを選ぶ
リユース:Reuse
繰り返し使用する。
例)リターナブルびんを使う、不要品をリサイクル店で買い取ってもらうなど
リサイクル:Recycle
資源として再生して利用する。
例)ペットボトル、カン、段ボール、牛乳パック、新聞紙などを再資源化する
意識せずにそのまま捨てれば「ゴミ」でも、少しの手間をかけることで再び利用することができ、その分のゴミを減らすことができます。身の回りのものから見直してみましょう。
自分の身の回りだけではなかなか分からないゴミ問題。少し目を広げて見てみると、いろいろな問題があることが分かります。私たちがゴミを減らせば、その分お金の節約にもなります。できることから取り組んでみましょう。