食品・食材山形県の地域ブランド「だだちゃ豆」とは?枝豆と何が違うの?

山形県の地域ブランド「だだちゃ豆」とは?枝豆と何が違うの?

だだちゃ豆とは枝豆用の大豆品種の一つです。山形県の鶴岡市を中心とした地域である庄内地方の特産品で、この地域の農家が種子を選抜しながら守り、受け継がれ栽培されてきた在来種です。

枝豆とだだちゃ豆の違い

枝豆とだだちゃ豆の違い

枝豆とは

ビールのおつまみや普段の料理で口にする機会が多い枝豆ですが、実は大豆が成熟する前の青い状態で収穫したもの。種類としての区別はなく、収穫の時期が違うだけです。

ただ、大豆・枝豆ともにそれぞれに適した品種は存在します。旬は6月~9月ごろ。日本全国で栽培されていますが、最も生産量の多い都道府県は千葉県です。

だだちゃ豆とは

時は明治時代。明治維新の興奮冷めやらぬころ、現在は鶴岡市の一部となっている大泉村白山に住む森屋藤十郎の娘が植えた大豆のなかに味の良いものがあったため、その豆を選りすぐり増やしていきました。それが現在のだだちゃ豆のルーツである「藤十郎だだちゃ」だという説話が残っています。

このだだちゃ豆は庄内地方の土壌に適した品種で、ほかの地域に持っていって栽培しても同じものは作れないという性質を持っており、限られた地域のみでの栽培となるため希少価値があります。

MEMO
「だだちゃ」とは庄内弁で「おやじ」の意味。庄内藩の藩主が枝豆好きで、自分の元に届けられる枝豆に「今日はどこのだだちゃの枝豆か?」と訪ねていたことから「だだちゃ豆」と呼ばれるようになったと言われています。

収穫期は8月の旧盆の前後から9月上旬ごろ。一般的な枝豆に比べると筴(さや)に付いているうぶ毛が茶色で、くびれが深く、少し小さいことが見た目の特徴です。味は、甘みが強く濃厚な舌触りで香りが高い点が評価されています。

だだちゃ豆のなかでも品種が細かく分かれており、鶴岡だだちゃ豆生産者組織連絡協議会が認定しているものは下記の10品種です。

  • 庄内一号
  • 小真木(こまぎ)
  • 甘露(かんろ)
  • 早生白山(わせしらやま)
  • 白山
  • 庄内三号
  • 晩生甘露
  • 平田(ひらた)
  • 庄内五号
  • 尾浦(おうら)

なかでも「白山」が栽培される白山地区は「だだちゃ豆誕生の地」と言われており、人気を集めています。

味の良さに加えて栄養価も高く、肝臓の解毒作用を促進させると言われるアミノ酸の一つ、オルチニン(二日酔いに良い作用を持つと言われる)がシジミの倍以上含まれているという分析もあります。

また、ストレスを和らげる作用のあるGABAや、オルチニンと同様にアルコールを代謝する機能や疲労軽減効果のあるアラニンも一般的な枝豆より豊富に含まれています。

 

山形県の地域ブランド「だだちゃ豆」

山形県の地域ブランド「だだちゃ豆」

特産品の地域ブランド化

地域ブランド化とは、地域活性化のために地域の特色を打ち出し、ほかの産地との差別化を図り、その地域特有のブランドを作っていこうとする動きです。

その地域の気候風土や伝統を外に向けて発信するとともに自分たちでも再確認・再発見して地域を再生していく手段として各方面から注目されています。「だだちゃ豆」や「夕張メロン」、「大間のマグロ」はその代表例と言えるでしょう。

だだちゃ豆を地域ブランドへ

明治時代より庄内地域で栽培されてきた、だだちゃ豆。味の評価は元々高かったものの、日持ちの短さや収量の確保が難しいことなどから積極的に栽培されていたわけではなく、ほぼ庄内地域近郊のみの販売となっていました。

しかし1980年代後半に、「だだちゃ豆を発信していくことで庄内地域の農家を盛り上げよう」と、JA鶴岡を中心として地域ブランド化への取り組みが始まりました。

だだちゃ豆の生産者組織(鶴岡市だだちゃ豆生産者連絡協議会)を設立し、種子の管理(農協が種を管理して農家はそこから種を購入する仕組み)と豆の色や形、熟度などの規格を厳格に規定しました。

そして、生産者や農協・農業改良普及所の関係者が一丸となり、栽培学習会や土の研究など栽培技術の向上、保冷管理や包装など流通技術の向上といった数々の取り組みに努めた結果、栽培技術は向上。さらには、規格が統一されて流通が安定したことで市場評価も高まっていきました。

同時に行政も積極的にバックアップし、イベントの開催やメディアへの広告などを通じた販売促進を行うことで知名度の向上やイメージアップにつながりました。

各方面からのさまざまな努力が結実し、ある程度の成功を収めてからも豆の生産販売だけにとどまることなく、アイスクリームやプリンなどのだだちゃ豆を利用した加工品の開発を積極的に行い、販路や売り上げ・知名度のさらなる向上につなげました。

その結果、仙台や東京でも「希少で美味しい枝豆」としてだだちゃ豆の認知度が上がり、売り上げは激増。キロ単価も倍以上に伸びました。日持ちが悪いところや産地を選ぶ難しい種であることを逆手にとり、希少価値を持たせてブランド化させていった努力と手腕は一目置かれるところです。

「米沢牛」や「つや姫」など地域ブランド化の成功事例を数多く持つ山形県の中でも、だだちゃ豆の地域ブランド化は代表的な成功事例となっています。

 

通販で買うだだちゃ豆おすすめ

通販で買うだだちゃ豆おすすめ

殿様のだだちゃ豆

だだちゃ豆を集荷・販売するJA鶴岡が作る「殿様のだだちゃ豆」。だだちゃ豆に塩を加えてフリーズドライ製法で加工したものです。2014年度には日本農業新聞社が農畜産物の加工や直売を応援するために創設した審査である「一村逸品」の中央審査で最高賞の対象に選ばれています。

ザ・フレア だだちゃ豆冷凍 白山産1kg

だだちゃ豆誕生の地とも言われ評価が高い白山(しらやま)産のだだちゃ豆です。解凍して簡単に食べられます。塩味が付いていないので加工にも便利です。

 

ユネスコ食文化創造都市としての鶴岡

ユネスコ食文化創造都市としての鶴岡

創造都市ネットワークとは

1990年代中ごろに提唱された理念で、文化や芸術の持つ創造性を活かした産業経済の振興や地位活性化の取り組みのことを指します。グローバル化による画一化で文化の多様性が失われ、地域コミュニティの衰退も進行するなか、このような取り組みは注目を集めています。

欧米においては「創造都市ネットワーク」の理念がいち早く浸透している地域もあり、住民・行政・文化団体・企業・学校・アーティストなどが連携しながら活動を拡げています。

ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)も2004年に「創造都市ネットワーク事業」を開始。文化産業が持つ可能性を世界各地の都市間の連携により発展させていくための事業で、「文学」「映画」「音楽」「工学」「デザイン」「メディアアート」「食文化」という7つの分野で秀でた都市を認定しています。

日本においては、

  • 浜松市(音楽)
  • 金沢市(工芸)
  • 篠山市(工芸)
  • 名古屋市(デザイン)
  • 神戸市(デザイン)
  • 札幌市(メディアアート)
  • 鶴岡市(食文化)

の7都市が選ばれています。

食の都 鶴岡

2014年にユネスコが認定する創造都市ネットワークにおいて日本で唯一、食文化の分野に選ばれている鶴岡市。食文化の分野では世界で18都市が認定されています。伝統野菜や郷土料理を活かす活動を行ってきたことが評価されています。

鶴岡は北前船が来航していた地であり古くからほかの地方との交易が盛んであったため、各地から持ち込まれた種が風土に適応し選りすぐられ、伝統野菜として根付いてきました。

一時は絶滅の危機に瀕した品種もあったものの、市内の有名イタリアンレストランである「アル・ケッチァーノ」が伝統野菜を活かした料理を提供したり、前述のだだちゃ豆のように行政や農協が中心となって地域ブランド化を押し進めたりと、さまざまな方面においての努力の結果、多くの伝統野菜品種が息を吹き返しています。

 

まわりを山と海に囲まれ気候に恵まれた鶴岡は古くから食の宝庫でした。

一時は画一化する都市の価値観に傾き伝統文化を忘れかけましたが、さまざまな努力によって伝統文化を顧みて現在に活かすという視点を持ち、地域固有の伝統や食を今に活かしています。鶴岡はまさに「食の都」と言えるでしょう。