ライフイベント待機児童問題への対策〜今後日本はどうあるべきか〜

待機児童問題への対策〜今後日本はどうあるべきか〜

社会的に問題視されるようになって久しい待機児童問題ですが、解決へ向けた動きが加速しています。各自治体で行われているさまざまな取り組みを通して、今後の理想的な日本の姿を紐解いていきます。

さまざまな待機児童問題対策への取り組み

さまざまな待機児童問題対策への取り組み

保育施設に関する対策

待機児童問題でよく耳にするのは、

  • 保育施設の増設
  • 保育士の確保
  • 受け入れ人数の拡充

です。これらの項目はどれか一つでも解消すれば良いというものではなく、その全てが充実することでしか待機児童問題の解決にはつながりません。

保育施設の増設

保育施設を増やすためには、広大な敷地と大きな建物が必要になります。しかし、児童の集中している都市部では、土地の確保が難しく新たな施設を建てることは困難を極めます。

待機児童に悩む地方自治体では、民有地と街中にある大規模建築物も視野に入れて保育施設の増設を検討してはいるものの、国の基準と照らし合わせると条件はなかなか満たされないというのが現実です。

保育士の確保

都市によっては保育施設の増設が進んでいるところもあるのですが、子どもを預かる保育士の確保が難しいという問題に直面しています。

2017年4月の段階で、保育士の資格はあるが実際に働いていない「潜在保育士」の人数は全国で約70万人にもなると言われています。しかし、労働に対する賃金の低さと労働条件の悪さから、保育士以外の仕事に就いている人が多いのです。

受け入れ人数の拡充

現在の保育園の受け入れ人数を増やすことは、待機児童問題を解消するうえで最も重要な課題です。しかし、それは単純に募集人数を増やすということではありません。

保育施設となる建物は、その基準が国によって定められているため独自の判断で募集人数を拡大させることはできません。定員の弾力化など、地域ごとに対策を考えていくことが求められます。

受け入れ人数を増やすためには結果として、

  • 保育施設となる建物を増設する
  • 保育士の人数を確保する

必要があるように、待機児童問題をクリアにするためにはさまざまな条件を同時に満たさなければならないのです。

定員の弾力化
待機児童問題を解消させるため、もともとの定員人数から25%の範囲内であれば定員を超えて入所を可能にする制度。ただし、児童福祉施設最低基準を満たしている必要がある

企業に関する対策

子育てをしながら安心して働けるよう、保育に関する対策方法を打ち出す企業も増えてきています。特に、妊娠出産・幼少時にメインで世話をすることの多い女性にとって、勤務先が保育に関して応援体制を取ってくれる環境は、大変ありがたいものです。

産休育休期間の延長

産休育休は、働く女性にとって大きな転機となる長期休暇です。大切な赤ちゃんを無事に出産するという大きな仕事を果たした後、今度は仕事を再開できるよう に保育園探しという新たな課題に取り組まなければなりません。

基本的には子どもが1歳になるころを目安に職場復帰をしますが、保育園に入れず預け先がない女性に対して、企業側が産休育休期間の延長を認めるケースも多くなってきています。

復帰間近になっても保育園に預けることができず焦る母親にとって、期間の延長は時間の猶予をもらえるということは大きなメリットです。

短時間勤務制度を設ける

2016年に改正され、2017年1月から全面的な施行が始まった育児・介護休業法。労働者からの申し立てがあった場合、企業側は仕事と家庭の両立ができるよう勤務時間短縮などの措置を執らなければならないという法律です。3歳未満の子どもを育てている労働者は、男女を問わずこの制度を利用することができます。

  • 遠方の保育園にしか空きがない
  • 長時間預けることが不可能

という場合、送り迎えと育児を母親だけで行うのはかなりの負担です。勤務時間を調節しながら、男女ともに積極的に育児に取り組む共働き家庭も増えています。

事業所内保育所の開設

事業所内に雇用している人を対象とした保育所を開設する企業も増えてきました。同じ敷地内に子どもを預けられることや、仕事を諦めなくても良いことがメリットとなり、働く子育て世代から大きな支持を得ています。

キャリアのある人物を手放さなくても良いという点では、企業側にも大きなメリットとなる事業所内保育所は、今後も導入を検討する動きが広がる可能性があります。

地域による待機児童問題への対策

保育施設の拡充に関して、画期的な対策方法を見出している地方自治体があります。地域の特性を活かした対策方法の一部を紹介していきます。

横浜市と川崎市による待機児童対策に関する連携協定

2014年10月、神奈川県の横浜市と川崎市は待機児童問題を解消する対策として、「待機児童対策に関する連携協定」を結びました。

隣接している市同士がお互いに提供できることを補い合う形で、待機児童対策を行うという画期的な方法です。施設を建てるための土地が足りていない横浜市と、受け入れ先が足りていない川崎市が共同で保育施設を管理することにより、土地の確保と受け入れ先の拡充で待機児童問題の解消を図っています。

問題解決への取り組み内容
市の境目にあたる地域の土地を共同利用して保育所を増設し、双方の市民が入所を申し込みできるほか、保育士の確保についても連携した就職セミナーが行われています。

東京都荒川区による公園内保育所開設

東京都23区内でも2番目に面積が狭く、保育所施設を建てる土地の確保が難しい荒川区。待機児童の受け入れ拡充を試みるもその施設を確保することができず、区役所では対策に追われていました。

その解決策として新たに建てられたのが、全国でも初となる公園内の保育所「にじの森保育園」です。

国家戦略特別区域法による規制緩和で汐入公園内に建てられたこの施設は、「地域に開かれた保育所」という運営方針により、地域住民に対するさまざまな工夫がなされています。

また、建物の一室は一般の親子連れにも解放されており、地域に開かれた保育所として多くの注目を集めています。

屋上の一般開放
保育所の屋上は全面が人工芝で覆われた「プレイグラウンド」となっており週3回の割合で一般開放されているため、保育所が建てられる以前からグラウンドゴルフを楽しんでいた人たちも以前と変わらずプレイできるようになっています。
なぜ待機児童問題は解決しないのか原因を考える なぜ待機児童問題は解決しないのか原因を考える

 

待機児童にならないためには

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保活激戦区の把握

保育園を探すためのさまざまな努力は「保活」と呼ばれ、その内容がニュースで特集されるほど厳しさを増してきています。特に子育て世代の住人が多い地域では、保育園の数が足りず、受け入れ人数も限られていることから保活が思い通りにならないことも少なくありません。

保活をスムーズにするためには、どの区域が保活の激戦区なのかを把握して、事前に引っ越しをしたり状況を市町村役場に問い合わせたりといった事前活動が重要になってきます。

自身の勤務状況による影響

今現在の勤務状況によっても、保育園に受け入れてもらえない可能性が出てきます。例えば、

  • 申し込みの時点で勤務先が決まっていない
  • 自由業で自宅での勤務となる
  • パートに出ているが勤務時間が午前中だけで短い
  • 両親と同居しており子どもの世話をしてもらえる環境にある
  • 勤務時間帯が夜間で昼間は家にいる

です。保育園の入所はより早急な対応が必要な家庭の子どもが優先されるため、現在の勤務状況が大きく影響します。保育園に預けるためには、現在の勤務状況を変える必要性もあるのです。

子どもの年齢による差

預ける子どもの年齢も、保育園探しの難易度に関係してきます。0歳〜2歳の子どもは世話をする内容が多いため受け入れ人数も少なく、幼稚園では受け入れてもらえないことから申し込みが増えて難易度が高くなります。

3歳を過ぎると幼稚園に入れられるようになるため乳幼児に比べるとまだ入所しやすいものの、多くの場合は乳幼児からの持ち上がりなので途中入園が難しい状況です。その場合は、年度変わりの春先を目安に申し込みを行わなければなりません。

認可保育園・無認可保育園へ入園するために必要な条件は? 認可保育園・無認可保育園へ入園するために必要な条件は?

 
親が安心して働くためには、子どもを安心して預けられる場所が不可欠です。保育園の増設と受け入れ先の拡充は、今後の日本に欠かすことのできない重要課題となっています。